今回の研究では、電極として金薄膜を、導電性変化層としてアモルファスIn-Ga-Zn-O(α-IGZO)薄膜をそれぞれ蒸着することを繰り返し、3つの導電性変化層それぞれが電極に挟まれた多層クロスバーアレイを作製。その後、多層クロスバーアレイを、制御回路なしで自律的に学習できる修正ヘッブ型学習によるニューロモルフィックシステムへ実装したとする。具体的には、まずニューロン素子がFPGAボードに外付けで形成され、シナプス素子としてAOS薄膜の多層クロスバーアレイに接続。制御をPCで行ったという。

学習段階では、アルファベットのTとLを学習。具体的には、Tの3×3画素の2次元画素パターンを9成分の1次元信号パターンに変換し、その信号パターンをニューロンモルフィックシステムに入力し、同様にLの信号パターンも順次入力。その後、推論段階において、TとLの再生にあたり、18個の対応電圧と反転電圧を水平電極に1秒間印加し、画素パターンを1×3画素の1画素反転パターンに変換。文字の少し歪んだ信号パターンを入力し、出力した画素パターンと比較する手順が何度も繰り返された。その結果、AOS薄膜の多層クロスバーアレイの偏差に起因すると思われる1つの失敗例を除き、アルファベット文字が正常に学習・再現されたことから、連想記憶機能が確認されたとする。

  • AOS薄膜の多層クロスバーアレイのニューロモルフィックシステムへの実装

    (左)AOS薄膜の多層クロスバーアレイのニューロモルフィックシステムへの実装。(右)連想記憶機能にかかる実験 (出所:龍谷大Webサイト)

なお、研究チームでは、これらの成果について、将来的にニューロモルフィックシステムにおけるシナプス素子の天文学的な大規模集積化につながるものとしており、これによりPCやスマホ、そのほかのモバイルデバイスなどに、個人がカスタマイズできる専用AIを搭載することができる独立性とカスタマイズという2つの可能性を将来的に拡充できる基盤情報を得ることができるようになったとしている。