SEMIの日本法人であるSEMIジャパンは、ロシアのウクライナ侵攻(ウクライナ危機)に起因する資源の高騰・ひっ迫などのエレクトロニクス産業への影響について、日経BP社の「日経エレクトロニクス」と共同で「ウクライナ危機における電子産業サプライチェーン緊急調査」を実施。その結果、半導体メーカーの多くは数か月分の在庫を確保しており、ただちに生産に影響が出る可能性は低いものの、回答企業の57%が関連する材料価格の高騰を懸念していることが明らかになったと発表した。

今回のアンケート調査対象は材料商社、半導体製造装置メーカー、半導体/電子部品メーカーなど計50社としており、そのうち23社から回答を得たとしている。

アンケートとして、「自社で取り扱う材料、あるいは製造する製品で利用する材料に影響が出る懸念」についての質問では、回答23社中8社が「影響が出そう」と回答したとする。また、その内3社は材料商社であったという。

サプライチェーン上で懸念しているのはどのような材料かとの質問では、ネオンやクリプトン、キセノンといったロシアやウクライナが大きなシェアを有する希ガス(貴ガス)やパラジウムなどの鉱物資源という回答が多数を占めたほか、金やタングステン、スズ、銅などの調達にも懸念があるという声も上がったという。

さらに、「ウクライナ危機の問題に対して懸念していること」を複数回答で質問したところ、13社(全体の57%)が材料価格の高騰、11社(全体の48%)が入手困難性の増大を上げたほか、代替材料によって品質が低下するようなリスクがあると答えた企業はなかったとする。

また、どのような影響が出るかについての質問については(複数回答)、「最終製品のコストが増加する」が11社(全体の48%)、「最終製品に価格転嫁せざるを得ない」という答えが9社(全体の39%)となったほか、6社(全体の26%)は、「出荷の調整や中断の可能性」を指摘したとする。ウクライナ危機によって最終製品の値上げを覚悟しなければならず、長期化すれば、出荷の調整や中断の可能性もある事態であることが浮き彫りになったとSEMIでは指摘している。

また、懸念している材料に問題が発生する時期についての質問では、半導体メーカーからは3カ月~1年という幅のある回答があったとする。ただし、いずれのメーカーも数カ月程度の在庫は持っているとの認識であったとする。このほか自由意見として、「物流面について現在影響は限定的だが、将来的にリードタイム/コストへの影響が懸念される」、「エネルギーコストの上昇が企業業績に影響を与える可能性がある」といった声が上がったとするほか、供給先がロシア産材料を使った半導体の購買を停止する可能性についての指摘もあったとしている。

なお、今回のアンケートの回答に対する詳細な分析結果は、今後、SEMIジャパンが発行するメールマガジン「SEMI通信」や日経エレクトロニクスの誌上にて掲載する予定だという。