記事検索サービス「キジサク」を有料提供

記事検索サービス「キジサク」のトップ画像(イメージ)。4月1日からスタート予定

朝日新聞社、時事通信社、日刊工業新聞社は4月1日より、3社の記事をオンラインで検索・閲覧できる有料サービス「キジサク」を提供する。3社合同の記者会見が6日、都内の時事通信社で開かれ、明らかとなった。ビジネス利用をターゲットとし、企業や個人事業者に利用を呼びかける。契約した企業は、自社の新製品などのリリース情報をキジサクのトップページで紹介できるといったメリットもあり、地方の中小企業が広く情報発信する場としても役立ちそうだ。

サービス利用によって、「週刊朝日」「AERA」といった媒体も含め、3社合計850万本以上にわたる記事(最も過去までさかのぼれるアーカイブは朝日新聞の1984年8月~)を読むことができる。今年6月からはダイヤモンド社「週刊ダイヤモンド」、東洋経済新報社「週刊東洋経済」「会社四季報」なども参加。ゆくゆくは帝国データバンクの「企業概要」などもコンテンツとして加わる見通しとなっている。

類似のサービスでは基本料金を支払う上に、検索した記事ごとに料金が発生するものもあるが、キジサクは月額6,300円(税込)を支払うことで、月に約100記事を閲覧できる。「約」とつくのは検索した回数などで閲覧可能記事数が前後するためで、サービス範囲内を超えると検索ごとの従量課金に。また、月額15,750円(税込)のコースを選ぶと、約400記事が閲覧可能となる。

ニュース記事の検索はもちろん、別料金となるオプションとして、朝日新聞社のデータベースを利用した人物検索、時事通信社によるアジアビジネス情報や官公庁情報なども備える。ウェブ上で手軽に、専門的な情報を得られるサービスとなるだろう。

この日の会見では、朝日新聞社デジタルメディア本部の田仲拓二本部長が「互いのメリットを生かし、業界内の競争力を高める一歩となる」と力強く宣言。時事通信社の栢森哲也社長室長は「アジアの現地情報などニッチな情報提供で力を発揮できる」、日刊工業新聞社の井水治博業務局長は「様々な企業を取材する我が社の力を生かせる」と、3社のストロングポイントを組み合わせたデータベースであることを強調した。

キジサクは、ネット上にあふれる情報からビジネスチャンスを瞬時に見出すため、精度の高い検索サービスを提供することをモットーとする。ビジネス向けを標ぼうするとおり、キーワードを入力するだけでなく、「食品」「自動車」など業種ごとに絞り込んでの検索も可能だ。

グーグル、ヤフー検索との差別化は「信頼できるソース」

昨今、情報のネット検索といえばグーグルを筆頭とする検索エンジンや、ヤフーなどポータルサイトがすぐさま思いつく。これら無料サービスと、どのように渡り合っていくのか―。このような疑問にも、3社はすでに自信を深めている。

「通常の検索では情報の真偽についてさらに確認しなければならない。きちんとしたソースをネットユーザーに提供し、コンテンツの価値を示したい」。加えて、ネット上に存在する膨大な情報は、大半がいつの日か消えてしまう。一方、キジサクで検索した記事を「クリップ」しておけば、最大100本まで無期限保存・再読できることも大きなメリットとなるだろう。

速報性、クチコミによる情報の広がりがネットの特徴だが、一方ではニュースソースが曖昧になったり、内容が誇張・改ざんされていることも珍しくない。メディアが自社コンテンツを有料でオンライン提供するという試みは、メディアリテラシーの観点からも関心を集めそうだ。

メディア側から一方的に情報を受けるのではなく、契約したユーザー側からも情報を発信できるのも大きな特徴となる。フォーマットに自社の商品情報や連絡先などを入力。キジサク運営側のチェックを通過すれば、キジサクのトップページ上に、その日の最新ニュースと共にリリースの見出しがアップされる。契約企業にとっては、新たな販路を拡大するチャンスだろう。

今後の展望として、3年後には同サービスによる売り上げ5億円、契約5000社を目標とする。会見中には「リッチなデータベースを目指す」といった言葉も飛び出した。ユーザーへの訴求力を高めるには、なによりコンテンツの充実が不可欠。情報の最前線に立つメディア3社の共闘に注目だ。

写真左から、時事通信社社長室長 栢森哲也氏、朝日新聞社デジタルメディア本部長 田仲拓二氏、日刊工業新聞社取締役業務局長 井水治博氏