ジェネラルセッション後に一部報道関係者を集めて開催されたBenioff氏の記者会見では、こうした"クラウド"の定義に関する質問が相次いだ。Benioff氏はその定義について「ターゲットの違いにある」と説明している。「すべてのユーザーが何百万ドル(何億円)もの投資を行ってサーバを必要としているわけではない。適時効率的にリソースを活用して使おうと考えるユーザーもいるだろう。それがわれわれの提供するサービスの"マルチテナント"の考え方だ。またOracleがソフトウェア企業であり、Sunの買収でソフトウェアとハードウェアの両方のノウハウを提供するようになったように、われわれはハードウェア+ソフトウェア+人的リソースという3つを完成したソリューションとしてまとめてサービス販売している。これがわれわれのいう"クラウド"だ」と同氏は述べる。
Salesforce.comのサービスについてセキュリティや自由度(Elastic)のなさの部分についてEllison氏が酷評のコメントを出しているが、セキュリティについては前述の運用ノウハウでカバーされるものであり、現時点で問題は起きていないことをBenioff氏は指摘する。もしそれでもデータの位置関係にこだわるのであれば、改めてExalogicのようなプライベートクラウドのソリューションを検討すればいいのではないかというのが回答だ。Salesforce.comについて、Ellison氏は「決められたツールや実行環境でAmazon EC2のような自由度がない」とコメントしているが、これについてBenioff氏は先日のVMforceの例を挙げ、従来のApexだけでなくJavaプログラマにも門戸を開いており、今後はRubyなどを含むさまざまな言語やフレームワークの開発環境を用意していく意向であると表明している。これをForce.com上に実装していくことで、プラットフォームとしての魅力を高めていくのが狙いだ。
またプライベートクラウドと関連して、業務データが国外のデータセンターに位置することを問題視するユーザーの要望が多いことを受け、従来のワールドワイド向けデータセンターに加え、新たに日本の東京に新規データセンターをオープンする予定だと表明した。この発表は数週間以内としているが、おそらく10月5~6日に東京都内で開催予定のCloudforce 2010 Japanで正式発表するものとみられる。また東京に次いでロンドンでもデータセンターのオープン計画があると表明しており、適時ニーズに応じて拡大していく意向だという。技術的制約が理由ではなく、あくまでデータを手近に置きたいというニーズを反映したものだ。
この後、予定通り22日夕方にスタートしたEllison氏のキーノートだが、当初予定されていた「Fusion Applications」の詳細解説に到達する前に、OOWにおけるイベントのまとめの部分でExalogicに関するアピールを再度行い、その中でたびたび「"クラウド"の定義」について触れつつ、「Salesforce.com」「Marc Benioff」といったキーワードを何度も連呼するなど、キーノートの予定時間の大部分をSalesforce.comの攻撃に費やす状態となった。
「Marcは箱の中で"クラウド"は動作しないと言ったが、そんな彼らは何千台ものDellサーバを使って"クラウド"を運用してるじゃないか。ならばわれわれのExalogicを使ってサーバ統合を行ったほうが効率がいいんじゃないか?」「異なる顧客の重要なデータを共通のDBで運用するなんて恐ろしいアイデアだ」「Elasticではない"クラウド"で運用されたサービスで生じた損失は誰が保証するのか?」といった具合でかなりヒートアップし、Exalogicのパフォーマンスや堅牢性、メンテナンスの容易さについてEllison氏は再度強くアピールしている。
Ellison氏の講演は予定時間を1時間近くオーバーしても終了しなかったが、筆者は別件のアポイントがあったため今回はFusion Applicationsの解説以降のキーノートの内容はカバーできなかった。Fusion Applicationsの詳細については追ってレポートしていきたいと思う。