来年度からの中学校の技術の教科書に、日本語プログラミング言語「なでしこ」が載ります。来年度から中学の技術の過程にプログラミング教育が導入されますが、なでしこがそのお手伝いの一端を担えること、そして、こうして本コラムで報告できることをとても嬉しく思います。そこで、本稿では、改めてなでしこのインストールと使い方を紹介します。

教科書掲載の概要

なでしこが掲載されるのは、教育図書の中学校の技術・家庭科(技術分野)内容「D 情報の技術」です。特に、なでしこが使われるのは「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミングによる問題の解決」の部分です。なでしこを使ってチャットを作ります。

  • 教育図書による解説PDFより

    教育図書による解説PDFより

なでしこは、オープンソースで開発されており、ソースコードも全て公開されていますので、安心して利用してもらえると思います。

また、これまでも、なでしこのユーザーさんには、多くの小中学生の方がおり、ゲーム開発やいろいろなツールを作るのに使ってもらっています。なでしこでプログラミングを学び、学生の皆さんに楽しんで使って貰えればと思います。

なでしこv1は事務の自動化のために作られた

ところで、教科書に採択されたのは、本連載で扱っているWebブラウザで使える「なでしこv3」ではなく、Windows専用の「なでしこv1」です。v1とv3は用途が異なるのです。

Windows専用のv1は、事務の自動化に役立つ1000を超える命令セットを誇っています。なでしこは、そもそも事務の自動化を行うために開発されたプログラミング言語です。Excelの自動操作やWebからデータのダウンロード、さまざまな定型処理が得意です。

  • なでしこv1で使える命令の分野一覧

    なでしこv1で使える命令の分野一覧

ダウンロードとインストール

なでしこv1は、公式Webサイトのダウンロードのページ、こちらからダウンロードできます。合い言葉に「コロッケ」と入力して「ダウンロード」ボタンを押すとダウンロードできます。そして、ダウンロードしたファイルを解凍します。

  • ダウンロードしたらZIPファイルを解凍します

    ダウンロードしたらZIPファイルを解凍します

なでしこの使い方

ダウンロードしたアーカイブの中に、nakopad.exeという鉛筆アイコンの実行ファイルがあります。これがなでしこ開発に使うエディタです。ダブルクリックして実行しましょう。

なお、初回実行の際、「WindowsによってPCが保護されました」というWindows Defenderの警告が出る場合があります。[詳細]をクリックしてから[実行]ボタンをクリックします。その際、発行元が不明とでますが問題ありません。

  • ダウンロード後、初回実行時に警告が表示されることがあります

    ダウンロード後、初回実行時に警告が表示されることがあります

なでしこエディタを起動したら、以下のようなプログラムを記述してみましょう。

「格言を見ますか?」と二択。
もし、それがはいならば
  「何事にも時がある{改行}
   捜すのに時があり
   諦めるのに時がある」と言う。
ここまで。

画面上部にある実行ボタンを押すか、メニューから[実行 > 実行]をクリックするとプログラムが実行されます。

  • なでしこエディタを起動してプログラムを書いたところ。

    なでしこエディタを起動してプログラムを書いたところ

プログラムを実行すると、「はい」か「いいえ」で答えるダイアログが表示され、「はい」をクリックすると格言が表示されます。プログラムを読んでみて、だいたいプログラムの動きが分かるのではないでしょうか。ちなみに、ダイアログに表示されたメッセージはコピーして別の用途に使うこともできます。

  • 二択ダイアログを使ったプログラムを実行したところ

    二択ダイアログを使ったプログラムを実行したところ

便利なエディタの機能とサンプルについて

なお、なでしこエディタの画面の左側には、命令の一覧タブがあり、ここから好きな命令を探して、エディタに貼り付けることができます。ダブルクリックで、エディタに貼り付けると、ひな形がエディタに挿入されます。また、ステータスバーをダブルクリックすると詳しいマニュアルが表示されます。

  • なでしこエディタの便利なエディタ機能

    なでしこエディタの便利なエディタ機能

また、メニューから[ファイル > サンプルフォルダを開く]をクリックしてみてください。豊富なサンプルが添付されています。特に本連載で注目したいのは、サンプルにある[10行プログラミング]です。

  • サンプル一覧

    サンプル一覧

このサンプルは、本連載の前身とも言える連載で作ったプログラムで、2007年まで毎週連載していたプログラムの中で評判の良かったモノを収録しています。連載自体はこちらから今でもWebで読めるようです。日本語プログラミングの良さを広める上で大きな役割を果たすことができたと思います。

特に、「005-請求書作成」の中にあるプログラムを実行すると、Wordを自動操縦して連続でWordファイルを生成します。わずか10行のプログラムですが、自動でどんどん書類を作成していきます。プログラミングによるExcelやWord連携の強力さを確認できます。

まとめ

以上、簡単ですがなでしこのインストールから簡単なプログラム、そして、いくつかのサンプルに言及することができました。

今回、なでしこ掲載のニュースを公開したところ、以前一緒に仕事した仲間から高校の同級生まで、多くの懐かしい方に声をかけていただきました。本連載を応援してくれる皆さん、そしてコラム執筆の機会を与えてくださっている編集部の皆様、本当にありがとうございます。

今年で正式版公開から15年目のなでしこですが、これからも開発していこうと決意を新たにしています。引き続きの応援、よろしくお願いします!

自由型プログラマー。くじらはんどにて、プログラミングの楽しさを伝える活動をしている。代表作に、日本語プログラミング言語「なでしこ」 、テキスト音楽「サクラ」など。2001年オンラインソフト大賞入賞、2004年度未踏ユース スーパークリエータ認定、2010年 OSS貢献者章受賞。技術書も多く執筆している。