災害対策や仮想化の進展で高まるバックアップ効率化のニーズ

社会環境や情報処理にかかわる環境が大きく変化するなか、地方自治体においても、情報システムの運用の効率化、とりわけデータ・バックアップの効率化に対するニーズが高まりを見せている。

バックアップ・ソフトの提供ベンダーとして区役所の新システムの導入を支援した、日本CAのシニアコンサルタント 千葉俊輔氏

その背景の1つには、東日本大震災を教訓とした災害時の業務継続の重要性への認識の高まりがある。地方自治体では、実際に、地震や津波によって情報システムが深刻な被害を受け、事業継続が困難になったところも少なくなかった。そのため、効率的なバックアップによって情報の可用性を高めると同時に、緊急時にバックアップ・データを迅速に持ち出せるといった対応が求められるようになった。

もう1つの背景は、地方自治体の情報システムの仮想化が進展し、仮想マシンが増加の一途をたどる中で、情報システムの運用が複雑化し、バックアップを運用するための時間やコストが増大していることがある。こうした問題に対処するために、複雑な仮想環境においても効率的なバックアップを実現できる技術に注目が集まっている。

また最近では、今年6月に、大手Webホスティング・ベンダーで大規模なデータ消失事件が発生。あらためてバックアップの重要性がクローズアップされている。

ここでは、ITコストの削減と運用の効率化に取り組む、ある区役所の事例紹介を通して、複雑化する仮想環境で効率的なバックアップを実現する方策を明らかにする。

バックアップ時間の大幅な短縮に挑む

同区役所は、庁内業務サーバの集約化による調達経費の削減と管理負荷の軽減、情報セキュリティの向上に向けて、数年前から仮想化技術の本格導入を開始した。その後も、サーバの集約化に取り組み、住民サービスや財務会計などの業務システムの仮想化を推し進めていった。また、業務PCのデスクトップ環境をサーバ上で動作させるデスクトップ仮想化にも取り組み、現在では、9~10台のVMware ESXサーバ上に100台を超える仮想マシンが稼働している。

しかし、仮想マシンが増加し、さまざまな業務やデスクトップ環境が稼働するにしたがって、データ・バックアップの作業が複雑化し、処理時間が増大してしまうという課題に直面することになる。

同区役所では、こうした課題に対応するために、記録装置をこれまでのテープベースからディスクベースに変更するとともに、新たなバックアップ製品の導入に踏み切った。選定されたのは、仮想環境に対応し、システム全体を簡単かつ高速にバックアップできる日本CAの「CA ARCserve D2D」である。

選定の決め手となったのは、従来のバックアップ時間を大幅に短縮するCA ARCserve D2Dならではの機能である、ブロックレベルの継続的な増分バックアップだ。これは、最初に一度だけフルバックアップをディスクに作成するだけで、以降は変更されたブロックのみを追加していく「増分バックアップ」を作成するというもので、バックアップ時のサーバへの負荷を軽減するとともに、バックアップ時間を大幅に短縮できる。

CA ARCserve D2Dの増分バックアップの仕組み。バックアップを3世代保存する設定にした場合、4回目以降の増分バックアップの際には、4つ前のフルバックアップデータに3つ前の増分データがマージされる。フルバックアップデータの数を抑えられるため、使用ディスク容量を最小限にできる

バックアップ・ソフトの提供ベンダーとして同区役所の新システムの導入を支援した日本CAのシニアコンサルタント 千葉俊輔氏は、継続的な増分バックアップのメリットについて、「残したいバックアップの世代数をあらかじめ設定しておけば、その数を超えた段階で、最も古い増分バックアップがフルバックアップに合成され、バックアップ容量を最小化することができます。管理者は、バックアップ先のディスク容量の不足を心配することなしにバックアップの自動化を実現し、運用工数を大幅に削減することが可能です」と説明している。

多様な業務システム全体を簡単に一元管理

同区役所のシステムでは、仮想マシン上でさまざまな業務システムが稼働している。そのため、CA ARCserve D2Dが多様なバックアップ/リストア方式をサポートしていることも選定の重要なポイントとなった。

