エンタープライズシステムベンダーへの拡大を図る米Dellが進めているのがソフトウェア分野の強化だ。この分野で同社は約20の企業買収を行い、急ピッチで製品ポートフォリオを組み立てている。非公開企業となった現在、ソフトウェア資産はどのように新しいDellに貢献するのか? Dellが12月12日から2日間、米オースティンで開催した「Dell World 2013」でソフトウェア事業部を率いるJohn Swainson氏に話を聞いた。

* * *

ソフトウェアはDellの新規事業であり、数々のソフトウェアベンダーを買収してきた。部門単位では赤字だが、黒字化はいつになるのか? 売上げ目標は?

Dellのソフトウェア事業部プレジデント、John Swainson氏。IBMでキャリアを積んだ後、Computer AssociateのCEOを務めた。ハードウェアをDNAに持つDellにあって、ソフトウェアのカルチャーを構築しているところだ「ソフトウェア事業とは正しいスキルを持つ人材をみつけること」とも言い切る。優秀な人材を引きつけるのは「福利厚生よりも"やりがいのある仕事"」

Swainson氏 : GAAPベースでは通常、ソフトウェア企業の買収は買収コストなどの関係で最初の1~2年は赤字になる。これはあらゆるソフトウェア企業の買収でいえることだ。このため黒字化はGAAPベースでは来年度を目指すが、キャッシュベースでは今四半期と予想している。公にしている目標は、今後2~3年で20億~30億ドルの事業にするということだ。

ソフトウェア事業部はセキュリティ、システム管理、情報管理を持つ。フォーカスしている分野、成長分野は?

Swainson氏 : システム管理が最大で、売上は8億ドルに達している。次いで、セキュリティで、売上はシステム管理に劣るが、2ケタで伸びている急成長分野だ。だいたい予想の範囲内で推移している。

セキュリティが成長している背景として、セキュリティは複雑であり、需要が高いことが挙げられる。我々はネットワークセキュリティ、IDアクセス管理などの製品を持っており、規模も業種もさまざまな顧客に提供している。トレンドとしてプライバシーへの関心が高まっており、企業の機密情報保護の重要性も認知が進んでいる。これをBYODが加速しており、このような市場トレンドが堅調な成長と業績に貢献している。

私がソフトウェア事業部に加わったとき(Swainson氏は2012年にソフトウェア事業部プレジデントとしてDellに入社)、どこに集中するのかを考えた。サーバー、ストレージ、ネットワークなどDellの他の製品とシナジー効果が強く、セキュリティの中でも重要度の高いと思われる部分は何かーーそこでセキュリティ、システム管理、情報管理の3つの分野を特定した。

同時に、プロフィールにフィットすると思える企業を買収した。バックアップと複製のAppAsure、ネットワークセキュリティのSonicWALL、Questなどだ。Quest(2012年7月に買収)はDellにとってこの分野で最大の買収であり、製品範囲も広い。すでに当初の事業規模の6億ドルから15億ドルに成長している。Quest買収では4000人の従業員も獲得できた。この中には開発チーム、営業やマーケティングスタッフが含まれる。これらの買収を通じてソフトウェア事業は規模を得られ、ソリューション構築など大きな計画を実行に移すことができるようになった。

BIなど遅れている部分もある。ポートフォリオで足りないと感じている分野は?

Swainson氏 : BIでは製品と呼べるものはない。ここでは社内構築か買収かになるだろう。

情報管理など拡大したい分野は他にもあるが、正直なところ、最優先していることはこれまで取得した技術の強化だ。また、すでにある技術をDellの他の製品に統合することだ。いまのポートフォリオを維持しつつ、機能を改善させていく。

SDE(Software Defined Everything : ストレージやデータセンターなどさまざまなリソースがソフトウェアにより定義される)というトレンドがあり、ソフトウェア定義が重要になってきた。ソフトウェアはDellのハードウェアにどのようなメリットをもたらすのか?

Swainson氏 : 我々がこれまで「システム」と呼んできたものが、根本から変わりつつある。ハードウェアがx86で標準化され、x86の性能も十分なレベルに達している。カスタムハードウェアから標準のハードウェアとその上で動くソフトウェアにモデルが移っている。この段階で起こっているのが、ハードウェア中心からソフトウェア中心の世界への移行だ。

ここでは演算処理、データ、ネットワーキングなどこれまでは目的別に分かれていたシステムリソースを、ソフトウェアにより柔軟に配分できることが重要になっている。ソフトウェアは(リソースの制御だけでなく)、環境全体の管理という点でも機能が増えてかなりのことが可能になってきた。これにより、我々はかつてない柔軟性を得られ、動的な特性を活用できる。

今後はもっと分散が進むだろう。コンピューティング、データがあちこちにあり、全体として制御や管理することが大切になる。これは複雑性も増すことになる。これを管理することがDellのソフトウェアの役割で、これは我々のソフトウェア、ハードウェアに差別化をもたらすものでもある。