第97回アカデミー賞受賞作『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』のイスラエル監督チームによる最新作"NAZA(原題)"が、邦題『NAZA ナザ』(配給:トランスフォーマー)として2026年10月24日よりシアター・イメージフォーラムほかにて緊急公開されることが決定した。あわせて、ポスタービジュアルと予告編が公開となっている。
『NAZA ナザ』は、夜の暗闇の中、テルアビブのとある建物の屋上でイスラエル人ジャーナリストのユヴァル・アブラハームとラヘル・ショールがイスラエル軍の兵士や諜報員24名に極秘インタビューを行い、ガザで行われている民間人虐殺について「どのような指令を受けたのか?」「何をしたのか?」と証言を引き出していくドキュメンタリー。ガザ地区の監視や遠隔攻撃に直接関与した経験を持つ証言者たちは、イスラエル当局に特定されれば報復を受ける危険があるため、匿名でインタビューに応え、その声や姿形には最新技術によるデジタル処理が施されている。
ひとりひとりの言葉から浮かび上がってくるのは、彼らがどのようにして何万人もの民間人の殺害に加担したのか、なぜそれができてしまったのか——その背後にある、イスラエル国家が組織的に作り上げた<虐殺のシステム>だ。
タイトルの「NAZA」とは、イスラエル軍が「標的」であるハマスの構成員を攻撃する際に、犠牲になると予測する「民間人の巻き添えの数」を表す軍事用語だ。犠牲を人数ではなく「NAZA」と値を置き換えることで、彼らをひとりの人間としてではなく「数字」や「図形上の点」として認識し、実行者である兵士たちが攻撃任務を作業のように遂行できるように「システム化」していることが本作で明かされる。
監督のふたりは、「私たちはイスラエル人の映画製作者でありジャーナリストであるという立場から、ある使命感を持ってこの映画を制作しました。それは、私たちの国イスラエルが行っている、パレスチナ民間人の大量虐殺の背後にある「システム」を検証しなければならないというものです」とその決意を語る。
9月のヴェネチア国際映画祭で急遽プレミア上映されると、史上最長となる25分間のスタンディングオベーションを浴びて審査員特別賞を受賞。ガザ攻撃に直接関与した軍関係者によるあまりに衝撃的な告発に、イスラエル国内のみならず世界中で激しい論争を巻き起こしている。
ヴェネチア国際映画祭で大きな注目と喝采を集めた初上映からわずか2日後、イスラエルのネタニヤフ首相は本作と監督たちを苛烈に非難する動画をSNSに投稿。「国家に対する反逆」だとして彼らの国籍剥奪を表明するという異例の行動に出た。さらにこの発表の後間もなく、監督の両親が住むイスラエルの家には数十人の暴徒が押し寄せるという事態にまで発展。彼らに対する脅迫はますます過激化している。
それに対し、監督ふたりは「イスラエル政府による国籍剥奪の脅迫や殺害予告は、私たちの決意を変えるものではなく、映画を止めるものでもありません。連帯を示してくれた仲間たちに感謝するとともに、近いうちに世界中で『NAZA ナザ』が見られることを望んでいます」と語る。
彼らの意志に応えるように、『戦場でワルツを』(2008)の監督アリ・フォルマンをはじめとするイスラエル人の映画作家たちや、『麦の穂をゆらす風』(2006)『オールド・オーク』(2023)の監督ケン・ローチ、『アクト・オブ・キリング』(2012)の監督ジョシュア・オッペンハイマーら多数の映画人が監督ふたりを支持する声明を出し、連帯の輪は大きく広がっている。
本作は、「ここで明かされる真実が今すぐに、ひとりでも多くの人に届くべきだ」というジャーナリズムの観点から、The Guardianのウェブサイトで11月下旬(日時の詳細は未発表)から全編無料で配信される。しかし、本作の製作陣の「力強い作品です。スクリーンで観る価値がある」という意向を汲み、日本でも可能な限りの最速となる10月24日より超緊急公開が実現した。
この発表にあわせてポスタービジュアルと予告編が公開となった。ポスターには証言者がガザでの攻撃について説明する際に紙にペンで手描きした図が象徴的にあしらわれた。予告編は高層ビルが建ち並ぶ大都市テルアビブで、暗闇のなか監督ユヴァル・アブラハームと向かい合う証言者の口から衝撃的な言葉が次々と明かされていく、緊迫の瞬間が切り取られている。
