ビリオネアとして知られるEllison氏の趣味がヨットレースであることは有名だ。同氏はヨットレースにかなり入れ込んでおり、2002年に開催されたOOWでは、会場であるサンフランシスコにEllison氏の姿はなく、何千マイルも離れたニュージーランドはオークランド(Auckland)からの衛星中継でメッセージを流すというスタイルになった。これもヨットレース参加のためだ。それから考えれば、開催期間中に2回、しかも個々のキーノートが予定時間を1時間以上オーバーするような情熱を持って製品や技術のアピールに励む今年のOOWは、これまでにないものとなった。参加者数で4万人以上、コンベンションセンターだけでは人を収容できず、周辺のホテルをすべて押さえてのイベントは街のハイジャックにも近いものがある。それだけOracleは巨大化したのだ。
今回のEllison氏の2つのキーノートが始まる前、どちらも会場には今年のアメリカン杯でのヨットレースの様子を撮影したビデオ映像が流れてくる。Ellison氏は会場の最前列でその様子をしみじみと眺めつつ、「この映像だけは何度見ても飽きない」と聴衆に喜びを語っている。また優勝したBMW Oracle Racingチームのメンバーを必ず会場に招待し、毎回その功績を称えるコメントを出している。大きくなったOracleに自身がバックアップするヨットチームの優勝と、喜びもひとしおなのだろう。
そんな同氏は今年のOOWでの発表の数々を振り返りつつ、「現在集まっているのはOracle史上最高のメンバーと布陣だ」と人的リソースの強化を強調している。1人がHP CEOの職を辞してOracleプレジデントとしてナンバー2の地位に就いたMark Hurd氏であることは想像に難くないが、同氏はこのほかにクラウドサービス担当としてJoanne Olsen氏、サポート担当としてChuck Rozwat氏がOracleに参加したことを報告している。中でも特にRozwat氏について多くを述べており、Oracleを辞めて1年間同社を離れていた同氏が再びOracleに戻ったことについて感慨深げなコメントを残している。ドライな経営者のようでいて、実はものすごく人情に厚いのではないかと感じる瞬間だ。