親から相続した古家付きの土地をどうしたらいいか、悩んではいませんか?土地と建物といった不動産は気軽に売却できるものでもなく、また複雑な税金の仕組みにも組み込まれている為、処分に悩んでいる方は少なくありません。
家ごと売却できるのか?家は解体した方が良いのか?売却すると決まったならどうすればいいのか?と疑問は尽きないものです。しかし、正しい知識をひとつひとつ身に付けていけば有効活用できる可能性も大いにあります。この記事では古家付き土地を売却する際の注意点や、メリットとデメリットを徹底解説していきます。
古家付き土地とは?
これからどのような手段を取れば良いのかを考える為には、まず古家つきの土地が不動産物件としてどのような性質を持つのかについて把握していきましょう。
資産価値のない家が建った土地
古家つき土地とは、その言葉が示す通りに古い家が建った土地の事です。「古い家」があるという部分が不動産物件として考える上ではとても重要になってきます。多くは築20年以上の木造住宅が古家として捉えられていますが、これらには資産としての価値が存在しないも同然の状態となっています。
つまり、不動産物件としての古家つき土地とは、資産としての価値の無い家が建った土地の事を指すのです。価値は土地部分が大半を占める事になります。売り出される際には、あくまで土地を主体として販売され、古い家が建っているという事が広告などで捕捉される事が多いと言われています。
中古住宅との違いは?
法律やルール、習慣に、古家つき土地と中古住宅を区別する明確な基準はありません。強いて挙げるならば、その物件の売主がどのように売りたいか考えた時に区別されると考えるべきでしょう。
住宅として売り出したいならば中古住宅と銘打たれて販売され、土地として売り出したいのならば古家つき土地として販売される事になります。
住宅は一般的に、築20年以上が経過すると資産価値は消滅するものとして見なされます。そのため、リフォームやリノベーションといった補修によってその価値を保つ事は可能ですが、その場合は古家ではなく中古住宅としてのアプローチで売却を考えられます。逆にそういった措置を行わない場合に買い手は付きにくい為、古家つき土地としての売却がおすすめです。
古家付き土地を売却するメリット
不動産は所持しているだけでも様々な税や責任を背負う事になる為、用途がなく利益も生み出さない土地は手放す事に多くのメリットがあります。この項目では、古家つき土地を売却する事で得られる以下4つのメリットについて解説しています。
- 住宅ローンが利用できる
- 節税できる
- 解体費用が不要
- 契約不適合責任が免責になる可能性がある
住宅ローンが利用できる
まず買主が購入する際に住宅ローンを利用できる可能性が高まります。このメリットは直接的には土地を購入する側に作用するものですが、購入のハードルが下がる事によって買い手がつきやすくなり、売主に「売却が手早く成功する」という間接的なメリットをもたらす事になります。
一般的に更地の土地を購入する為に売却ローンは審査が厳しくなるか、使用できませんが、古家が存在している事により、住宅ローンの適用範囲となる可能性があるのです。不動産取引は多くの場合でローンを使用したものとなるため、買い手にとっては便利なものに映る場合もあるでしょう。
節税できる
家が建っている土地は固定資産税が軽減されます。
「売却するのだから関係が無いのでは?」と思うかもしれませんが、土地の売却は軽い買い物ではありません。例えば売却を決めてから実際に売れるまでの時間がかかることも多くあります。その際にもし土地を更地にして売却しようと考えた場合、古家があれば軽減されていた分の固定資産税を、売却完了まで払い続けなければなりません。しかし古家つき土地の売却であれば、手元を離れるまでの節税にも繋がります。
解体費用が不要
更地にして売却する場合は解体費用を払わなければなりません。木造住宅の場合は、坪あたり4~5万円ほどが相場で、決して安い出費とは言えません。しかし、古家つき土地では解体費用は不要です。
古家つき土地の売却は、前述の節税効果を加えて土地売却の費用を抑える効果があります。現状のままで売れる見込みがあるケースでは、余計なコストを支払わないようにしましょう。
契約不適合責任が免責になる可能性がある
古家つき土地は、住宅部分に関する契約不適合責任が免責として扱われる場合があります。土地を主眼として売り出すことになるため、「建物について一切の責任を負わないもの」とする契約を結ぶと良いでしょう。
住宅の契約不適合責任の免除は住宅の資産価値が失われている事と表裏一体です。そのため、木造住宅は法定耐用年数を22年に設定されています。もし築22年以上の物件なら、古家つき土地として売却すると契約不適合責任の免除を受ける事ができるでしょう。
古家付き土地を売却するデメリット
出費の削減やハードルの低下など、様々なメリットが見られましたが、何事にもデメリットというものが存在しています。この項目では古家つき土地の売却に関するデメリットについて解説していきます。代表的なデメリットは以下の二つです。
- 売れる可能性が下がる
- 売却益があまり得られない
売れる可能性が下がる
古家つき土地は更地の物件よりも売れる可能性が低いと言われてます。あらゆる商取引で懸念される悩みは、商品が「売れない」という事ですが、残念ながら、古家つき土地もそのような悩みを持つ商品の一つです。
売れにくい理由としては、現状のままの古家に住むわけでもなければ、買主が自分から解体費用を支払う必要があることが第一に挙げられます。以前の項目で紹介した「解体費用を支払わなくて良いメリット」は、このようなかたちで買主側に影響しているのです。古家つき土地は、新築の住宅が欲しい人には避けられがちな物件となっています。
また、このような背景を持っている為、古家つき土地は売れたとしても買い手がつくまで時間がかかるとも考えられています。更地には出費のデメリットがあるとはいえ、より需要がある為、できるだけ早く土地を手放したい場合には古家の解体を選ぶと良いでしょう。
売却益があまり得られない
古家つき土地は売却益があまり得られません。これには上記の「売れる可能性が下がる」で紹介した事が間接的に影響しています。古家つき土地を売る場合、ほとんどの人が「売れにくい」というデメリットを踏まえて売却を行う為、少しでもそのような悪い影響を打ち消す為に安めの値段をつけて売る事になるからです。
買い手の側は、多くの場合は解体費用も掛かることを前提として物件を探しているため、あまり高い金額のついた物件には注目しません。このような厳しい条件の中では、低めの値段をつける事が「売れにくさ」を解決する為の数少ない工夫である為、結果的に利益が得にくくなってしまうのです。
古家付き土地を売却する際の税金の扱い
買う時、持っている時、手放す時…どんな時でも、不動産の悩みには税金の悩みがつきものです。この項目では、古家つき土地を売却する際にどのような税金が発生するかについて紹介していきます。場合によっては控除の対象ともなる為、以下の3つについてしっかりと把握していきましょう。
- 売却益が出た場合は譲渡所得税が発生
- 古家がマイホームだった場合は特別控除の対象
- 固定資産税は土地のみより安い
売却益が出た場合は譲渡所得税が発生
他の物件と同じように、売却によって利益が出た場合には譲渡所得税が発生します。譲渡所得税の計算は以下のようにして行われます。
譲渡所得税を求める為にはまずは売却益、譲渡所得を求める必要があります。
しかしながら、取得費を正確に求める為には減価償却費を求めなくてはなりません。減価償却費は以下の計算によって求められます。
古家がマイホームだった場合は特別控除の対象
古家をマイホームとして居住していた場合は、売却時に3,000万円まで譲渡所得税の特別控除の対象となります。
この控除を適用する事によって譲渡所得の計算が変化します
固定資産税は土地のみより安い
メリットの項目でも紹介した通り、古家つき土地の固定資産税は更地のものより安くなっています。支払う税金が安くなるため、売却まで物件を保有する場合には節税に繋がるでしょう。
しかし、特定空き家に指定されると固定資産税が跳ね上がる事に注意しましょう。特定空き家とは空家対策特別措置法によって定められる空き家の状態であり、空き家の増加に対する抑止として、この状態に指定された物件は固定資産税が跳ね上がる事になってしまいます。倒壊の恐れや管理の不行き届きによる環境・景観への被害、衛生的な危険性などにより指定される為、古家の管理・整備はしっかりと行っておくと良いでしょう。
土地の売り方や税に関しては以下の記事でも解説しています。興味のある方は是非ご覧ください。


