ジョディ・フォスター主演のフレンチ・ミステリー『プライベート・ケース』(2026年7月24日公開 配給:スターキャットアルバトロス・フィルム)で監督を務めるレベッカ・ズロトヴスキの公式インタビューが公開となった。

  • ジョディ・フォスター主演『プライベート・ケース』で監督を務めるレベッカ・ズロトヴスキの公式インタビューが公開

    ジョディ・フォスター主演『プライベート・ケース』で監督を務めるレベッカ・ズロトヴスキの公式インタビューが公開

『プライベート・ケース』は、ジョディ・フォスターがフランス映画初主演を務めるミステリー×再婚コメディ。共演は、フランス映画界の名優ダニエル・オートゥイユ。

この度、監督を務めるレベッカ・ズロトヴスキの公式インタビューが公開となった。

――本作のアイディアはどのようにして生まれたのでしょうか。もともと精神分析や催眠術といったものにご興味があったのですか?

レベッカ・ズロトヴスキ 長年の友人であり、作家で、本作の共同脚本家としてクレジットされているアンヌ・ベレストが脚本を持ち込んでくれたのです。40ページほどの短いものでしたが、物語の大枠は本作と同じで、ジョディ・フォスター演じる精神分析医であるリリアン・シュタイナーの、自殺した女性患者をめぐって話が展開するものでした。早い段階で、この精神分析医の人物像がはっきりと見えてきました。彼女は患者の死に強い責任を感じ、その罪悪感から自殺という結論に疑問を抱き始める。こうして、リリアンの個人的なクライシス(重大な局面)と、真相解明が交差するものとなったのです。 本作には精神分析と催眠術が出てきますが、わたし自身は決して、詳しかったわけではありません。精神分析は効果があると思うのですが、催眠術は正直あまり信じてはいません。

――本作には、コメディからスリラーまでさまざまなジャンルがミックスされていて、シネフィル的な引用を感じます。

レベッカ・ズロトヴスキ 全部自分が好きなものを入れました(笑)。観客の方に楽しんでもらえるといいのですが。

――以前、「映画について語る映画が好きだ」とおっしゃっていましたが、本作にも様々なオマージュが取り入れられているのですか?

レベッカ・ズロトヴスキ 自分がシネフィルなのは隠しようがないですね。本作では40年代のハリウッド・コメディを念頭に置きました。とくにジョージ・キューカーの作品。またスリラーという点ではアルフレッド・ヒッチコックの映画。わたしが好きな映画というのは、映画を通して何かを表現する可能性について探究していると感じさせるものです。例えば、自分にとってはデヴィッド・リンチやフェデリコ・フェリーニの映画こそが、精神分析医の代わりのようなもので、ファンタズムや悪夢について、さまざまな可能性の扉を開いてくれて、それが映画によってなされることがとても面白いですね。だから控えめながらそれを自分の作品で実践してみたいと思うのです。いろいろな扉を開いて、「いやこれじゃない、あれでもない」」と探していくようなこと。それが自分にとっての映画という印象があります。

――初長編の『美しき棘』(2010)のときに、すでにジョディ・フォスターの起用を考えていたそうですね。ハリウッド映画の中で、彼女を特別な存在として見ていましたか?

レベッカ・ズロトヴスキ はい、映画好きな身として彼女の作品はたくさん観てきましたし、女性としてもロールモデルのように見ていました。もちろん後追いですが、特に彼女が思春期のときに演じたいくつかの映画には、とても感銘を受けました。たとえば『フォクシー・レディ』(1980)、『ホテル・ニューハンプシャー』(1984)などです。彼女がハリウッドで築いたのは、とても芯の強い女性像で、それは男性の視点だけで作られたものではない。彼女は少なからず"バダス(いかした女性)"を演じてきました。それで自分の中では飛び抜けた存在というイメージができたのです。思春期のフランス人の自分にとって、彼女はハリウッドの中でとても大事な存在でした。

――出会いの印象はどのようなものでしたか?

レベッカ・ズロトヴスキ 最初はZOOMミーティングでした。わたしはすごく緊張して、家族に「ぜったい静かにしてて! 掃除機をかけないで」 などと言ってナーバスになっていました(笑)。しかも最初はZOOMがうまく繋がらなかった(笑)。でも、そのあと繋がって、長いこと話をしました。それですぐに扉が開けたのです。そのあと対面したのは、すでにプロダクションが動き始めたときでした。

――ジョディのお母様がヨーロッパ映画が好きで、それで彼女自身も詳しくなったと聞きました。

レベッカ・ズロトヴスキ その通りです。西海岸の俳優として、ジョディはたぶんあの世代でもっとも文化的に教養があり、シネフィルだったのではないかと思います。フランスでは、その知的な雰囲気ゆえに彼女のことをニューヨーカーだと思っている人がいるほどです。

――彼女は監督として映画も制作していますが、一緒に仕事をしてどんなところがユニークでしたか?

