商品の売れ筋は日々移り変わっていきます。そのトレンドを瞬間瞬間で切り取るべく、家電量販店や専門店、中古ショップを訪ね、特定のジャンルの売れ筋を調べていきたいと思います。連載第1回のテーマは「通勤通学向けイヤホン」。ビジネスパーソンが多く往来するJR新宿駅そばにお店を構えるビックカメラ新宿西口店を取材しました。
同店のオーディオコーナーを担当する神田力主任は「肌感覚ですが、最近は5人に3人の方がワイヤレスイヤホンを買われていきますね。そのなかでも過半となっているのが、左右分離型の完全ワイヤレス(トゥルーワイヤレス)モデルとなります。満員電車でもケーブルが引っかかる心配がありませんし、何より話題の製品が多数登場しているということで、性別年代問わずに人気ですね」と現状を解説してくれました。
まず、初めて完全ワイヤレスイヤホンを買う人に向けたアドバイスを3つ挙げてもらいました。
- とくに重視すべきはフィッティング。人間は左右で耳の形が違うので、ぜひ両耳とも装着しましょう。
- 普段よく聞く音源での試聴がおすすめ。Bluetoothの接続手順もつかめるので、手持ちのスマホで試してみましょう。
- 通勤通学なら本体の使用時間重視で、旅行や出張のお供ならケース込みの使用時間重視が理想。
アドバイスが完全ワイヤレス寄りとなっているのは、売れ筋モデルがどれも完全ワイヤレスとなっている状況を反映してのこと。次ページから売れ筋トップ5を人気の理由とともに紹介していきましょう。
※原稿と写真で掲載している価格は、2019年4月24日14:00時点のもの。日々変動しているので、参考程度に見てください。
第1位:外音取り込みと扱いやすさで定番の「WF-SP700N」
一番人気となっていたのは、ソニーの完全ワイヤレススタンダードモデル「WF-SP700N」。アクティブノイズキャンセリングモードとアンビエントサウンド(外音取り込み)モードがボタンひとつで切り替えられるところが高く評価されています。同店での価格は税込み1万7517円。
「電車内で緊急停止のお知らせなどがあっても、イヤホンを外さずに状況を把握できるのが便利です。外でジョギングなどをする場合も、外音が拾えたら安心ですしね。ソニーだけにワイヤレスの操作性も洗練されていて、『コレを選べば安心』という地位を築いていますね」
第2位:通話音質のよさで指名買いされる「Elite Active 65t」
2位に入ったのは、Jabraの「Elite Active 65t」。価格は税込み2万6870円。
左右に合計4つのノイズキャンセリングマイクを内蔵しており、ハンズフリーで頻繁に通話する人に指名買いされることが多いそう。「風切り音や雑踏の音を拾いにくく、音声通話が快適だと評判です。とくに、ビジネスパーソンの方に指名されることが多いです」
第3位:1年半売れ続けるソニー初の完全ワイヤレス「WF-1000X」
3位に入ったのは、ソニーの「WF-1000X」。価格は税込み1万8878円。2017年10月に発売された同社初の完全ワイヤレスイヤホンだが、新モデルが多数投入されている現在でも根強い人気があるという。
「音質を重視する人に熱烈に支持されているモデルです。6mm径のドライバーを内蔵していて、中高域の伸びがはっきりと優れています。そのうえで、ノイズキャンセリングやアンビエントサウンドも使えるのも魅力ですね」
第4位:女性に人気の連続再生9時間モデル「TE-D01b」
4位は、AVIOTの「TE-D01b」。完全ワイヤレスでは最高クラスの連続再生9時間という仕様のモデルで、価格は税込み1万6070円となります。
シリーズモデルの「TE-D01d」(税込み1万2960円)とともに、女性を中心にファンを広げているそう。「TE-D01dはIPX7等級で防水性が高く、ノイズキャンセリング機能もついているため、日常使いで人気があります」
第5位:接続性の高さで売れる第2世代の「AirPods」
5位は、アップル純正の完全ワイヤレスモデル「AirPods(第2世代)」。価格は、標準モデルが税込み1万9213円、ワイヤレス充電ケース付属モデルが税込み2万4613円となります。
音質やデザインもさることながら、iPhoneやApple Watchとの接続性の高さや低遅延といった機能面に惚れ込んで購入する人が多いとか。「動画を見るときに、人物の声が口の動きとぴったり合っていてほしい、音ゲーでディレイにストレスを感じる、といった人に強く支持されています」
はみ出し情報…アウトドア派と音質重視派に熱烈な人気の2製品
トップ5には入らなかったものの、特定の条件下でヒットを飛ばしているモデルもあります。神田氏は「2つあります」と売り場を案内してくれました。
アウトドア派に人気があるのが、ボーズの「SoundSport Free wireless headphones」。価格は税込み2万3220円。「とにかく外れにくく、本体で5時間再生できる持ちのよさも評価されています」
音質重視派の人からの予約が殺到したのは、ゼンハイザー初の完全ワイヤレスモデル「MOMENTUM True Wireless M3IETW」。税込み3万8340円と比較的高価ながら、発売から3カ月近く品薄傾向が続いたほどの反響があったモデルです。
「最近になって、ようやく在庫が安定しました。調律の良さに定評があって、どんなジャンルの音楽でもきめ細かく音が楽しめます。バランスの良さは折り紙付きですね」
著者プロフィール
古田雄介
フリーランスライター。デジタルとインターネット、生老病死のつながりに詳しい。著書に『死とインターネット』(Kindle版)、『ここが知りたい! デジタル遺品』(技術評論社)、『故人サイト』(社会評論社)など。