富士通は10月9日、オンラインで記者説明会を開催し、グローバル拠点を含む全社員約13万人の働き方改革の実践知とテクノロジーを融合させたソリューション群を「FUJITSU Work Life Shift」として、グローバルで提供開始します。同社は2023年度までにFUJITSU Work Life Shift関連ビジネスで売り上げ1000億円を計画している。

コロナ禍の課題を糧にしたソリューション群

FUJITSU Work Life Shiftは、自社実践をもとにニューノーマルにおける新たな働き方を実現する17種のソリューションを体系化した。「Smart Working(最適な働き方の実現)」「Borderless Office(オフィスのあり方の見直し)」「Culture Change(社内カルチャーの変革)」の3つのカテゴリーで、自社実践で得られたノウハウやテクノロジーに加え、すでに提供しているものも含め59種のサービス・製品を最適に組み合わせて提供する。

  • 「FUJITSU Work Life Shift」の概要

    「FUJITSU Work Life Shift」の概要

富士通 執行役員常務の島津めぐみ氏は「5月にテレワーク環境における業務影響について、従業員を対象に生産性の向上に関する調査を実施した結果、解決策の上位にネットワークの接続性、チームメンバーとのコラボレーション環境の充実、紙を前提とした業務の見直し、自宅の環境などが挙げられた」と説明した。

  • 富士通 執行役員常務の島津めぐみ氏

    富士通 執行役員常務の島津めぐみ氏

同社では緊急事態宣言以降、テレワーク利用者(VPN利用者)が6万人を超え、ネットワークの接続性に問題が発生したことから、VPN設備を増設して対応した。しかし、今後も多様な環境に点在するチームメンバー間のコラボレーションの推進やクラウドシフトの加速で予想される通信トラフィックの増大に対応するためには、VPN設備では限界があると判断し、セキュアでスケーラブルなクラウド型ネットワーク基盤に切り替える決定を下している。

また、コミュニケーションがオンライン主体となることで会議数(20%増)・メール数(同)が増え、オンライン会議では一方通行のコミュニケーションのため同時多発議論が困難な状況となり、テレワーク従業員が共働できず業務効率が低下したという。そのため同社独自の空間インターフェース技術を実装するコラボレーション基盤として「FUJITSU Collaboration Space」を導入している。

さらに、テレワークにおける想定外のトラブルも発生し、多様な環境起因の未知トラブル多発による障害の長期や、家庭内での予測できない出来事による故障、移動中の落下など、テレワーク勤務中にPC故障(平均故障いrつ7%増、最大50%増)で業務継続ができない状況にとなり、さまざまなワークプレイスをカバーできるサポートの仕組みを構築して対応した。

これら、ネットワーク、コラボレーション、自宅の環境などの課題に対応したソリューション群がFUJITSU Work Life Shiftというわけだ。

  • FUJITSU Work Life Shiftの体系

    FUJITSU Work Life Shiftの体系

3カテゴリーのサービス・製品

Smart Workingでは「Modern Workspace(提供済み)」「Secure Remote Working」「Zero Trust Network(10月下旬提供予定)」などを提供し、企業では回線やリソースを増減させてもセキュリティや品質面の課題が残されていることから、グローバルパートナー企業を含むさまざまなサービスの自社活用で得たノウハウをテンプレート化して提供する。また、活用促進に向けた現場サポートを行う。

Modern Workspaceは、Microsoft 365やMicrosoft Teams、Boxなどのコミュニケーションサービスをグローバル共通のテンプレートに基づき、最短5営業日で提供する。

Secure Remote Workingは仮想デスクトップサービス「V-DaaS」(提供済)とシンクライアント端末サブスクリプションサービス「マネージドデバイスサービス」(10月下旬提供予定)を提供し、クラウド型の仮想デスクトップサービスを最短5営業日で提供するほか、シンクライアント端末にデータが残らないため、端末紛失による情報漏えいリスクを回避するという。

  • Secure Remote Workingの概要

    Secure Remote Workingの概要

Zero Trust NetworkはVPNなどの制限付きのネットワークをはじめ、拡張と縮退が柔軟に可能なゼロトラスト(信頼せず攻撃されることを前提として、常に認証・アクセス制御を行うというセキリティの考え方)・ネットワーク環境をクラウドサービスとして提供し、要員の増強や外部との連携など急な回線増強の要望にも迅速な対応を可能としている。

  • Zero Trust Networkの概要

    Zero Trust Networkの概要

Borderless Officeについては「Customer Experience Center(2020年第3四半期に提供予定)」「Workplace Support」などを提供し、今後ますます、自宅やオフィスなど働く場所、時間は多様化しているためIT部門では問い合わせやサポートへの対応負荷が高まっていることから、国内外で自社実践するデジタル化されたサービスデスクによる運用の自動化を実現し、ノウハウがあるオンサイトサービスを活用することで、時間、場所にとらわれないサポートを提供。

Customer Experience Centerは、同社のサービスデスクにより、電話、Web、チャットなどを介して、モバイルワークに必要な各種申請や問い合わせが受けられるサービスを提供する。

  • Customer Experience Centerの概要

    Customer Experience Centerの概要

Workplace Supportはオンサイトサポート「グローバルオンサイトオペレーション」(提供済み)と、端末修理サポート「テレワークパック」(10月下旬提供予定)を提供。グローバル180か国以上で、端末提供や修理などのオンサイトサービスを提供することに加え、国内では従来保守の対象範囲外であった過失による故障(コーヒーなどの液体をこぼした、PCを落下させたなど)もサポートし、テレワークに向けた個人宅への引き取りおよび代替え機の翌日配送サービスを開始する。

  • Workplace Supportの概要

    Workplace Supportの概要

Culture Changeに関しては「Virtual Collaboration」「Workforce Analytics」などを提供し、ニューノーマルな社会に向けて、働き方が大きく変わっているためチームでの働き方や部下との関係性など、働き方の文化も変化しており、日々の業務における、プロジェクトメンバー間のコミュニケーション活性化や作業状況の可視化、共有などを円滑に行うサービスを提供し、生産性の高い働き方を支援する。

Virtual Collaborationは、共創空間を提供する新たなサービスのFUJITSU Collaboration Space(11月30日に提供予定)などによる共働の促進を支援。Workforce Analytics(提供済み)は同社のAI技術「Zinrai」とMicrosoft 365 AIを活用したソリューションでPC利用状況を可視化し、上司・部下の円滑なコミュニケーション支援、生産性向上に向けた施策の検討を支援する。

FUJITSU Collaboration Spaceは、富士通研究所の空間ユーザインターフェース技術を活用し、リモートワークにおいてもメンバー同士が同じ空間の中で作業しているかのような環境を提供し、テキストファイルや動画、音声、手書き文字、CADデータなどの多様なデータを複数メンバーで同時に入出力・共有・編集ができ、途中で中断した作業も利用ログをさかのぼりデータ呼び出しを可能としている。

  • FUJITSU Collaboration Spaceの概要

    FUJITSU Collaboration Spaceの概要

FUJITSU Work Life Shiftの今後の展開として、富士通 理事の古賀一司氏は「グローバル視点で働き方改革を加速させて実践知を積み上げ、新たなテクノロジーの開発・実装によりソリューションを拡充する。また、医療・建設現場などの業務に関連するサービスを順次提供することでニューノーマル社会に適した持続可能で多様な働き方の実現に貢献していく」と述べていた。

  • 富士通 理事の古賀一司氏

    富士通 理事の古賀一司氏