NTTドコモは2026年9月25日、「ahamo」のリニューアルや新プラン「ドコモ mini2」の提供、そして既存料金プランの値上げと、モバイル通信料金に関するいくつかの発表を実施しました。その背景には、昨今の物価高があることは間違いありませんが、それに伴う一連の施策からは、NTTドコモの料金戦略が大きく変化している様子もうかがえます。

受付終了プランだけでなく主力プランも値上げ

毎日のように耳にする物価高。モバイル関連でも、円安やメモリー不足の影響でスマートフォンの価格が劇的に高騰し、話題となっています。スマートフォンで通信をするのに必要な携帯電話料金も例外ではなく、ここ最近は高騰傾向にあります。

実際NTTドコモは、2026年9月25日に既存プランの値上げを発表し、2026年12月1日から改定するとしています。これは、すでに新規受付を終了した「eximo」「irumo」「5Gギガホ」などを中心としたプランの料金値上げとなり、eximoなど大容量プランは550円、irumoなどの中・小容量プランは110円から330円の値上げがなされるようです。

  • NTTドコモは2026年12月1日より、新規受付を終了した料金プランを中心に、既存プランの値上げを発表。おおむね110円から550円の値上げ幅となる

    NTTドコモは2026年12月1日より、新規受付を終了した料金プランを中心に、既存プランの値上げを発表。おおむね110円から550円の値上げ幅となる

値上げの理由として同社が挙げていたのは昨今の物価高、そして評価を大きく落としているネットワークへの投資や、AI、6Gなど新しい技術への投資が必要なこと。こうした理由はKDDIやソフトバンクなど、競合が既存料金プランを値上げした時と大きな違いがあるわけではなく、ある意味で想定通りの値上げと見ることができるでしょう。

ただ一方で、同社は現行の主力プランに関しても大きな動きを見せています。その1つが、オンライン専用の中容量プラン「ahamo」で、2026年12月から通信量を30GBから40GBに増量し、さらに通信量120GBまで3段階に変化する、段階制へのプランへとリニューアルを図るようです。

月額料金は、通信量40GBまでの場合3,135円、120GBまでの場合5,115円となっています。従来の月額料金は30GBで2,970円、オプションを追加して110GBの通信量が利用できる「ahamo大盛り」で4,950円ですから、おおむね通信量を10GB増量して165円値上げした、という計算になるでしょうか。

  • 「ahamo」は、新たに段階制のプランへとリニューアル。月額料金は実質165円の値上げとなるが、その代わりに通信量も10GB増量される

    「ahamo」は、新たに段階制のプランへとリニューアル。月額料金は実質165円の値上げとなるが、その代わりに通信量も10GB増量される

そしてもう1つは、小容量プランの「ドコモ mini」です。ahamoのリニューアルと同じ2026年12月のタイミングで後継プラン「ドコモ mini2」の提供が打ち出されており、こちらも6GBまでで月額3,278円、12GBまでで月額4,180円と、2段階の段階制プランに変化するようです。

ただ、新プランを既存のドコモ miniと比べた場合、通信量は2GB増えているものの、月額料金は528円から748円増と、ahamoとは異なり大幅な値上げをしていることが分かります。その代わりに充実させているのが、家族契約でお得になる仕組みで、ドコモ mini2では新たに、家族契約による割引「みんなドコモ割」を追加しています。

それに加えて「ドコモ光セット割」「dカードお支払い割」など、ドコモ miniにもある割引をすべて適用していくと、月額料金は858円から2,178円となり、ドコモ miniで割引を適用した時の料金と大きく変わらなくなるようです。ほかにも、家族間で無料通話ができる仕組みが新たに導入されるなど、家族契約でお得に利用できる仕組みに非常に力を入れた内容に変化していることが分かります。

  • 「ドコモ mini」に代わって提供される「ドコモ mini2」。ベースの料金は最大で700円超の大幅値上げとなるが、新たに適用される「みんなドコモ割」など、家族での利用によってお得さを実現する仕組みとなっている

    「ドコモ mini」に代わって提供される「ドコモ mini2」。ベースの料金は最大で700円超の大幅値上げとなるが、新たに適用される「みんなドコモ割」など、家族での利用によってお得さを実現する仕組みとなっている

