- 行政書士の年収はどのくらいなの?
- 行政書士の仕事ってどんな内容なの?
- 行政書士は将来安泰の職業なの?
難関資格に数えられる行政書士ですが、どんな仕事をして、どれだけ稼いでいるかを把握している方は数少ないでしょう。
そのため、「行政書士の資格を取得すれば、将来安泰でしょ?」と安易な気持ちで行政書士を目指す方も中にはいます。
今回は、行政書士の勤務体制や年収、将来性まで基本となる要素を詳しく解説していくので、ぜひ参考にしてください。
行政書士の通信講座に関しては以下の記事もご覧ください。
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→行政書士の年収はどのくらい?稼げる業務内容や仕事の将来性について解説!の記事はこちら
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行政書士の年収はどのくらい?
行政書士の平均年収は300~500万円とされています。
日本人の平均年収が436万円(※1)であるため、格段条件がよいわけではありません。
なぜ多くの社会人が資格取得を目指すのかと言えば、働き方次第で年収1,000万円以上も夢ではないためです。
この章では、行政書士の一般的な働き方を3つ紹介し、それぞれの年収について解説します。
働き方1つで、どれだけ年収に差がつくのかを理解しておきましょう。
(※1)日本人の平均年収については国税庁の令和元年「民間給与実態統計調査」を参考にしています
勤務行政書士の場合
勤務行政書士の年収は、200~600万円とされています。
勤務行政書士とは、行政書士の資格を取得したのち、行政書士事務所や一般企業に雇われる形で働く方のことです。
時に「雇われ行政書士」や「使用人行政書士」と揶揄されることもありますが、行政書士業務を任される点では、他の行政書士と変わりません。
年収の下限と上限で開きがありますが、勤め始めは200~300万円が相場で、スキルや経験を積む過程で500~600万円に増額するイメージです。
一見すると、安定志向の方に人気があるように思えますが、行政書士という肩書きを有効活用できないことや自分の事務所を持ちたいといった理由から、勤務行政書士を選択する方は(※2)全体の1%ほどとなっています。
(※2)行政書士会員の動き(令和3年「月刊日本行政12月号」参照)
兼業行政書士の場合
兼業行政書士の年収は、どんな仕事と両立するかで異なりますが、800万円程度と言われています。
兼業行政書士とは、行政書士以外の仕事も両立して行う人々のことです。
そもそも行政書士は副業が認められているため、スーパーのレジ打ちや新聞配達を兼業としても何の問題もありません。
なぜ、平均年収300~500万円の行政書士に副業が必要なのかというと、行政書士事務所を開業したばかりの時期は年収がほぼ0円になるためです。
そのため、事務所の経営が安定するまでの間、他士業やアルバイトで生活費を稼ぐ必要があります。
実際、行政書士以外に他士業やアルバイトをしている方の割合は、(※3)全体の47.0%とほぼ半数です。
(※3)職業属性(平成30年「月刊日本行政10月号」参照)
ちなみに行政書士の相手として人気なのが、税理士資格です。
税理士は税務関係のスペシャリストで、行政書士との相性が抜群なため、ダブルライセンスで働く方が目立ちます。
また、税理士に合格した方は無試験で行政書士の登録ができることも人気の理由でしょう。
開業行政書士の場合
開業行政書士は、自ら行政書士事務所を開業させた方のことで、有資格者の目標となる場所です。
平均年収は1,000万円を超え、2,000~3,000万円稼ぐ方も珍しくありません。
ここまで聞くと「資格を取得したらすぐ開業すればいいのでは?」と思うかもしれませんが、自らの事務所を開業させるにはメリットとデメリットがあります。
- 安定した経営スタンスが出来上がれば、年収1,000万円以上が可能
- 他士業や他職業との人脈が作れる
- 自由が利く反面、全ての業務を自らの責任で実行する必要がある
- 事務所の経営が軌道に乗るまでは、年収100万円に満たない場合もある
- 仕事や人脈を確保するためには、自らの営業力が鍵になる
自分の行政書士事務所を開業するには、綿密な計画と仕事や人脈を確保する行動力が必要です。
行政書士の業務単価
行政書士の年収は、どんな仕事を請け負うかで大きく変わります。
これは、アルバイトやパートの時給が仕事によって異なるように、行政書士の仕事も業務単価と呼ばれる報酬額が定められているためです。
本来、行政書士は自分の仕事に関する報酬額を自由に決められますが、現状は業務内容によって業務単価がある程度決まっています。
