それらの試料に対してX線回折、電子回折、X線光電子分光、電気抵抗率測定が行われ、結晶構造、電気的特性と化学結合状態が評価されたところ、エピタキシャル成長温度の上昇に伴い、NbN薄膜の窒素組成が減少し、結晶構造がδ型(立方晶)から、γ型(正方晶)を経てβ型(六方晶)に変化することが発見されたという。この六方晶のAlN上に六方晶のβ型NbNを作製することに成功したのは、今回の研究が初めてだと研究チームでは説明する。

  • 窒素原子とニオブ原子が、六方晶窒化ニオブの結晶を形成するイメージ

    窒素原子(紫)とニオブ原子(ピンク)が、六方晶窒化ニオブの結晶を形成するイメージ (出所:東大生研Webサイト)

また、AlN上に1220℃で作製された六方晶のβ型NbN薄膜の表面は、原子レベルで平坦であり、高品質な結晶が得られていることが確認されたほか、β型NbNはAlNと結晶構造やサイズが近いため、β型NbN結晶の第一層目からコヒーレントに成長していることも確認できたという。加えて、このβ型NbNの超伝導転移温度は絶対温度約0.4Kであり、ほかの結晶構造を含まない純度の高い薄膜であることが示されたとする。

  • 六方晶窒化ニオブと窒化アルミニウムを接合した界面の高分解能透過電子顕微鏡像

    六方晶窒化ニオブと窒化アルミニウムを接合した界面の高分解能透過電子顕微鏡像。明るく見えるAlとNbの原子が同じ周期(…ABABAB…)で積層されており、結晶系がそろっていることがわかる (出所:東大生研Webサイト)

今回の研究により、発光デバイスや電子デバイスとして実用化している窒化物半導体上に、高品質な超伝導体を接合させることに成功したことから研究チームでは、今回の技術によって、独立に発展を遂げてきた窒化物半導体と超伝導体のエレクトロニクスがシームレスにつながり、窒化物半導体デバイスにこれまでになかった新機能を付与できるようになると期待を示す。また、将来的には、窒化物半導体エレクトロニクスを基盤とした、極低温動作トランジスタや、単一光子制御素子などの新規量子デバイスの開発につながっていくとしている。