FreeBSD - The Power To Serve

Report from EuroBSDCon 2009において、英国ケンブリッジで開催されたEuroBSDCon 2009の内容が報告されている。*BSDの業界での採用事例、現在カッティングエッジで開発されている技術の紹介なとがある。報告されている内容は次のとおり。

How FreeBSD Finds Oil

石油・ガス企業にクラスタコンピューティングシステムを提供するコンサルティング企業におけるFreeBSDの採用事例。この手の業界ではソフトウェアライセンス料は事業全体からみるとそれほど大きな割合を占めないため関心度は低い。むしろ石油探索事業にあたりテラバイトクラスのデータを処理するための性能や安定性が重量。

FreeBSD in a complex environment

FreeBSD、Linux、Windows、Solarisなどの混在環境における運用事例紹介。FreeBSDの安定したAPIサポートを高く評価。10年以上FreeBSDでプリンティングシステムを運用しており、その間ほとんど変更が必要なかった点を評価。一方、商用サポートには難がある。Linux向けのアプリケーションを販売している企業が*BSD版も販売できるようなメカニズムを構築すべきではないかという提案あり。

ISC and BSD

どのようにFreeBSDで高可動性を実現したF root DNSサーバを運用しているかという事例紹介。そういった運用を可能にするためのFreeBSDの機能紹介や、DHCPv4でIPv6をサポートするための新機能についても言及。ISC (Internet Systems Consortium)はBIND DNSサーバやDHCPの開発、OSSプロジェクトへのホスティングサービスの提供などを実施している非営利法人。

Superpage support in FreeBSD

Alan Cox氏らが2002年に発表した論文およびその成果物をFreeBSDにマージした話の紹介。仮想アドレスと物理アドレスを変換するためのTLB (Translation Lookaside Buffer)は、典型的には4KBのページに対するエントリを1024個分保持できるため、4MB分のメモリを変換できる。これは現在のメモリ容量に追いついていない。Superpageは4KB以上のページ(4MB、2MB)も使えるようにするための仕組み。FreeBSDにマージされたSuperpageは典型的な負荷試験において15%から600%の性能改善を実現したと報告。

pfsense; Embedded FreeBSD for industrial applications

FreeBSDで開発されたファイアウォールおよびルータディストリビューションpfsenseの紹介。次期メジャーバージョンとなるpfsenseの新機能の紹介や、新しいUIの紹介など。

Embedded FreeBSD for industrial applications: a case study

過酷な工業環境で活用することを目的として開発した組み込みGPSナビゲーションシステムおよびトラッキングデバイスの事例紹介。FreeBSDをAtmel AT91RM9200 CPUに移植することで実現。

Evil on the Internet

インターネットにおけるフィッシング詐欺などの詐欺行為に関する発表。

mfsBSD

メモリファイルシステムベースのFreeBSDディストリビューションを作成するためのツールセットmfsBSDの紹介。ISPホスティング環境で使われているLinuxを置き換える目的で開発されたものの、現在ではパーティションレスキューやUSBブートFreeBSDインストールなどほかの目的でも採用。

FreeBSD's participation in the 2009 Google Summer of Code

FreeBSDは2009 Google Summer of Codeに20エントリ。うち17が成功を収めた。それらプロジェクトの取り組みと成果物の発表。

BSD licensed PGP

gnuPGと互換性があるように開発されたBSDライセンス版の実装netPGPに関する発表。

PC-BSD - Making FreeBSD on the Desktop a mainstream reality

FreeBSDをベースに開発されているデスクトップ向けOS。簡単なインストールとアップグレード/ダウングレードの問題を解決したパッケージングシステムPBIの紹介。PBIではアプリケーションが要求する共有ライブラリをそのアプリケーションディレクトリに収めることで依存関係を減らし、アップグレード/ダウングレード時に発生しやすい問題を軽減している。

state of BSD

NetBSD、OpenBSD、FreeBSDからそれぞれの開発の現状や今後のプランを紹介。

WIPs

大小さまざまな規模の現在進行中の作業について発表するセッション。いくつも発表があるが、なかでもFreeBSD ZFSに関する発表が紹介されている。カンファレンスではZFSに関する言及も多く、関心の高さが伺えた。EuroBSDCon 2009のスケジュールと発表された資料、論文、発表時の音声データはConference Scheduleからダウンロードできる。