では、業務単価の高額な仕事とはどんな種類があるのでしょうか。
ここでは、業務単価の高額な仕事を紹介します。
業務名 | 業務単価(報酬額) | 仕事内容 |
帰化許可申請 | 200,000~300,000円 |
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産業廃棄物業許可申請 | 100,000~500,000円 |
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NPO法人設立認証 | 200,000円 |
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風俗営業許可申請 | 100,000~300,000円 |
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医療法人設立許可申請 | 500,000円 |
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介護保険施設開設許可申請 | 500,000円 |
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旅館業許可申請 | 150,000円 |
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行政書士の年収に関するデータ
この章では行政書士の年収に関するさまざまなデータをご紹介します。
「行政書士の年収に性別は関係あるの?」
「都市部と地方で年収に差はあるの?」
そんな疑問を抱いている方は、ぜひチェックして下さい。
データ1:男女別年収データ
行政書士と聞くと、男性の職業というイメージが先行していますが、女性行政書士の割合は(※4)全体の15%です。(2020年当時、行政書士49,402名のうち7,238名が女性)
では、男女によって年収に差は生じるのでしょうか。
結論として、性別で年収に大きな開きが生じることはありません。
年収に関する調査を実施していないため、正確なデータは存在しませんが、仕事に専念する環境があれば年収300~500万円は可能です。
しかし、産休や子育てが重なった場合は、年収が100万円以下になってしまうことも珍しくありません。
(※4)女性行政書士の人数推移
年度 | 行政書士人数 | 女性行政書士 | 女性割合 |
2022年4月末日 | 50,472名 | 7,684名 | 15.22% |
2023年4月末日 | 51,312名 | 8,031名 | 15.65% |
データ2:都道府県別年収データ
行政書士の資格取得後に、都市部に籍を置くか、地方に籍を置くかは個人の自由です。
一般的な考え方からすると、国民や企業など民間から仕事を委託される行政書士にとって、人口や企業の数が際立つ都市部で仕事をするのが合理的と言えます。
しかし、都市部に籍を持つ行政書士の数は群を抜いており、仕事を勝ち取ることが容易ではありません。
そのため、地方で働くことを選択し、必要とされる仕事を専門に扱う方も増加しているようです。
では、都市部と地方で働く方の年収差はどの程度なのでしょうか。
今回は都道府県別の平均年収を表にまとめてみました。
都道府県名 | 平均年収 |
北海道 | 540万円 |
青森 | 510万円 |
岩手 | 558万円 |
宮城 | 600万円 |
秋田 | 492万円 |
山形 | 552万円 |
福島 | 540万円 |
茨城 | 600万円 |
栃木 | 600万円 |
群馬 | 600万円 |
埼玉 | 540万円 |
千葉 | 600万円 |
東京 | 840万円 |
神奈川 | 660万円 |
新潟 | 540万円 |
富山 | 540万円 |
石川 | 600万円 |
福井 | 600万円 |
山梨 | 540万円 |
長野 | 600万円 |
岐阜 | 540万円 |
静岡 | 600万円 |
愛知 | 660万円 |
三重 | 600万円 |
滋賀 | 600万円 |
京都 | 600万円 |
大阪 | 720万円 |
兵庫 | 600万円 |
奈良 | 600万円 |
和歌山 | 540万円 |
鳥取 | 540万円 |
島根 | 540万円 |
岡山 | 600万円 |
広島 | 600万円 |
山口 | 600万円 |
徳島 | 600万円 |
香川 | 540万円 |
愛媛 | 540万円 |
高知 | 540万円 |
福岡 | 600万円 |
佐賀 | 480万円 |
長崎 | 540万円 |
