ASMLは1月24日、2023年第4四半期および通年の業績を発表した。
それによると同四半期の売上高は、前四半期比8%増の72億ユーロ、純利益は同8%増の20億ユーロ、粗利益率は51.4%で同社の予測をやや上回る結果となったという。また、同四半期の受注額は92億ユーロで、そのうち56億ユーロがEUV露光装置となっている。
2023年通年の業績としては、売上高は前年比30%増の276億ユーロ、純利益は同39%増の78億ユーロ、粗利益率は51.3%となり、好調を維持している。
同社は2024年第1四半期の見通しについて、売上高は50億〜55億ユーロ、粗利益率は48%〜49%にとどまるとの見方を示しているほか、2024年通期の売上高は2023年と同程度で粗利益率はやや低下するとも予想している。2024年は、ロジック向けが前年比でやや低下するものの、メモリ向けがDDR5やHBMを中心とした先端プロセス需要の高まりからDRAM向けが伸びることが期待されるため、そうした需要が高まると見られる下半期以降に業績が上向くと見られ、その勢いのまま2025年には大幅な成長が期待されるともしている。
ASMLのCEO(最高経営責任者)であるPeter Wennink氏は、「半導体業界はいまだにシリコンサイクルの底をうごめいている。当社の顧客は2024年の半導体市場がどのように回復するか確信を持っていないが、いくつかの明るい兆しがみられる。業界の市場在庫の在庫水準は改善し続けていて、露光装置も改善し始めている。2023年第4四半期の好調な受注高は、将来の需要を明らかに裏付けている」と述べているほか、「このような兆しはあるものの、我々は年間全体について保守的な見方を維持しており、2024年の売上高は2023年と同程度になると予想している。また、2024年は2025年に期待される大幅な成長に備える重要な年になると予想している」との見解を示している。
2023年のEUV露光装置売上高は前年比30%増の91億ユーロ
2023年通年のEUV露光装置の売上高は、前年未検収だった分も含めて53台(2023年の出荷台数は42台)から計上され、前年比30%増の約91億ユーロとなったしている。また、高NA(NA=0.55) EUV露光装置「EXE:5000」の最初の1台を2023年末までにIntelに出荷したことも公式に明らかにした。
一方のDUV露光装置(ArF液浸、ArFドライ、KrF、i線)の売上高は同60%増の123億ユーロとなり、合計で396台が販売された。内訳は、ArF液浸が125台、ArFドライが32台、KrFが184台、i線が55台で、新製品としてNXT:1980Fi ArF液浸露光装置ならびにXT:400M i線露光装置も出荷されたという。
このほか、計測・検査装置事業の売上高は、前年比19%減の5億3600ユーロにとどまったともしているが、新製品としてYieldStar500の初号機の出荷を行ったともしている。
中国向け売上高は第3四半期をピークに減少傾向
ASMLの2023年の国・地域別売上高を見ると、2022年には14%であった中国向け売上高比率が2023年には29%へと上昇している。これを四半期別に見てみると、第1四半期が8%、第2四半期に24%、第3四半期に46%まで上昇したが、第4四半期には39%と減少に転じている。この動きは、米国と歩調を併せた日本ならびにオランダ政府の対中半導体輸出規制が実施される前の駆け込み需要によるものと見られており、ASMLでは2024年における中国向け売上高は前年比で15%ほど減少するものと見ている。輸出規制によって、すべてのEUV露光装置ならびに大半のArF液浸露光装置の中国への輸出ができないものの、旧型の露光装置に対する需要は依然として高いとしており、それらを中心に業績は堅調に推移するものと見ているとしている。
2024年4月に社長交代へ
なお、同社のPeter Wennink CEO兼共同社長とMartin van den Brink 最高技術責任者(CTO)兼共同社長の任期が2024年4月に終了するのに伴って、同社では年次株主総会を経て、現在エグゼクティブバイスプレジデント兼最高ビジネス責任者(CBO)であるChristophe Fouquet氏が新たなCEOに就任する予定としている。同氏はASMLに2008年より勤務。その前はKLA TencorのDirector of MarketingやApplied MaterialsのGlobal Product Managerなどを務めてきている。