その1つは、仮想マシンにバックアップ・ソフトをインストールする必要のないエージェントレスの構成で、ホスト側から仮想マシンを構成するファイルを直接バックアップできること。これにより、サーバ負荷を大幅に軽減することが可能だ。しかも、仮想マシンなどの大雑把な単位で終わることのない、行き届いたリストア機能が提供されている。

例えば、バックアップ・データからファイルやフォルダを個別に復旧することも可能だ。この作業は、Windowsのエクスプローラと同様の画面から簡単に行えるため、エンドユーザーが自分でデータを戻すことができる。また、仮想マシン内で実行されているSQL ServerやExchange Serverもエージェントレスでありながら、データベース単位で復旧することが可能だ。さらには、物理サーバのバックアップ・データを仮想マシンにリストアしたり、仮想マシンのバックアップ・データを物理サーバに直接リストアしたりする機能も用意されている。有事の際に、ニーズと状況を鑑みて最も簡単な方法でデータを戻せる仕組みが揃えられている。

CA ARCserve D2Dのファイルリストアの方法。エンドユーザーでも、Windows エクスプローラのような画面を使って、バックアップ・データから自由にファイルを戻せる。

製品選定の決め手となったもう1つの要件は、システム全体のバックアップを簡単に管理できる点。新システムでは、ARCserveユーザー向けに無償提供されているバックアップ管理ツールを使用して、Webベースのコンソール画面上から保護対象となるすべての仮想マシンやアプリケーション・データのバックアップを一元的に管理することができるようになっている。

例えば、コンソール画面上には、対象サーバやジョブ内容、成功失敗の状況などがわかりやすく一覧表示される。一部の仮想マシンのバックアップが失敗した場合、それがアラート通知されるうえ、該当箇所を選択してバックアップ・ボタンをクリックするだけで、個別のバックアップが再実行できる。また、バックアップ処理を実行する前の段階で、「プレフライトチェック」と呼ばれる機能により、バックアップ運用に必要な初期設定がなされていないサーバとそれぞれに必要な設定を自動で見つけ出すことができる。

この管理ツールのメリットについて、日本CAの千葉氏は、「例えば100台の仮想/物理サーバのうち1台だけバックアップが失敗した場合でも、管理担当者にメールでアラートが通知され、画面の中だけの操作で、システム全体のバックアップの管理を完結できます。管理担当者は、サーバごとにバックアップの成否をチェックするといった煩雑な作業が必要ないため、作業負荷を感じることなく安心して業務を行うことが可能。派手な機能ではありませんが、現場の運用を考えると非常に重要な機能です」と強調する。

プレフライトチェックの画面。実行前にバックアップ成否の可能性を判定する。クリックすれば設定内容の詳細も確認できる

物理サーバ数で課金! 仮想環境の俊敏性を損なわないラインセンス体系

同区役所では、安価でわかりやすいライセンス価格体系もこれらのバックアップ製品を採用した理由の1つに挙げている。

今回の案件で導入されたのは「CA ARCserve D2D Advanced Virtual Edition per Host License」というライセンス。こちらは、仮想ホストの台数単位で課金される体系になっている。仮想ホスト上に仮想マシンを何台立ち上げても価格は同じだ。

CA ARCserve D2D Advanced Virtual Edition per Host Licenseでは、仮想マシン数に関係なく、物理マシン数に応じて課金される体系になっている

迅速にサーバを立ち上げられる点が大きな利点の仮想化技術だが、そこで利用されるソフトウェアのライセンスが足を引っ張り、俊敏性を失うというケースは少なくない。そうした問題を解消するうえ、将来の導入コスト増も憂慮する必要のないCA ARCserve D2Dは、今回の事例でも導入を決定づける大きなポイントになったようだ。

「担当者の方は技術に明るく、競合製品との比較をしっかりと行う方でした。導入に際しては、単に現状の課題を解決できるという点だけでなく、運用効率やライセンスなども考慮に入れ、総合的に判断を下したと聞いています。検討時には当社のハンズオン・セミナーにも参加し、実際に製品に触れたうえで採用を決めていただきました。そのような方に選ばれるというのは非常に光栄ですし、今後はこれまで以上に自信を持ってユーザーさんに薦められますね」(千葉氏)

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