大阪大学(阪大)、東京大学(東大)、九州大学(九大)、岡山大学、科学技術振興機構(JST)の5者は4月27日、木材由来のナノセルロース(セルロースナノファイバー:CNF)を用いて、電気特性と3D構造を幅広く制御できる「ナノペーパー半導体」の創出に成功したと発表した。

同成果は、阪大 産業科学研究所の古賀大尚准教授、東大大学院 工学系研究科の長島一樹准教授、同・高橋綱己特任准教授、九大大学院 総合理工学研究院の末松昂一助教、岡山大 異分野融合先端研究コアの仁科勇太研究教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、「ACS Nano」に掲載された。

近年、電子機器の生産数の増加に伴う資源やエネルギーの消費加速、ならびに大量の電子ゴミの発生による環境への悪影響などが懸念されており、持続生産可能な生物資源由来で、環境にも優しい電子デバイスの創出が期待されるようになってきている。

これまで、古賀准教授らの研究チームは、木材由来のナノセルロースで作る紙「ナノペーパー」を、ガラスやプラスチックに替わる基材として応用し、優れたデバイス性能とフレキシブル性・易廃棄性・生分解性を併せ持つ環境調和型電子デバイスを創出してきた。しかし、ナノセルロースは電気を通さない絶縁体であり、電子デバイスとして動作させるためには、枯渇性資源である金属や石油由来の電子材料に頼らざるを得ないことが課題だったという。

そこで今回の研究では、ナノペーパーを段階的に炭化することによって、その電気特性を広範かつ系統的に制御できる半導体を創出することにしたとする。