半導体露光工程で用いられるエキシマレーザー用混合ガスの原材料の1つとして用いられる希ガス「ネオン」の世界的な製造大手であるウクライナのメーカー2社が、ロシアによるウクライナ侵攻の影響から操業を停止したことをロイター通信などが報じている。

ネオンの製造を停止したのは、ウクライナのオデッサに本社を置くCryoinと、マリウポリに本社を置くIngasの2社である。

ネオンガスはDUV(深紫外)露光装置の光源であるエキシマレーザーに不可欠な不活性ガスで、ウクライナはネオンガスの世界供給の70%近くを生産しており、ロイター通信によれば、CryoinとIngasの2社で世界供給の45~54%を生産しているとする。

ウクライナのネオンは、ロシアでの鉄鋼製造における副産物として出るガスをウクライナに運んで精製したものとされている。ネオンは、中国でも製造されているが、その価格が上昇しており、地政学的リスクの高まりにより、入手が困難になる可能性も危惧されるようになっている。

ちなみに半導体材料に関する調査会社である米TECHCETによると、米国の半導体製造に使われているネオンの90%以上がウクライナ産であり、ウクライナ製ネオンの最大の輸出先が米国だという。すでにTSMCやIntel、Samsung Electronicsなど主要な半導体メーカーは各社ともに、半導体製造に必要なネオンガスを数か月分保有しており、当面の間は半導体の製造に支障は生じないとの見方を示している。国内半導体メーカーであるルネサス エレクトロニクスも在庫をある程度保有しているとするほか、ウクライナからの輸入は行っていないという。

ネオンの一部国産化に成功した韓国

韓国最大の鉄鋼メーカーPOSCOは、半導体製造用材料の国産化という韓国政府の方針に従い、半導体向け特殊ガス専門企業の韓TEMCと協力し、2019年末からネオン生産の国産化に向けた取り組みとして、ネオン生産設備の独自開発を進めてきたと、韓国の一部のメディアが報じている。すでに2021年末に、製鉄工程向けガス生産を通じて抽出されたネオンを精製し、エキシマレーザーガスまで生産するすべての工程を完成させたという。

POSCOの光陽製鉄所内に設置された処理設備は高純度ネオンを年間約2万2000m3規模で生産可能であり、この量は韓国内の需要の16%ほどを賄える規模だとPOSCOでは予想している。すでに2021年末までの試運転で、品質評価を完了しており、商用生産を進めているという。

なお、韓国は半導体製造に必須原材料であるネオン、クリプトン、キセノンなどの希ガスについて、ウクライナとロシアから国内使用量の最大50%ほどを輸入しているとのことで、ロシアのウクライナ侵攻が長期化するようなことになれば、SamsungやSK Hynixなど韓国内の半導体企業の生産に支障が生じる可能性があるとされている。

ルネサスはウクライナに研究開発拠点を保有

なお、ルネサスは、ウクライナのポーランドとの国境に近い西部の都市リビウに研究開発拠点を有している。元々は2021年8月に買収を完了したDialog Semiconductorの設計センターで、従業員や約200名ほど。全員無事で在宅などで業務を継続している模様だが、戦況次第では従業員の国外退去なども図っていくとしている。