古家付き土地を売却する場合に建物は解体するべき?
デメリットの項目で解説した通り、古家つき土地の人気は高いものとは言えません。しかしながら更地にして売却するのが唯一の道という訳でもありません。
この項目では、古家つき土地の売却にあたって、土地を解体するべきかどうか、あるいは解体しないまま手放すには他にどのような手段があるのかについて紹介していきます。
解体費用を出す余裕があるなら解体をした方が良い
更地の物件の方が売れやすい為、解体費用を出す余裕があるなら更地にしてから売却した方が良いでしょう。契約不適合責任の免除があるとはいえ、古家に関するトラブル発生の可能性も孕んでいるのが古家つき土地の売却です。デメリットに対してメリットが得られそうにない状況では、古家を解体して更地として売却する事をおすすめします。
売却額が安くていいならそのまま買取に出す方法も
解体費用も出したくない、しかし「物件は手放したい!」そういった場合には、業者へ買取に出すという選択肢もあります。
多くの場合、物件の売却は売主と買主を業者が結び付ける「仲介」といった形式で行われますが、「買取」では買主ではなく不動産業者が直接売主と物件のやり取りを行うものです。解体工事をせずに、かつ土地建物の責任も手放すことができるため、売主の負担が少ない選択肢です。
さらに買い手を探す必要のある仲介と違って、売却完了までにかかる時間が非常に短いものとなっており、急ぎ土地を処分したい方にはおすすめです。
また、買取で業者側は通常の仲介とは違い仲介手数料を得る事ができないため、その分を売却価格より差し引く必要があります。そのために売主は仲介よりも安い売却額で手放すことになってしまう点は留意して下さい。
不動産買取業者についてはこちらの記事でもより詳しく解説しています。興味のある方は是非ご覧ください。

