東北大学、名古屋大学(名大)、九州大学(九大)の3者は5月17日、量子力学が重要な役割をする初期宇宙の原理的な問題を検証できるシミュレータを、トポロジカル物質を用いることで作成できることを理論的に示したと発表した。

同成果は、東北大大学院 理学研究科物理専攻の堀田昌寛助教、同・遊佐剛教授、名大理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻の南部保貞准教授、九大理学研究院 物理学部門の山本一博教授、同・杉山祐紀大学院生らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する素粒子物理学や場の理論・重力などを扱う学術誌「Physical Review D」に掲載された。

我々の宇宙の始まりやブラックホールの理解に向け、マクロスケールを扱う一般相対性理論とミクロスケールを扱う量子力学を統合した「量子重力理論」の研究が進められているが、一般相対性理論と量子力学は相性が悪いことが知られており、統合は困難を極め、現在まで数多くの研究者が挑んできたものの、誰もそれを成し遂げていない。その可能性があるとして期待されているのが、クォークよりも遥かに小さい、万物の基本要素が粒子ではなく1本のひもであると考える「超弦理論」だという。

我々の住む宇宙はXYZ軸の3次元空間であり、そこに時間という1次元を加えた4次元時空と考えられている。しかし、4次元時空に住む我々がそのまま4次元時空を扱うには難しいことから、しばしば次元を減らした形で研究が行われる。

研究チームが今回構築した一般理論もトポロジカル物質の一種である「量子ホール状態」のエッジを流れる電子の波を、空間1次元+時間1次元の「2次元膨張宇宙」の量子場として記述するという内容であり、エッジを時間的に膨張させることで、さまざまな2次元重力理論に現れる膨張宇宙をシミュレーションできる実験場となることを確認したという。