Yahoo! JAPANとトレジャーデータは7月19日、連携して新たなデータクリーンルーム「Yahoo! Data Xross」を2023年春頃に提供開始すると発表した、そこで、その狙いについて、マーケティングソリューションズグループ 事業開発室長の森岡 康一氏に話を聞いた.

  • Yahoo!マーケティングソリューションズグループ 事業開発室長の森岡 康一氏

    Yahoo! JAPAN マーケティングソリューションズグループ 事業開発室長の森岡 康一氏

「Yahoo! Data Xross」を提供する背景、目的は?

森岡氏:3rd Party クッキーの規制やiOSの計測環境の変化など、これまでのマーケティング手法ではうまくいかない時代になって来ています。さらに、プライバシー保護に対する社会の期待の高まりもあり、それに則した対応が必要だということが背景にあります。

一方、企業側も顧客データが散在している中で、データの統合や分析がうまくいってない点も課題としてあります。世の中のデータを活用していこうという機運が高まっている中で、データをマーケティングに活用していく部分の課題を解決していきたいと思っています。そこに価値提供していくものとして、データクリーンルームが一番だと考えました。 3rd Party クッキーが使えなくなる点や個人情報保護対応への危機感は企業によって異なると思いますが、危機感が強いところは、大きな課題として捉え、相談も受けています。

「Yahoo! Data Xross」では、どのようなデータを提供していくのでしょうか?

森岡氏:接触データ、属性データ、興味・関心データが中心になります。データの連携方法は現在、検討中です。接触データやYahoo!が提供するいろいろなサービスから得られる興味・関心データにニーズがあると思います。

「Yahoo! Data Xross」の想定している利用用途は?

森岡氏:お客様の声を聞きながら、用途を見つけていく必要があると思います。最初は、広告効果の分析、Yahoo!のデータ内におけるインサイトの可視化になると思います。Yahoo!のデータ内におけるインサイトとお客様のオフラインデータを合わせた効果の可視化を想定しています。マーケティングの効率化に取り組んでいるお客様もいらっしゃるので、そういったお客様に役立つようにしたいと思います。

データをMA(マーケティング・オートメーション)に利用したいというニーズもあると思いますが・・・

森岡氏:MAに利用していくためには、お客様の持っているデータの利用許諾がポイントになると思います。この部分は慎重にやっていきたいと思っています。

「Yahoo! Data Xross」の想定している利用方法は?

森岡氏:企業の方でトレジャーデータさんのCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)をご利用いただき、そこにYahoo!のデータを連結し、分析していただく形になります。企業さんが自由に分析できる環境を整えることになります。

個人情報保護に対する配慮は?

森岡氏:プライバシー関する部分は強化していく予定です。トレジャーデータさんの環境を利用しますが、トレジャーデータさんはデータを扱わないという点は新しいと思います。

トレジャーデータさんと提携した狙いは?

森岡氏:すでに国内外で450以上の顧客データ基盤を構築しているという部分は大きいと思います。また、技術力やワールドワイドでの知見も魅力だと思います。企業もデータを整理していくにあたりCDPを必要としていますので、グループ企業でもあるトレジャーデータさんは、提携する相手としてはベストだと思います。

「Yahoo! Data Xross」でLINEさんとのデータ連携はあるのでしょうか?

森岡氏:今回の取り組みは互いに独自のものですが、将来的にグループ全体でのデータクリーンルームは検討していきたいと思います。

(なお、LINEとトレジャーデータは提携し、データクリーンルームソリューションを共同で開発していくことを5月に発表している

「Yahoo! Data Xross」の他社との差別化ポイントは?

森岡氏:企業さんがYahoo!のデータを活用したいというニーズはありましたが、これまできちんとした形で提供できていなかったので、新たに参入して強みを発揮できると思います。Yahoo!は100以上のサービスを提供していますので、興味・関心がわかりやすいという強みがあります。将来は、PayPayやLINEのオフライン決済なども、グループとしての強みにしていきたい思います。ただ、大事なのはプライバシーに配慮した環境を作るという点が前提になる点だと思います。

「Yahoo! Data Xross」の今後のビジネス戦略は?

森岡氏:すでに、GoogleさんのAds Data Hubのようなサービスは提供していますので、それを利用しながらYahoo!の強みを活かしていきたいと思います。最近、クライアントさんが(データクリーンルームに)興味を持ち始めて来たと感じますので、クライアントさんと相談しながらどんな価値が提供できるのかを考えていきたいと思います。まずは、データ利用を高度化する事例を作っていき、そのあとに、必要な機能の充実があると思っています。そして、業種・業界、企業規模に則したサービスを提供をしていきたいと思います。そこまでいけば、(Yahoo!のデータクリーンルームサービスは)なくてはならない存在になれると思います。

また、われわれプラットフォーマーが持っているデータだけでなく、各クライアント企業が持っているデータを活用する時代が来たと感じています。企業の活用のためのデータ整理も、グループ企業とともにサポートしていきたいと思っています。