日本人に最も身近な野菜であるダイコンのゲノム(全遺伝情報)を、東北大学大学院農学研究科の西尾剛(にしお たけし)教授、北柴大泰(きたしば ひろやす)准教授らとかずさDNA研究所(千葉県木更津市)が解読した。ダイコンは、日本各地で特徴的な地方品種が多く成立しており、日本で最も発展した野菜としてなじみが深い。国内の野菜の栽培面積としてもダイコンは第一位である。この「日本の野菜」といえるダイコンのゲノム解読を世界に先駆けて成し遂げた。5月17日付の英科学誌DNA Researchに発表した。

写真. ゲノムが解読された青首ダイコン

ダイコンは、ゲノム構造が複雑で、重要な野菜でありながら、その解読が遅れていた。東北大とかずさDNA研究所がそれぞれ作成していたダイコン遺伝子の高密度連鎖地図を統合して、次世代DNAシークエンサーのデータも蓄積して解読にこぎつけた。解読したのは、最も普及している青首ダイコン。ゲノムの76%に当たる4億塩基対の塩基配列を決め、その中に約6万2000個の遺伝子を確認した。

ゲノム解読情報は誰もが利用できるように公開した(http://radish.kazusa.or.jp/)。また、岩手大学、野菜茶業研究所(静岡県島田市)、タキイ種苗(京都市)と協力して、8品種の間の1000以上の遺伝子について塩基配列の変異を明らかにして、育種に有用な情報も得た。西尾剛教授は「日本はダイコンの変異の宝庫で、多種多様な品種がある。世界の主要な作物は国際協力でゲノム解読が進んだが、ダイコンに関しては日本の研究グループだけで解読した。この成果は、ダイコンの遺伝子解明や育種に役立つ。現在はゲノムの中から、辛みや根の形に関与する遺伝子を探している」と話している。