こうして完成したナノペーパー半導体の電気特性制御範囲は、電気抵抗率が1012~10-2Ωcm(絶縁体~準導体)、電荷キャリアタイプがn型(電子リッチ)もしくはp型(正孔リッチ)、キャリア移動度が0.235~2.59cm2V-1s-1であったという。
また、ナノペーパーの構造設計技術(エンボス加工・折り紙・切り紙など)、および、形態保持炭化技術を併用することで、その3D構造をナノ~マイクロ~マクロに及ぶトランススケールで制御することにも成功したという。これは、緻密で平滑なナノ構造や高比表面積のナノ細孔構造、ハチの巣状のマイクロ細孔構造やドット状のマイクロピラー構造、マクロな折り鶴やワッフル状ドーナツ構造など、幅広く作り分けることが可能だとする。
ナノペーパー半導体の広範な電気特性制御範囲とトランススケールの3D構造制御性は、従来の半導体材料を凌駕する特長であり、目的や用途に応じた機能と構造のカスタマイズを実現するという。実際、ウェアラブル水蒸気センシングによる飛沫モニタリングからバイオ燃料電池発電まで、幅広い用途において優れた電子デバイス性能を確認することができたとする。
今回の研究成果は、木材由来のナノセルロースに半導体としての新たな価値を生み出し、電子デバイスへの適用性を拡大させるものだ。将来、間伐材などの未利用木材を原料にしたオールナノセルロース・電子デバイス、さらには、金属や石油資源に依存しない生物資源由来の持続可能なエレクトロニクスの実現につながることが期待されるとした。