クラウディアンは2015年1月30日、東京・帝国ホテルにてメディア・コンファレンスを開催し、オブジェクトストレージの導入を促進するパートナー企業プログラムとして「CLOUDIAN HyperStore Ready」の本格展開を開始することを発表した。また、米CLOUDIANのCMOも来日し、ワールドワイドでの市場動向やオブジェクトストレージのニーズなどについて、事例を交えて語った。

クラウディアン株式会社 代表取締役 太田洋氏

代表取締役の太田洋氏は、冒頭で2015年のストレージ市場のトレンドが「ハイブリッドクラウド」「スマートデータ(ビッグデータ&アナライズ)」「コスト効率」にシフトしてきていることを述べた。つまり、ネットワークを介した膨大なデータのやり取りが頻繁になり、より安価で柔軟性の高いストレージが必要となってきているということだ。

オブジェクトストレージは、SSDやSAN/NASのような従来のブロックストレージと比べると読み書きの速度こそ劣るものの、拡張性、価格、容量、堅牢性・耐障害性において、遥かに勝る。従来は、こうした特長を持ったストレージとしてテープメディアが主流であった。しかし、テープはオフラインでの利用が一般的で、データのリカバリには膨大な時間がかかる。この点で、アクセス性に優れたオブジェクトストレージのほうがメリットは大きい。

クラウディアンの提供するオブジェクトストレージソフトウェア「CLOUDIAN Hyperstore」は、標準的なx86サーバを活用してオブジェクトストレージを構築するソフトウェア製品である。2~3台のサーバを用いて数TBという容量からスモールスタートすることが可能なため、一般企業での活用にも適している。クラウドストレージ「Amazon S3」に準拠しており、S3に対応するアプリケーションやNASなどから容易に接続することができるのも特長だ。

取締役 COO 本橋信也氏

取締役 COOの本橋信也氏は、「Software Defined Storageであれば、大きな内蔵ディスクを搭載した最近の汎用サーバを活用して、大きなストレージ空間を構築することができます。ベンダーロックインされることもなく、目的にあったハードウェアを選択していくことができるのは、大きなメリットの1つです」と長期にわたってコスト削減を期待できると説明する。

「SDS技術の特長に加えて、クラウディアン独自の機能や性能が評価され、単なるオブジェクトストレージというカテゴリとしてではなく、CLOUDIANという製品として認識されるようになってきたと感じている」(本橋氏)



エンタープライズ市場を戦うためにパートナーを強化

CLOUDIAN Hyperstoreは、データセンター事業者やサービスプロバイダーでの導入が中心で、一般企業での導入は遅れていた。しかし昨今では、エンタープライズを中心に上述のようなストレージニーズが高まっており、2013年後半ごろから問い合わせが急増していたという。

「十分な技術者・管理者を確保できない企業においては、オブジェクトストレージの導入・運用は困難です。そこで当社では、企業ユーザーでも容易にCLOUDIANを導入・活用できるよう、3つの戦略を展開しています」(太田氏)

 1つは、アプライアンスだ。サーバハードウェアにCLOUDIANをインストールしてチューニングを施し、ネットワークに接続するだけで使えるようにした製品として提供する。2つ目は、ビッグデータ分析やメールアーカイブ、ファイル共有、バックアップなどの各種アプリケーションと組み合わせて販売することで、すぐにユーザーのビジネスに貢献できるソリューションパッケージとしての提供。3つ目は、インストールと運用の仕組みを簡素化し、手間をかけずに導入・運用できるように工夫した点である。これは、顧客に製品を導入するシステムインテグレータにとっても有用な機能となるだろう。

これらのエンタープライズ市場戦略においては、ハードウェア/ソフトウェアベンダー、システムインテグレータとの協業が非常に重要となる。そこでクラウディアンは、パートナープログラムを強化してエコシステムを形成する「CLOUDIAN HyperStore Readyプログラム」を開始した。日立システムズや科学情報システムズ、コアマイクロシステムズ、ファイルフォースなどの参加企業と共に、「時代に則したソリューション展開を目指す」(太田氏)とのことだ。

CLOUDIAN HyperStore Readyラインアップ(2015年1月時点)

米CLOUDIANのCMO Paul Turner氏

米CLOUDIANのCMOであるPaul Turner氏も、世界的にストレージへのニーズが変化しており、これまでとは異なるストレージ──オブジェクトストレージ=CLOUDIANが求められるようになっているとする。特にエンタープライズ市場でのアプライアンス展開が重要であることを述べ、次のようにそのメリットを説明した。

「従来のトラディショナルなストレージは、導入や運用こそ容易ですが、柔軟性に欠け、高価です。また単純なストレージソフトウェアは、柔軟性・コスト効率こそ優れていますが、導入や運用が煩雑になりがちです。CLOUDIAN HyperStoreアプライアンスは、その双方を兼ね備えた製品です」(Turner氏)

さらにTurner氏は、CLOUDIANの活用がグローバルで増えていることを強調し、米国シリコンバレーとインドにデータセンターを持つソフトウェアベンダーが、CLOUDIANを活用して地域をまたがる「ジオクラスタ」を形成し、グローバルなデータ共有に活用している事例などを紹介した。

太田氏は、CLOUDIANのエンタープライズ市場とグローバル市場への展開について、次のようにまとめている。

「クラウディアンは、高品質な日本発の製品をグローバル市場に届けるため、米国を中心にグローバルな営業体制を整え、1つのチームとして展開していくことを目指しています。日本だけでなく、海外ユーザーも順調に増えており、ストレージ市場とともに成長しているところです。今後も、国内外でのパートナー化とプレゼンスを強化し、エンタープライズ市場向けの製品を強化していきます」(太田氏)