ソニーグループは11月1日、2023年3月期の連結売上高(国際会計基準)は11兆6000億円、営業利益は1兆1600億円になる見通しを発表した。従来予想からそれぞれ1000億円、500億円上方修正した。ストリーミングサービスを手掛ける音楽事業やイメージング&センシング・ソリューション事業などが好調で、円安の影響もプラスに働いた。

2023年3月期第2四半期(7月~9月)の売上高は前年同期比16%増の2兆7519億円、営業利益は8%増の3400億円で、第2四半期および上半期の実績としていずれも過去最高を更新した。純利益は24%増の2640億円だった。

代表執行役副社長兼CFOの十時裕樹氏は会見で、「米中間の緊張のさらなる高まりや、エネルギー価格の高騰とインフレ圧力の拡大、各国の急速な金利引き上げなどにより、世界経済が失息するリスクが一段と高まっていると認識している。各事業において、事業環境の一層の悪化に備えた取り組みを進めている」と話した。

  • ソニーグループ 代表執行役副社長兼CFO 十時裕樹氏

    ソニーグループ 代表執行役副社長兼CFO 十時裕樹氏

音楽分野に関しては、円安の影響やストリーミングサービスの売上げ増加により、売上高は前年同期比32%増の3593億円、営業利益は56%増の787億円と大幅に成長した。ストリーミングサービスの売上げだけで見てみると、音楽制作で34%、音楽出版で78%増加した。

  • ストリーミングサービスの売上高推移

    ストリーミングサービスの売上高推移

また同社はストリーミングサービスを筆頭に音楽市場でのさらなる成長を実現するための戦略投資を積極的に進めている。例えば、音楽ディストリビューターの米AWALを4億3000万ドルで、ヒップホップレーベルの米ALAMO RECORDSを1億2500万ドルで買収、また世界的に有名なアーティストの音楽カタログ取得も厳選して進めており、長期安定的なロイヤルティ収入やさらなる楽曲利用による収益機会を拡大し続けている。

これらの戦略投資により海外の音楽事業を束ねるソニーミュージックグループの2022年度の営業利益は6年連続で過去最高を更新する見込みとのことだ。

  • 音楽分野における戦略投資

    音楽分野における戦略投資

また、イメージング&センシング・ソリューション事業も好調だった。円安の影響やモバイル機器向けのイメージセンサの増収により売上高は43%増の3984億円、営業利益は49%増の740億円だった。営業利益の通期の見通しは為替の影響を踏まえ、2200億円と従来予想から200億円上方修正した。ハイエンドスマートフォンカメラ用センサーの高画質・高性能化も想定通りに進捗しているといい、同事業は四半期業績としては過去最高の売上高を記録。

「中国を中心としたスマートフォン市場の減速の改善は見られなかったが、その影響はおおむね前回見通しで想定した範囲に収まっている」と十時氏は補足した。

  • イメージング&センシング・ソリューション事業の業績

    イメージング&センシング・ソリューション事業の業績

一方で、ゲーム&ネットワークサービス事業に関しては、自社制作以外のゲームソフトウェアの販売減少などの影響もあり、2023年3月期の連結営業利益は2250億円と従来予想から300億円下方修正した。十時氏は、「2四半期連続となる大幅な営業利益の下方修正を行ったことが最大の反省点だ」と話した。

続けて同氏は、「一方でグループ全体としては、事業環境の大きな変化に迅速に対応できた。為替が大きく変動する中、各事業のコスト構造の違いがその影響を中和させた」と今回の決算を統括し、「来年度にかけては、事業環境がもう1段厳しくなると想定し、各事業でこれに備えた対応をさらに進めていく」と意気込みを見せた。