韓国産業通商資源部(日本の経済産業省に相当)は1月11日、「国家先端戦略産業競争力強化および育成に関する特別措置法」(通称「半導体特別法」)が韓国の国会を通過したことを明らかにした。

韓国政府は、2021年5月に関係省庁合同で「K-半導体戦略」(「総合半導体強国」を目指した今後10年にわたる半導体国家戦略)の制定・発表後、今回の半導体特別法を制定を進めてきた経緯がある。

同国政府は、グローバルサプライチェーン再編と半導体など先端産業主導権競争が深化する最近の状況を考慮すると、半導体産業などを「国家先端戦略産業」として育成することが緊急であるという共感のもとで特別法制定を推進したと説明している。

半導体のほかに2次電池やワクチンも指定

特別法は、経済安全保障の確保および先端産業競争力強化を目的に「国家先端戦略技術」を指定し、関連産業である「国家先端戦略産業」を強力に育成・保護するために設けられたものとなる。半導体に加えて、バッテリー産業が戦略技術に含まれる見通しである。2021年、政権与党の「共に民主党」が法案を検討した際は、半導体産業に限られていたが、特定産業のみを支援すれば通商摩擦が懸念されるという指摘を受け、バッテリー(2次電池)やワクチンなども含まれるよう範囲が広げられた。

特別法の主な内容の1つ目としては、国家先端戦略産業を育成するため、国務総理室傘下に20人以内で構成される「国家先端戦略産業委員会」を設置し、国家先端戦略技術および産業に対する主要支援政策を審議・議決する。

この委員会は、国務総理(委員長)、産業部長官(幹事委員)を含む政府委員+民間委員20名で構成される。同委員会を設置し、基本計画(5年単位)と実践計画(1年単位)を立てる。そして、投資・技術革新・人材など全方位で企業成長を支えるための支援策を実施する。先端産業投資を促進するため、許可迅速処理特例、基盤施設構築、苦情処理、ファンド助成、税額控除などをパッケージで支援する。戦略産業を営む企業が研究開発、生産活動などに関連する規制改善を申請すれば、関係行政機関の長は15日以内に結果を返信し、法令整備が不要な内容は積極的に処理するようにするという。

2つ目は、国家先端戦略技術の研究開発について、政府予算編成の際に優先的に反映されることとなる。国務総理駐在委員会審議・議決を経て、対象事業に選定された事業に対する許認可を迅速に処理することができるようになるという。

また、これらの戦略技術として選定されると、研究開発や施設投資に対する税制支援が受けられるようにもなる。大企業と中堅企業は研究開発費用の最大40%、中小企業は最大50%が控除される。施設投資は大企業の場合6%、中小企業は16%が控除される。大企業の一般技術研究開発費用に対する税額控除が2%であることを勘案すると、控除規模が拡大することとなる。

さらに、戦略技術を保有する企業が該当技術を輸出したり、買収合併(M&A)する場合、政府の承認を受ける必要があるように対象を強化。戦略産業特化団地の運営を通じて、基盤施設の造成や運営に対する支援も可能にしたほか、特化団地造成に必要な許認可の迅速な処理、入居企業の設備投資支援と人材養成、研究開発(R&D)予算の優先反映、規制改善、技術・人材保護条項なども支援することにしたという。

3つ目は、専門人材確保のために学部契約学科(入学時点でSamsung Electronicsなどの就職先が決まり、学費免除など優遇される半導体専門の学科)や大学院の設置と運営を支援する。「戦略産業総合教育センター」を構築し、学生の実務能力を高めるほか、海外の優秀な研究開発分野の人材誘致のための査証(就労ビザ)特例もサポートするようにしたという。

このほか、先端産業技術人材保護のために企業の申請により専門人材を指定し、企業と専門人材の間の秘密保持、離職制限などに対する契約を締結するよう法的根拠を設けたというしている。