配給会社が9月下旬に権利取得してから約1カ月という、日本では過去にあまり例をみないスピードでの公開となるが、配給会社のトランスフォーマーはその理由についてステートメントを発している。
『NAZA ナザ』緊急公開にあたって
本作が本年度のヴェネチア映画祭で初めて上映された際、私たちは大変強い衝撃を受けるとともに、その重要性、そして絶対にこの映画を日本で上映しなければならないという使命感を強く感じました。私たちが昨年配給した『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』の監督チームの一員でもあるユヴァル・アブラハーム、ラヘル・ショールの両監督が3年にわたり自らの身の危険を顧みずに続けた取材を通じ、ガザの空爆に関わるイスラエル兵や軍関係者が明かす攻撃の詳細と、それを可能な限り容易に遂行するために計算され尽くしたシステムは、身の毛もよだつような恐ろしさに満ちており、その勇気ある告発に世界中から賞賛の声が集まると同時に、両監督は反対派からの激しい攻撃にもさらされています。
一方、両監督をはじめとする製作チームは、事態の緊急性から本作を通常の公開スケジュールとは異なる形で一刻も早く世に届けたいと考え、11月からThe Guardian紙の公式サイトを通じた全世界での配信と、それに先駆けた異例のスピードでの劇場公開を模索しました。
日本の配給を任された私たちもその想いを共有し、通常のウィンドウとは異なる、できる限り早い劇場公開を願い、全国の映画館をはじめ各所へ相談をいたしました。そしてその結果、来る10月24日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか趣旨にご賛同いただいた全国の映画館で順次公開できる運びとなりました。ヴェネチア映画祭終了後の9月下旬に配給権を得てから約1カ月後の一般公開は、おそらく日本では過去にあまり例をみない短さであり、そのため、上映・宣伝素材の手配から字幕翻訳、宣伝展開に至るまで、通常の公開のように日本向けに十分な時間をかけて準備することが難しい状況です。本来であれば時間を費やして行うべき様々な確認の時間が短くなってしまうことで生じるリスクもあり、私たち配給会社としても大変悩ましくはありましたが、本作については、それでも公開までのスピードを優先するべきだとの結論に至りました。
製作者自らが「スクリーンで観る価値のある力強い作品」と自負する本作。映画館という特別な空間でのご鑑賞は、より作品に没入し、そこで語られる言葉と現実をより身近なものとして受け止める貴重な体験になると信じております。ぜひ劇場へ足を運んでいただき、今まさに続いているこの現実について、私たち自身に関わる問題として、今一度考えをめぐらせるきっかけにしていただけたらと願っております。
最後に、このような異例の形での上映を実現に向けて進められますことは、趣旨に賛同いただき、急なお願いにも関わらずご調整をいただいた全国の映画館の皆さまのご協力なしにはありえませんでした。また、上映を希望いただきながら、限られた調整期間のためにやむをえず断念された劇場の皆さまにも、心より感謝いたしております。
皆さまのお力添えに、この場をお借りして深く感謝申し上げます。
2026年10月1日
株式会社トランスフォーマー
■ストーリー
夜のテルアビブ、とある建物の屋上でイスラエル人ジャーナリストのユヴァル・アブラハームとラヘル・ショールは、イスラエル軍の兵士と諜報員24名に極秘インタビューを行った。ガザでの民間人殺害について、どのような指令を受けたのか。何をしたのか。ある者はデジタル化された遠隔攻撃を「事務作業のようなものだ」と語り、ある者は「食糧配給所に人が集まったところを撃った」と証言する。ひとりひとりの言葉から浮かび上がるのは、イスラエル国家が組織的に作り上げた、人間を人間としてみなさない<虐殺を可能にするシステム>だった。
■出演者
ユヴァル・アブラハーム
ラヘル・ショール
■スタッフ
監督:ユヴァル・アブラハーム&ラヘル・ショール
ⒸThe Guardian 2026