レベッカ・ズロトヴスキ とてもやりやすかったのは、まさにジョディ自身、監督の経験があったからだと思います。映画に詳しいというだけでなく、演出のことを知り尽くしているし、スターとしてではなく、対等の立場で連帯感を持つことができました。彼女となら、キャラクタ ーについてだけではなく、そのシーン全体の演出についても話し合える。彼女は時が経つにつれ、俳優としての演技よりも演出に興味を持つようになったと言っていました。とても集中力があって、ひとつのアイディアを発展させていく様子に魅せられます。しばしばアメリカの俳優はキャラクターについてとても深堀りするものですが、彼女はわたし自身よりも前にキャラクターについてよく理解していて、そんな体験は初めてでした。最初に会ったとき、すでにわたしよりもうまくこの映画について説明してくれて、恐れ入ったものです。ジョディは俳優であり、監督であり、プロデューサーである。長年のそうした経験から培われた才覚だと思います。

――ただ本作の役柄は、あまり有能ではない精神科医で、ダメな母親でダメな祖母でもありますね。

レベッカ・ズロトヴスキ その通りです(笑)。

――いわばヒーローとは対極にあるジョディ・フォスターを演出したかったのでしょうか?

レベッカ・ズロトヴスキ そうですね。考えていたのは、いわば重大な局面にある主人公。しかも60代のキャリアのある女性が突然クライシスに陥る、それだけで興味深いと思いました。仕事との関係の中で、自分の脆さに気づく。わたし自身、そんな経験をしたことがありますが、そういうことを描いた作品はあまりないような気がするのです。特にそれをきっかけに人生のいろいろな要素について、再び疑問を持つ。恋愛関係や親子関係、セクシュアルな関係、親子関係、自身の欲望についてなど。それが彼女に変化をもたらす。最初はダメな精神科医が、最後は少しいい精神科医になるのです。

――個人的な印象を言えば、そういう元夫との関係性がとてもおおらかで、フランス映画らしいと思いました(笑)。

レベッカ・ズロトヴスキ そう言ってもらえて嬉しいです。まさにその軽さを狙ったので。ジョディとダニエル・オートゥイユ演じるカップル像は、この映画で誇りに思っているところです。ふたりはとても美しい。喜びに満ちていて、彼らを映すのはとても楽しかったです。

――その元夫役、ダニエル・オートゥイユのキャスティングについて教えてください。

レベッカ・ズロトヴスキ 実は、彼に辿り着くまでにとても時間が掛かりました。最初はジョディと同世代で釣り合いの取れる男性を探していたからです。でも、まったく見つからなかった。そして理解したのは、ジョディはこれまでいつもスクリーンでひとりだったので、相手役を想像するのが難しいということでした。ダニエルはジョディより13歳年上ですが、彼女と並んだとき、何かとてもしっくりくるものがありました。実際ふたりはすごくウマが合っていましたね。

――冒頭で使われるトーキング・ヘッズの曲『サイコ・キラー』についてお訊きしたいのですが、題名といい、アップテンポなノリといい、あまりに絶妙な選曲で、いきなり映画に引き摺り込まれました。以前から彼らのファンだったのですか?

レベッカ・ズロトヴスキ いいえ、世代的にわたしはちょっと後なので。このアイディアをくれたのは編集を手がけたジェラルディーヌ・マンジュノなんです。最初はもっと重重しい、バーナード・ハーマン的な音楽を考えていたのですが、彼女が「もう少し現代的でポップな、滑稽な感じのものがいいのではないか」と、この曲を教えてくれたのです。わたしも聴いてみてぴったりだと思いました。しか も、"Qu'est-ce que c'est ?"と、フランス語も歌詞に入っているので、完璧でした(笑)。

――本作には、前作『Les enfants des autres(原題/日本未公開)』(2022)に引き続き、カメオ出演で故フレデリック・ワイズマン(1930―2026)が出演しています。ワイズマン監督はあなたにとって、どのような存在でしたか?

レベッカ・ズロトヴスキ 彼のパリにある家はわたしの近所で、それで友だちになりました。彼は常にマージナルな立場にある人々を見つめ続けた、偉大な映画監督でありヒューマニストです。その眼差しはとても貴重でした。特に『法と秩序』(1969)『福祉』 (1975)といった作品が印象に残っています。実は、彼には次作でも医者を演じてもらう予定でした。彼をカメラに収めるのは大きな喜びでした。

■ストーリー
パリで精神分析医として成功を収めているアメリカ人医師のリリアン(ジョディ・フォスター)は、長年診てきた患者ポーラ(ヴィルジニー・エフィラ)の突然の死を知らされる。診察を通してそんな兆候はなく、その死が単なる事故ではなく殺人ではないかと疑い、自ら真相を突き止めようと決意する。一方で、状況に関係なく突然涙があふれ出る異変に悩まされるようになったリリアンは、眼科医の元夫ガブリエル(ダニエル・オートゥイユ)を訪ねる。涙の原因はわからなかったものの、事件の捜査を手伝ってもらうことになったリリアンは、元夫を相棒に従え益々大胆に探偵まがいの捜査に乗り出し、やがて危険な真実へと足を踏み込んでいく――。

■出演者
リリアン:ジョディ・フォスター
ガブリエル:ダニエル・オートゥイユ
ポーラ:ヴィルジニー・エフィラ
シモン:マチュー・アマルリック
ジュリアン:ヴァンサン・ラコスト
ヴァレリー:ルアナ・バイラミ
ピエール:ノーム・モルゲンステルン

■スタッフ
監督:レベッカ・ズロトヴスキ
脚本:アンヌ・ベレスト、レベッカ・ズロトヴスキ

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