商品をモノとして購入せずに、期間に応じた料金を支払ってサービスとして利用する「サブスクリプションビジネス」。代表的なサービスと言えば、SpotifyやApple musicなどの定額音楽配信サービスがあるが、今では自動車や洋服など、デジタルではない製品の提供形態として、サブスクリプションが利用されるようになっている。

国内でもトヨタ自動車の定額乗り放題サービス、JRの駅で利用できる自動販売機の定額サービスが登場し、話題を呼んでいる。こうしたサブスクリプション・ビジネスを成功させるには、何が重要なのだろうか。

このほど、サイオステクノロジーがサブスクリプション・ビジネスに関する勉強会を開催したので、その説明をもとに、サブスクリプション・ビジネスを成功させるためのポイントを整理してみたい。

APIエコノミーにおいて不可欠なサブスクリプション

サブスクリプション・ビジネスと関りが深いキーワードに「APIエコノミー」がある。APIとは、あるソフトウェアから別のソフトウェアを呼び出す仕組みであり、APIエコノミーとは、自社のソフトのAPIを公開することで、ビジネスの拡大を目指すことを意味する。

サイオステクノロジーはサブスクリプション・ビジネスを支援するプラットフォームを提供しているが、 第2事業部 プロフェッショナルサービス事業企画部 担当部長の二瓶司氏は、「ここ1年、サブスクリプション・ビジネスの案件が増えている」と述べた。そして、「サブスクリプション・ビジネスにおいて、サービスは継続的に改良していく必要があるので、APIが不可欠」と説明した。

  • サイオステクノロジー 第2事業部 プロフェッショナルサービス事業企画部 担当部長 二瓶 司氏

利用者からすると、「シェアリング・エコノミー」に代表されるさまざまなサービスのニーズが増大しており、また、サービス供給者からすると、XaaS型サービスの利用料の低下からサービスが急増しているという状況にあるという。

加えて、1件当たりのプロジェクトにおいてかけられる人材と予算が減っていることから、「借り物で行く」という動きが見られるそうだ。

  • APIエコノミーが求められている背景

二瓶氏は、APIを活用するメリットとして「スピード」と「継続性」を挙げた。スピードについては、サービスの市場への投入、機能改善、事業拡張などにおいて、効果を得ることができる可能性がある。

例えば、APIを利用することで、他社の既存のサービス活用を前提に事業を組み立てることが可能になるほか、自社サービスを機能として公開することができるので、サードパーティのアプリケーションやサービスを通じて迅速かつ広範にサービスが拡散していくことが期待できる。

また、継続性についても同様に、サービスの市場への投入、機能改善、事業拡張などにおいて、メリットを得ることが可能だ。

具体的には、APIを活用することで、トライ&エラーを繰り返しながら付加価値の追加を小ロットで実現できるようになるほか、顧客やパートナーとの連携が容易になるため、顧客によるリファレンスやパートナーとの相互送客を活用して、事業をスケールアップできるようになる。

このように、スピードと継続性を強みとするサービスにおいてマネタイズを実現するには、「サブスクリプションビジネスで、機能を提供するスピードを上げて、それを継続して行っていくことが必要」と二瓶氏は述べた。

サブスクリプション・ビジネスを進める上でのポイント

二瓶氏は、APIを活用したビジネスを進めていく際のポイントとして、以下の4つを挙げた。

  • 「時間」を最大の価値とする
  • いかに上手に「借り物競争」をするか
  • 「結婚」も「離婚」も「同時恋愛」も簡単
  • 「運用改善」と「パートナー戦略」の巧拙が勝負の分け目

「『結婚』も『離婚』も『同時恋愛』も簡単」とは、サービスを展開するにあたり、パートナーを1社に絞り込まずに、複数のパートナーと連携して保険をかけることを意味する。例えば、地図サービスであれば、ゼンリン、昭文社、Google Map、オープンソースのデータなどがあるが、用途に応じて使い分ければよい。

また、二瓶氏は「APIドリブンのビジネスにおいて、『サービスをリリースしたから落ち着こう』というのは禁物。ユーザーの利用履歴を見て、サービスを改善していくことが不可欠」と語った。

二瓶氏はAPIを活用したビジネスに成功している企業の例として、楽天を紹介した。楽天は2018年、米国R Softwareと、世界の10,000以上のAPIにアクセスできるAPIマーケットプレース「Rakuten RapidAPIを提供するパートナー契約を締結した。

楽天は「Rakuten RapidAPI」のためにデータレイクを提供しているが、そこには利用する企業のデータが蓄積されることから、サービスのトレンドをつかむことができるというわけだ。

APIエコシステムのPDCAサークルをカバー

さて、サイオステクノロジーは、「システム投資」「オペレーションの高負荷」「サービスの構成や価格の見直しが常時必要といった」サブスクリプション・ビジネス参入における課題を解決するため、サブスクリプションビジネスのためのプラットフォーム「SIOS bilink」を提供している。

「SIOS bilink」は、リカーリング(定期従量課金)・ルールエンジン、データ/システム連携基盤から構成される。

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サイオスはAPIエコシステムに関連したソリューションとして、「APIエコシステムデザイン支援」や「API Management」を提供しており、「SIOS bilink」もその一環となる。

二瓶氏は、APIエコシステム構築の支援について、「われわれは、ビジネスモデルの検討、実装・テスト、パートナーやユーザーへの利用を促す活動、運用といった、PDCA全般にわたり活動を支援できるのが強み」と説明した。

MKIやオージス総研などもAPIエコシステム関連のコンサルティングを手掛けているが、2社は上流工程の設計を強みとしているという。対するサイオスは「われわれは、上流工程に加え、システム設計や運用のノウハウを持っている」と競合に対するアドバンテージを語っていた。