日本航空(JAL)と日本IBMは12月14日、都内で記者会見を開き、航空業界における整備士の働き方を変革することを目的にスマート・シンプル・スタンダードをキーワードとして、共同で航空機整備業務専用のIBM MobileFirst for iOSアプリを開発したと発表した。導入は2017年4月~を予定している。

アプリの利用例

システムイメージ

現在、JALの運航整備は航空機が到着する前に整備士がオフィスで複数のシステムを操作し、事前に担当する航空機のフライト・スケジュールや過去の整備記録を確認しているほか、実施した整備内容を紙に記入した後、オフィスに戻ってシステムにも入力して記録するなど、煩雑な事務作業を行っている。

スマホを手にする整備士

今回、開発したアプリを活用することにより、整備士はこれまでオフィスで行っていた事務作業の大半をiPhoneを使い、場所を選ばずに実施することができるという。また、画像や動画もアプリ上で手軽に活用でき、航空機の状況をタイムリーに関係者間で共有することが可能。

さらに、発着予定時刻などのフライト・スケジュール、ゲートの変更といった最新情報をiPhoneのアラート機能を活用してタイムリーに受け取り、迅速な対応を可能とし、iPhoneのほか、iPadで利用が可能だ。

JALエンジニアリング IT企画部長の西山一郎氏

JALエンジニアリング IT企画部長の西山一郎氏はキーワードであるスマート・シンプル・スタンダードの3つについて「スマートは、オフィスのみで縛られていた情報の閲覧や入力作業をモバイルアプリを使うことにより、場所を選ばずに常に最新の状態で活用できる。シンプルに関しては到着~出発まで航空機の整備は時間を要するため、取り扱い説明書が不要なシンプルなアプリとなっている。そしてスタンダードについては、JALだけでなく世界の航空会社も導入できる標準的なアプリとして作りこんでいる。モバイルアプリとの違いは、航空機を整備する際は整備基幹システムやフライト情報など、さまざまな情報を扱っているため、それらの情報をモバイルシステムと連携させ、1つのアプリだけで必要な情報にアクセスできる。これまでにも、モバイルを活用したインターネット経由などから単一のシステムにサインインし情報を得ていたが、1回のシングルサインインで1つのアプリから必要なデータソースすべてにアクセスできることが大きな特徴だ」と述べた。

日本IBM モバイル事業統括部 事業部長の藤森慶太氏

続いて、日本IBM モバイル事業統括部 事業部長の藤森慶太氏は「今回の取り組みは、単にシステムを開発するだけではなく、整備業務そのものを変革することに重きを置いている。モバイルシステムは実際に使用する現場の従業員に常に寄り添っているため、業務目線でどのような価値が提供できるのかということが重要だ。開発のポイントとしては、常に現場目線で開発を進めていくことに加え、業界標準としてJALのみの業務に固執せずに新しいテクノロジーを活用して、どのような整備業務の在り方が望ましく、新しい働き方を考えられるのかという点を念頭に置いた。ユーザー目線において、働く動線上でどのような機能が最も有用なのかということを徹底的に洗い出して開発した。すでにフィンランドのフィンエアーやカナダのエア・カナダは導入を決定したほか、そのほかの航空会社からも引き合いがある」と説明した。

今後、JALはアプリを活用することで整備士の業務を変革し、航空機の品質と世界トップの定時性のさらなる向上を目指すとともに、整備士の新しい働き方の世界標準を発信していく。将来的には開発領域をCAやパイロット、地上業務間の連携を強化などに拡大することも検討している。