「ドコモ mini2」で守りを固め、「ahamo」で攻める

その一方で、大容量プランの「ドコモ MAX」に関しては、新たに60歳以上の契約者に3カ月間、月額最大2,970円の割引を適用する「ドコモ MAX 60歳以上割」を提供するとしていますが、料金プラン自体に手は加えず現行の内容を維持する方針のようです。さらに、その前日となる2026年9月24日には、ドコモ MAXで利用できる映像配信サービス「Lemino」をWOWOWと共同事業化し、WOWOW主導でコンテンツを大幅に拡充することも打ち出すなど、サービス強化の姿勢も打ち出しています。

  • NTTドコモは2026年9月24日、WOWOWと映像配信の「Lemino」を共同事業化。WOWOWの調達・制作力を生かしてコンテンツを拡充することを打ち出している

    NTTドコモは2026年9月24日、WOWOWと映像配信の「Lemino」を共同事業化。WOWOWの調達・制作力を生かしてコンテンツを拡充することを打ち出している

内容を大きく変えて値上げに踏み切ったahamoとドコモ miniと、値上げはせずにサービス強化を進めるドコモ MAX。これら一連の施策からは、NTTドコモが値上げを機として料金戦略を大きく変えようとしている様子が見て取れます。

なかでも重要性が高まっているのはahamoです。ahamoはサブブランドを持たないNTTドコモにとって、割引のないシンプルさで若い世代のつなぎ止め、そして他社から顧客を奪うための武器として活用してきましたが、今回のリニューアルは後者の位置付けをより強化する狙いがありそうです。

実際、ahamoは先にも触れたように、リニューアル後の値上げ幅が165円と低く、それでいて10GBの通信量が増量されるというメリットも用意されています。中容量帯はKDDIやソフトバンクだけでなく、低価格で使い放題を実現する楽天モバイルとの競争も激しいだけに、避けられない値上げを小幅に留めながらメリットも同時に提供し、競争力を強化したいものと考えられます。

一方で、位置付けが大きく変わったのはドコモ mini2でしょう。ドコモ miniは、家族契約に係る割引がなかったことから、通信量が少ない年配層の乗り換えだけでなく、積極的なプロモーションで他社から顧客を奪う武器としても活用されていました。

ですが、ドコモ mini2ではベースの価格が大幅に高騰した一方、家族契約によるメリットに重きを置いていることから、新規契約よりも既存顧客の旧プランからの乗り換えを重視するようになったといえます。家族契約に伴う割引を適用したユーザーは解約率が低くなる傾向にあるだけに、NTTドコモは家族契約に重きを置いて顧客を留める、守りを固める存在としてドコモ mini2を活用しようとしているのではないでしょうか。

そしてドコモ MAXは、その魅力を高めて他のプランから乗り換えを促し、売上を伸ばすゴールとしての存在意義を高めたといえます。ahamoユーザーに対しては、指定のサブスクリプションサービス契約でポイントを還元する「爆アゲ セレクション」を強化してコンテンツの利用になじんでもらうこと、年配層の契約が多いと想定されるドコモ mini2ユーザーに対しては、ドコモ MAX 60歳以上割を提供することによって、最終的なゴールとなるドコモ MAXへの移行に結び付けたいものと考えられます。

  • 「ドコモ MAX」は、NTTドコモが最も重視するプランであることが明確に示されており、より多くの顧客をドコモ MAXに移行させることが同社の目標となるようだ

    「ドコモ MAX」は、NTTドコモが最も重視するプランであることが明確に示されており、より多くの顧客をドコモ MAXに移行させることが同社の目標となるようだ

それゆえ、一連の施策は非常に考え抜かれたものと見ることができるのですが、一方でNTTドコモ側の意向が強く働いた結果、隙が生じていることも見逃せません。実際、ドコモ mini2は家族契約がないとお得にならないため、店頭でのサポートを欲する単身の高齢者にとっては明らかに不利です。家族割に重きを置かない競合のサブブランドが、そうした人たちを狙ってプロモーションを打ってくる可能性は否定できないでしょう。

またahamoに関しても、今回のリニューアルによる実質値上げを受け、「Rakuten最強プラン」を値上げしないと宣言している楽天モバイルが、ahamoの値上げを受けたプロモーションを強化してくる可能性は十分考えられます。またそうでなくても、今後競合が対抗プランを打ち出してくる可能性は非常に高いのではないでしょうか。

ここ最近の競争環境を見るに、競合が隙を見せればアキレス腱を徹底して叩き、顧客を奪うというのが定石となってきています。それだけに、NTTドコモが新料金施策で生じた隙をいかにカバーし、顧客の維持拡大につなげるかが関心を呼ぶところではないでしょうか。