理化学研究所(理研)は1月27日、「SACLA」をはじめとするX線自由電子レーザ(X-ray Free Electron Laser:XFEL)施設において、パルス幅が理論極限である波長程度まで短くなったX線である単一サイクルX線パルスを生成する手法を見出したと発表した。

同成果は、理研 放射光科学総合研究センター 田中次世代X線レーザー研究室の田中隆次主任研究員によるもの。詳細は、米国の科学雑誌「Physical Review Letters」のオンライン版に掲載された。

単一サイクル光パルスとは、発光している間に光の波がわずか1回だけ振動する光である。可視光や赤外線領域では、単一サイクル光パルスの発生はすでに成熟した技術で、パルス幅が数フェムト秒という短パルス特性を生かして、光触媒などの化学反応の過程をストロボ撮影のように観察することが可能となっている。また最近では、高次高調波発生という原理を用い、より波長の短い極端紫外線領域において、パルス幅が数100アト秒という単一サイクル光パルスの利用も可能になってきている。一方、可視レーザや高次高調波発生とはレーザ発振の原理が異なるXFELでは、単一サイクル光パルスを発生する原理や手法は開発されていなかった。特に、電子ビームが周期的磁場を通過する際に生じる"光のすり抜け効果"(光が電子よりもわずかに前方へ進む現象)が、XFELにおける単一サイクル光(X線)パルスの発生を不可能にしてきた。

今回、田中主任研究員は、光波の干渉効果を利用することによって"光のすり抜け効果"を相殺し、パルス幅を制御することが可能な手法を考案し、XFELでも単一サイクルX線パルスを発生できることを理論的に確認した。同手法を硬X線領域にまで拡張できれば、パルス幅が数100ゼプト秒という究極の光を創り出すことも可能になる。これにより、ゼプト秒領域の超高速現象を追求する、まったく新しい科学分野を切り開く手法になることが期待できるとコメントしている。