古家付き土地を売却する際の注意点
この項目では、古家つき土地を売却する際に注意しておきたい、以下の4つのポイントについて紹介します。
- ゴミはなるべく処分しておく
- 境界線を明確にしておく
- 免責事項を一覧化しておく
- なかなか売れない場合は解体工事なども検討する
快適な売却や処分の為に、これらの情報を把握しておくようにしましょう。
ゴミはなるべく処分しておく
ほとんどの場合、古家付き土地は買い手によって古家を解体することを前提に売り出しています。そのため、古家の中にゴミや不要物などが多くある状態では、処分を行わなければならない買い手側に「これの処分も自分でやらなければいけないのか」と悪印象を与える事に繋がりかねません。
手間のかかる物件よりもスッキリとした物件の方が買い手にとっては好印象のため、ゴミや不要物は処分してから売りに出すようにしましょう。
家のゴミに関してはこちらの記事でもより詳しく解説しています。是非ご覧ください。

境界線を明確にしておく
土地を売却する際には、どこからどこまでがこの土地の範囲かを示す義務である境界明示義務が売主側に発生します。土地の境界が不明瞭な状態では売却を行う事ができません。
既に測量がしてあるならば、確定測量図を参照する事で義務を果たす事が可能ですが、未測量の場合には改めて測量を行わなければなりません。売却前に測量が必要かどうかを確認しておくようにしましょう。測量がそれなりの時間や費用が求められるものでもあるため、早め早めの確認が大切です。
測量に関しては以下の記事でより詳細な解説を行っています。詳しく知りたい方は是非ご覧ください。

免責事項を一覧化しておく
契約不適合責任によって、免責事項をひとつひとつ述べなくてはならないため、説明すべきものをあらかじめ一覧化しておきましょう。説明していない瑕疵によって損害が買い手に発生した場合にはトラブルの原因になる可能性もあります。
古家に瑕疵がある場合は書類などに一覧化しておいて、買い手に説明できるようにしておきましょう。
なかなか売れない場合は解体工事なども検討する
古家つき土地は不動産物件の中でも売れにくいものです。手放したいにも拘らず売れる気配が無い場合には、先の項目で紹介したような解体工事か、仲介での売却ではなく買取を検討するようにしましょう。
解体についてはこちらの記事でも詳しく解説していますので、是非併せてご覧ください。


まとめ
古家つき土地は非常に売れにくい物件の為、どのように取り扱えばいいのかわかりにくいものと言えるでしょう。解体不要という売り手の出費を抑えられるメリットが買い手にとってはデメリットであり、通常の中古住宅の取引のようにはいきません。
そのため売りたい古家つき土地がどれほどの価値を持っているのかを把握する事が重要です。まずは不動産業者に査定を頼み、そのまま売るか、解体して売却するか、仲介ではなく買取を選ぶかどうかを決めましょう。税の取り扱いの知識は古家つき土地以外の取引でも使えるもののため、これらを把握しておくことも重要です。
空き家や土地に関しての活用方をもっと知りたい!という方には以下の記事もおすすめです。様々な知識や方法を身に付けて、保有している物件の取り扱いを検討していきましょう。


※「マイナビニュース不動産査定」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
・https://www.land.mlit.go.jp/webland/
・https://www.rosenka.nta.go.jp/
・https://www.retpc.jp/chosa/reins/
・https://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet
・https://www.zentaku.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/02/2021-fudousan-anke-to.pdf
◆記事で紹介した商品・サービスを購入・申込すると、売上の一部がマイナビニュース・マイナビウーマンに還元されることがあります。◆特定商品・サービスの広告を行う場合には、商品・サービス情報に「PR」表記を記載します。◆紹介している情報は、必ずしも個々の商品・サービスの安全性・有効性を示しているわけではありません。商品・サービスを選ぶときの参考情報としてご利用ください。◆商品・サービススペックは、メーカーやサービス事業者のホームページの情報を参考にしています。◆記事内容は記事作成時のもので、その後、商品・サービスのリニューアルによって仕様やサービス内容が変更されていたり、販売・提供が中止されている場合があります。