これまで、「電子デバイス」といっても機内に搭載するものの話ばかりしていたので、今回は外に搭載するもの、すなわちアンテナの話をしてみようと思う。意外とバリエーション豊富だ。

周波数帯が変わればアンテナも変わる

いうまでもないことだが、アンテナのサイズは使用する電波の周波数帯に影響される。基本的に、周波数帯が低くなるとアンテナは大きくなる。そして、大きいアンテナをいかにして空気抵抗にならないように、そして重量を増やさないように取り付けるか、という課題が生じる。

第二次世界大戦中の戦闘機を見ると、コックピットの後ろに柱を立てて、そこから垂直尾翼まで線を張っている機体が多い。これもアンテナで、波長が長い(周波数が低い)電波に合わせたサイズのアンテナを搭載しようとして、こういう形になってしまったわけだ。

しかし当節の戦闘機では、さすがにこういう形のアンテナを取り付ける事例は見られない(戦闘機以外の機体ではたまにある)。では、どんな種類のアンテナが出てくるのか。

棒状のアンテナと板状のアンテナ

よくあるのは、棒状のポール・アンテナを突き出させるケースと、板状のブレード・アンテナを突き出させるケースではないかと思われる。どちらも、サイズは一定ではなくて、周波数帯に合わせて変動する。

航空自衛隊のAWACS(Airborne Warning And Control System)機・E-767。背中にブレードアンテナがいくつか並んでいる。しかし、米空軍のE-3になると、こんなものではない。アンテナだらけである

F-2支援戦闘機の垂直尾翼。ちょっと切れてしまっているが、右端にブレード・アンテナが見える。垂直尾翼の付け根や先端にはアンテナ・フェアリングがいくつも突出している

フェアリングで覆われたアンテナ群

アンテナの形状によっては、円錐状のものが外部に突き出したり、それを樹脂製のフェアリング(要するにカバー)で覆って整形したりする。フェアリングを設ける方がアンテナの保護になるし、空気抵抗を減らす役にも立つ。

特に軍用機の場合、電子戦関連のアンテナが増える傾向にあるため、長く使っている機体ほどフェアリングがあちこちに突出する傾向がある。もっとも、そのすべてがアンテナ用のフェアリングとは限らず、中には灯火だったり、非常時に燃料を投棄するためのパイプだったりすることもあるが。

米空軍のF-16C戦闘機。キャノピーの前に4つ並んだブレード・アンテナ群は敵味方識別装置(IFF Identification Friend or Foe)のもの。その両脇にアンテナ・フェアリングが見える

また、衛星通信のアンテナは衛星の方に向けられるように可動式になっていることが多いので、それを覆うためのフェアリングは必須だ。

たとえば日本航空の旅客機のうち、インターネット接続サービスに対応した機体は、背中に衛星通信アンテナのフェアリングが突出しているので、一目で分かる。あの中にパラボラ・アンテナが入っている。

インターネット接続サービスに対応した日本航空のボーイング737。背中にポコンとフェアリングが突出している

インターネット接続サービスに未対応の同型機。こちらの背中はスッキリしている

しかしパラボラ・アンテナが大掛かりになると、フェアリングぐらいでは収まらず、機体そのものの外形に影響を及ぼすこともある。その典型例が、MQ-1プレデター、MQ-9リーパー、RQ-4グローバルホークといったUAVの一群だ(本連載の第39回を参照)。

ところが、固定式の衛星アンテナもあるようで、有名なところでは米軍機が使っている、通称「フリスビーアンテナ」がある。救難ヘリならこれがひとつ付いている程度で済んでいるが、E-3セントリーAWACS機になると指揮・管制・通信能力が生命線になるだけに、そのフリスビーアンテナが背中にいくつも並んでいる。

いわゆる「フリスビーアンテナ」の例。写真は米海兵隊のUC-12W輸送機のもの

ステルス機はアンテナも内蔵

ところが、外部にいろいろと突出物があると、たとえフェアリングで覆って整形したとしても、それがレーダー電波の反射源になってしまう。だから、レーダー反射を限定したいステルス機では、外部に突出するアンテナは局限するのが一般的だ。

ではどうするかというと、アンテナを機体内に収容して、外板とツライチになるように平面構成のアンテナを使う。もちろん、必要な向きをカバーできる位置に取り付けなければならないから、場合によっては場所の取り合いが起きるだろう。

ステルス機に限ったことではないが、アンテナには用途・形態ごとに「望ましい設置場所」がある。たとえば、衛星通信アンテナが下向きに付いていても意味がないし、地上からのレーダー電波を逆探知するためのアンテナが背中に付いていても感度を悪くするだけだ。

そういう要求をすべて実現しつつ、かつ相互干渉が起きないようにアンテナを配置するのが頭痛のする仕事であろう、ということは容易に想像できる。

ステルス機の場合には存在を把握するのが難しいが、そうでなければ多かれ少なかれ、アンテナがいろいろ突出している。空港で民航機を見る場面、あるいは秋の航空祭シーズンで軍用機を見る場面があったら、こういう「ひっつきもの」にも目を向けてみよう。

執筆者紹介

井上孝司

IT分野から鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野に進出して著述活動を展開中のテクニカルライター。マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。「戦うコンピュータ2011」(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて「軍事研究」「丸」「Jwings」「エアワールド」「新幹線EX」などに寄稿しているほか、最新刊「現代ミリタリー・ロジスティクス入門」(潮書房光人社)がある。