8月も半ばを過ぎ、"だらけムード"が許される期間もあとわずかとなった。無気力な自分を愛していられるのも、もはやここまで。過去数週間を振り返り、目立った成果や成長の跡が見らない自分に言い知れぬ焦燥感を覚えるという、凡人にとって嫌な時期がやってきてしまった。

"後悔の夏"にしないためには、1つでも何かを習得しておきたいところ。できれば、他人が持っておらず、自分の武器になるスキルが望ましい。さらに言えば、それがみんなを幸せにするような技術であると、喜ばしいことこの上ない。

そんなITエンジニアのいやらしい想いに応えるべく、本稿では、あるテーマで選んでもらった識者のオススメ書籍を紹介する。そのテーマとは「品質向上」。だれもが重要であることは認識しているものの、そのためのスキルや考え方を確立している人は非常に少ない分野。ここをおさえておけば、プロジェクトの炎上を密かに防いだ陰のヒーローとして自己満足に浸ることもできる。夏の課題には持って来いのテーマだ。

なお、書籍の推薦はSPEIの岡大勝氏にお願いした。岡氏は、IT各誌に執筆経験を持つエンジニア。現役のITアーキテクトとして活躍しており、多くのプロジェクトを成功に導いた実績を持つ。

推薦者紹介

岡大勝(OKA HIROMASA)
- ソフトウェアプロセスエンジニアリング(SPEI) 代表取締役 主任ITアーキテクト


日本DEC、日本HP、日本ラショナルソフトウェアを経てSPEIを設立。アプリケーションからインフラ、そして要求からテストまで、プロセスとプロダクトの両方の軸でベストソリューションを提供すべく活動中。近年は、ユーザーにとっての理想のアーキテクチャを模索しながら、ITアーキテクトとして各種プロジェクトに参画している。

岡氏は、今回の書籍紹介を引き受けるに当たり、「一口に品質向上と言っても、立場が変わればやれることも変わる。しかも、さまざまな方面から取り組むことができるので、一概にコレと挙げるのは難しい」という断りを入れたうえで、「きれいに整理することはできないが、各ジャンルの書籍をランダムに紹介していくことなら可能」と言い添え、7冊の書籍を挙げてくれた。

以下、順に紹介していくので、自分にあった教材を見つけ、ITエンジニア/ユーザーとして一皮剥けていただけると幸いである。

ソフトウェア品質知識体系ガイド ― SQuBOK Guide

「ITシステムを開発する際には、まずどのレベルのシステムを目指すのかを決める必要がある。80点でOKなのか、それとも99点でも許されないのか、このあたりはテストの基準や評価方法にも影響する重要な部分。それを固める際に参考になるのがこの1冊」

岡氏がこのように話しながら紹介したのが、『ソフトウェア品質知識体系ガイド―SQuBOK Guide』である。

同書は、ISOやIEEEなどの品質に関わる規格や各種ノウハウを体系化し、そのエッセンスをまとめた書籍。熟読するというよりも、「手元に置いておきリファレンスとして活用すると良い」(岡氏)という。

SIerを統括するシステムオーナーや、上流工程に携わるアーキテクト/プロジェクトマネジャーにオススメの1冊。夏の間に一読して机上に常備しておくことで、システムを見る新しい目を養えるだろう。

ソフトウェアテスト実践ワークブック

上記『ソフトウェア品質知識体系ガイド―SQuBOK Guide』は、品質確保のための理論を学ぶための書籍。その理論を基に作り上げた品質目標を達成するうえで必要な知識を解説したのが『ソフトウェアテスト実践ワークブック』である。

同書は、その名前からもわかるとおり、ソフトウェアテストを実践するための方法を解説した書籍だ。テストをどのように実施すればよいのか――どのような考え方でどのような計画を立て、どのようにテストケースを書いて、それをどう実行すればよいのかが明記されているという。

「SQuBOK Guideでは、こういう理由でこれをやるという部分が学べるが、ソフトウェアテスト実践ワークブックでは"テストを効率的に進めるにはこうやるべき"というのがテストフェーズごとに説明されている。用語の解説もあるので初級者も読みやすいはず。読んで損することはない書籍なので、一通り目を通すことをお勧めする」(岡氏)

ソフトウェアテスト技法 ― 自動化、品質保証、そしてバグの未然防止のために

どんなテストをどの程度実施すれば目標の品質を確保できるのか。未検知のバグに日々怯えているエンジニアにとって、これは喉から手が出るほど知りたい指標だろう。それを解説してくれるのが『ソフトウェアテスト技法―自動化、品質保証、そしてバグの未然防止のために』である。

同書では、筆者らの経験/調査を基に、各種テストの効果について統計学的に解説。さまざまな計算式を使い、論理立てて説明している。

「品質についてはRFPでざっくり触れる程度で終わるケースが多いが、この本を読めばそれをもっと細かく定義できるようになる。ユーザー企業とSIerの双方で有効。特にユーザー企業に説明する立場にある人は、品質保証の根拠としてプレゼンテーションなどで活用できる」(岡氏)

なお、内容については「盛りだくさん」(岡氏)。なので、「必要なときに必要な部分を読むという使い方が良いかもしれない」(岡氏)そうだ。