1日に、AptiQuantというカナダの会社がブラウザ選びとユーザーのIQ(知能指数)の関係を調べたレポートを公開したことをお伝えした。Internet Explorer (IE)が下位に並んだ結果を、同社は「Internet Explorerは愚かもの向け? 新調査がその事実を暗示」と伝えており、CNNやBBC、Telegraph、Huffington Postなど、欧米の主要メディアが取り上げたことで大きな話題になった。ところが、この報告およびAptiQuantという会社が巧妙な捏造であったことが明らかになった。AtCheap.comという価格比較サイトが機能を追加する際にIEのWeb標準サポートの乏しさが問題になり、そこで偽レポートの公開を思いついたという。「IE6の非互換性と、それがイノベーションを後退させていることへの関心を高めるのが狙いだった」としている。

AptiQuantはWebサイトで事業内容、過去のプレスリリース、連絡先などを公開し、調査の概要資料も提供していた。さらにレポートを公開した後に「熱心なInternet Explorerユーザーから訴訟を視野に入れた抗議を受けた」というプレスリリースを公開し、CEOのコメントと共に「科学的なデータとログが存在する」と主張する手の込みようだった。

ところが、フランスのリサーチ会社Central TestがWebサイトのコンテンツをAptiQuantに盗用されていると指摘したことから状況が一変。AptiQuantの信憑性に疑いの目が向けられ始めた。ドメイン情報を調べると登録が2011年7月14日と新しい。英国時間の3日にBBCがAptiQuant自体が捏造である可能性が高いと報道。その後、問い合わせに対するAptiQuantからの返答はなく、さらにTwitterアカウントにアクセスできなくなるなど、AptiQuantが逃げ出したような状態がしばらく続き、米国時間の3日にWebサイトでAptiQuantがでっち上げを認めた。

AptiQuantを捏造したグループは「5分とかからずにばれるはずのでっち上げだ」と主張している。だが、報告の中でデータを比較する際に「前回の調査結果は公開していない」と説明するなど、本物に見せかけるための念入りな捏造はエイプリルフールのジョークとは趣が異なる。ブラウザの互換性改善を訴える"パフォーマンスアート"とも受け取りにくい。AtCheap.comという価格比較サイトが背後にあるのならば、騒動を起こした主目的がWeb標準サポートの向上ではなく、宣伝である可能性も高い。