熊本 | 540万円 |
大分 | 540万円 |
宮崎 | 480万円 |
鹿児島 | 540万円 |
沖縄 | 480万円 |
都道府県別で年収を比較すると、東京の840万円を始め、大阪の720万円、愛知・神奈川の660万円と、都市部と呼ばれる地域の年収が高水準です。
最も低水準である沖縄県と比較すると、年収差は360万円にもなります。
やはり、行政書士として稼ぎたい気持ちのある方は、都市部で競争に勝つ気合が必要不可欠と言えるでしょう。
データ3:年齢別年収データ
一般的な企業に勤務している場合、年齢が重なるのに連れて、年収は高くなる傾向にあります。
これは、経験を積むことによって重要な仕事を任されるようになるためですが、行政書士の世界にも当てはまることです。
それでは、年齢が重なるのに連れてどのくらい年収が変化するのか確認してみましょう。
年齢 | 人数 | 割合 | 平均年収 |
20~30歳 | 33人 | 0.8% | 380万円 |
31~40歳 | 347人 | 8.0% | 490万円 |
41~50歳 | 752人 | 17.3% | 630万円 |
51~60歳 | 776人 | 17.9% | 700万円 |
61~70歳 | 1,543人 | 35.6% | 460万円 |
71歳以上 | 864人 | 19.9% | 400万円 |
未回答 | 23人 | 0.5% | ー |
高齢化が進む行政書士界では、61~70歳の人数割合が群を抜いています。(2018年当時のデータ)
年収に目を向けると、51~60歳の平均年収が700万円と一番高く、その点は一般企業と同じです。
ちなみに行政書士の生涯年収は3~5億円とされ、30歳から65歳まで開業行政書士として勤務した方の生涯年収は3億2,000万円とされています。
行政書士として年収を上げる方法
行政書士という同じ資格を所持し、同じように個人事務所を開業したにもかかわらず、人によって1,000万円を超える年収差が生じるのはなぜでしょう。
それは、稼げる方しか実践していないポイントが3つあるからです。
- 公式ホームページで集客
- 人脈を広げる
- 得意分野を作る
以下では、それぞれ1つずつ解説します。
方法1:公式ホームページで集客
年収を増やすために最も効果的な方法は、顧客を数多く集めることです。
そこで、強力な武器となるのが事務所の公式ホームページで、インターネット社会では必要不可欠と言えます。
かつては、チラシをポストに投函したり、駅前でチラシを配ったりで顧客を集めていましたが、今の時代はパソコンで行政書士事務所を調べる方が大半で、チラシはあまり効果がありません。
それでは、どんなホームページを作成すれば顧客が集まるのでしょうか。
実は事務所のホームページを作成するにあたって、押さえておきたい3つのポイントがあります。
- 顔写真を載せて、相談しやすさをアピールする
- 業務内容・業務単価をわかりやすく掲載する
- 他の行政書士事務所との違いを明確にする
上記のポイントは最低限ホームページに盛り込んでおきましょう。
ホームページを自作するのが困難な方は、5~10万円程度で外注可能です。
方法2:人脈を広げる
行政書士の仕事は多岐にわたるため、どこに仕事が転がっているかはわかりません。
そのため、同業者はもちろん、他士業の先生方とコネクションを作っておくことをおすすめします。
特に、行政書士と相性がよい司法書士や税理士の先生方とのつながりは大切です。
例えば、税理士の方は顧問の会社をコンサルティングしているケースが目立ち、その仕事を行政書士に依頼するパターンがあります。
日頃から人脈を広げておくことで、思ってもいない好条件の依頼が舞い込み、収入アップにつながる可能性があるでしょう。
方法3:得意分野を作る
個人事務所は少人数による経営が基本になるため、顧客にできる人数に限界があります。
そのため、顧客の悩みを何でも解決できる事務所は一握りです。
では、個人事務所はどのような努力をして、安定した収入を得ているのでしょう。
ずばり、小規模にもかかわらず、確実な収入を得ている事務所は、ある1つの分野を特化させている可能性が濃厚です。
「〇〇の相談ならここにしよう」と顧客の頭に植え付け、常客になってもらえれば、収入は安定します。
行政書士と他資格の年収比較
難関資格と呼ばれる資格は行政書士以外にも多々ありますが、年収で考えるとどのくらいの差があるのでしょうか。
この章では、司法書士・社会保険労務士・税理士・中小企業診断士・弁護士の5つと年収を比較してみます。
比較1:司法書士
司法書士の平均年収は451万円で、行政書士の平均年収である300~500万円と大きな開きはありません。
