東北大学は6日、同大 金属材料研究所の毛利哲夫教授、同大学工学研究科の陳迎教授、産業技術総合研究所の香山正憲首席研究員、大阪大学の尾方成信教授らによる共同研究グループが、スーパーコンピューターを用いて材料の強さに関わる解析・設計の手法を新たに開発したことを発表した。

概要図:実材料の強度には、電子・原子のふるまいと内部組織の両方が影響する(出所:東北大学Webサイト)

「材料の強さ」は、原子間の結合の強さと、結晶粒界や転位線といった原子配列の乱れ(欠陥)に大きく影響を受けるものの、現在の材料設計は経験に基づくところが大きく、労力面や経済面で非効率的となっている。効率的な材料開発のためには、原子間の結合や原子配列の乱れといったミクロレベルの現象を考慮した材料設計手法を確立することが必要不可欠で、これまで十分には成し遂げられていなかった。

(上)材料内部における原子の配列と結晶の中の転位を黄色で示す / (中)断面図 / (下)転位の運動(出所:東北大学Webサイト)

そこで、同研究グループは、材料の強さの仕組みをミクロレベルから調べる、すなわちマルチスケールで材料の解析・設計する手法の開発すべく、スーパーコンピューターによる解析を行ったという。これまでも原子の結合力に着目した材料の「強さ」は解析されていたが、同研究では、その「強さ」の背後に磁性の効果など多様な物理が関与していることを初めて明らかにした。さらに、最新の計算手法を用いて、これまで不明となっていた「欠陥の周囲の原子の位置や動きの可視化」に成功し、強さ、靭さ、弱さ、脆さを生じる原子配列の変化(素過程)を明らかにしたという。

なお、同研究では電磁鋼板で有名なFe-Siを対象にして解析を行っているが、この手法は他の材料にも適用可能となっている。今後は、スーパーコンピューターを用いた材料設計の緻密化、効率化の促進が期待されるとしている。