司法書士 | 行政書士 | |
平均年収 | 451万円 | 300~500万円 |
勤務型の年収 | 約400万円 | 200~600万円 |
開業型の年収 | 500~1,000万円 | 約800万円 |
比較2:社会保険労務士
社会保険労務士の平均年収は774万円とされ、行政書士の平均年収300~500万円と比較して、高水準です。
社会保険労務士 | 行政書士 | |
平均年収 | 774万円 | 300~500万円 |
勤務型の年収 | 400~500万円 | 200~600万円 |
開業型の年収 | 1,000万円以上 | 約800万円 |
比較3:税理士
税理士の平均年収は892万円とされ、行政書士の平均年収300~500万円と比較して、高水準です。
税理士 | 行政書士 | |
平均年収 | 892万円 | 300~500万円 |
勤務型の年収 | 500~600万円 | 200~600万円 |
開業型の年収 | 2,500~3,000万円 | 約800万円 |
比較4:中小企業診断士
中小企業診断士の平均年収は780万円とされ、行政書士の平均年収300~500万円と比較して、高水準です。
中小企業診断士 | 行政書士 | |
平均年収 | 780万円 | 300~500万円 |
勤務型の年収 | 500万円 | 200~600万円 |
開業型の年収 | 3,000万円 | 約800万円 |
比較5:弁護士
弁護士の平均年収は1,200万円とされ、行政書士の平均年収300~500万円を大幅に上回る数値になっています。
弁護士 | 行政書士 | |
平均年収 | 1,200万円 | 300~500万円 |
勤務型の年収 | 500~3,000万円 | 200~600万円 |
開業型の年収 | 1,000~3,000万円 | 約800万円 |
行政書士の将来性
行政書士の受験を検討するにあたり「現在の仕事を辞めてまで目指す価値が行政書士にあるのか」と悩む方も大勢います。
近年、SNS上では「行政書士はやめておけ」「行政書士は食べていけない」といった、資格取得に否定的な意見が増加しており、不安を覚える方も少なくありません。
しかし、結論から言えば行政書士の仕事がなくなることはありませんし、安定した収入も得られて安泰です。
この章では、行政書士の将来性を働き方改革の観点から解説します。
AIの導入と活用が必須になる
行政書士に対するネガティブな意見の根源には、AI(人工知能)の急速な発達があります。
AIは人間より処理スピードが格段に速いうえ人件費も必要ないため、人間に取って代わる存在になると予想されているのが理由です。
確かに、単純な書類作成や膨大な計算が必要になる書類作成はAIに頼る時代が来るでしょう。
1つの仕事にかかる時間を短縮すれば、より多くの仕事に取り組めます。
しかし、官公署への書類申請や実地調査、個別相談となると話は別です。
特に人間の心情を推し量る相談業務は、AIの不得意とする分野で、行政書士が今後も対応する必要があります。
つまり、AIを適材適所で導入・活用できるか否かが行政書士(事務所)の鍵となるでしょう。
今後、AIの活用を怠る事務所は淘汰される可能性もあります。
手がける業務範囲が広がる
否定的な意見に反して、行政書士が取り扱う業務範囲は拡大中です。
今から10年前に7,000種類であった取り扱い書類がでは現在10,000種類を超え、活躍の場が増加しています。
例えば、ドローン関連・民泊関連・外国人労働者関連の業務は今後増加が見込まれる分野です。
- ドローン関連→映像関係・観光業界・建設業界からの飛行許可申請
- 民泊関連→民泊を営むために必要な手続きの代行(旅館業法・消防法令など)
- 外国人労働者関連→外国人労働者の就業サポート
まとめ
今回は、行政書士の年収や将来性について解説してきました。
難関資格に数えられるため、もう少し高年収だと思っていた方も少なくないでしょう。
しかし、平均年収はあくまで平均のため、個人の努力次第で2倍や3倍も無理な話ではありません。
これは、行政書士に限らず、一般的な社会人と同じですね。
- 行政書士の平均年収は300~500万円
- 勤務型・兼業型・開業型で年収に大きな開きがある
- 行政書士の仕事には業務単価が定められており、価格は数万から数十万までさまざまある
- 性別による年収差は基本的にない
- 行政書士として高収入を得たいならば、地方より都市部
残念ながら、ひと昔前と異なり、行政書士の資格に印籠のような効果はないようです。
行政書士として成功するためには、継続的な努力を怠らないようにしましょう。
→行政書士の通信講座おすすめランキング18社の記事はこちら