小川のせせらぎや木々が運ぶそよ風など、多くの人は自然を感じることで心が落ち着いて気持ち良くなります。この感覚を少しでも人工物に囲まれた生活空間の中で再現したい――。そうした考えのもと、パナソニック エレクトリックワークス社(以下、パナソニックEW)が開発した次世代感満載の照明「バイオシャドー(BioSHADOW)」をショールームで見てきました。

  • ダウンライト型プロジェクター「バイオシャドー」のある部屋

    バイオシャドーの「木漏れ日」のある部屋で読書する、マイナビニュース・デジタルの林編集長

影の存在を強調する照明でリラックス

「人間は先天的に自然や森林を好ましく感じ、自然に触れると心地良くなる」という学説(仮説)を「バイオフィリア」と言います。都市に住んでいても部屋に観葉植物を置いたり、近所に公園の存在を求めたりするのは、そのためだという考え方です。

バイオシャドーはバイオフィリアの考えをベースに開発された、天井に埋め込んで利用するダウンライト型のプロジェクターです(2021年6月発売)。プロジェクターというと、映画やスライドの投映が思い浮かびますが、バイオシャドーはそうした用途向けではありません。

バイオシャドーのユニークなところは、光の投写によって影を作り出すことに着目している点です。基本的には業務向けの機器となり、オフィスビルやマンションのエントランス、クリニックなどの待合室、飲食店など、さまざまな場所での空間演出に利用されています。

  • 天井に埋め込まれたバイオシャドー

たとえば天窓から射し込む光に気が付くとき、光のそばには影があり、影の存在が光を強調しています。木漏れ日を見ようとすると、光だけでなく木や葉の影も見ています。このため、プロジェクターの照明で光だけでなく影も作れば、自然を感じやすい空間が演出できるというわけです。

バイオシャドーには、7種類のコンテンツ「木漏れ日」「水面」「滝」「海中」「流れ雲」「イエローナイフ オーロラ」「雨の日の波紋」をプリセット。ユーザーはリモコン操作で切り替えます。このうち、木漏れ日は同じパターンが並ぶと不自然に見えやすいため、2パターン用意しています。木漏れ日は白や薄いグレー、木目調の壁への投映がおすすめとのこと。また、海中やオーロラには光に色が付いています。

  • バイオシャドーで壁と床に「木漏れ日」を投映

  • 観葉植物にあえて重ねて照射。観葉植物によって生じる影が、バイオシャドーの生み出す影のリアリティを高めています

  • 飲食店のカウンターやレジ、ホテルのフロント、オフィスの受付などをイメージ。木漏れ日の影をよく見ると、2つのパターンが互い違いになっていることがわかります

光と影による幻想的な空間演出を体験

バイオシャドーを見学した「BSP-LAB」(東京都品川区)には、スポットライト型プロジェクターの「スペースプレーヤー(Space Player)」、バイオシャドーやスペースプレーヤーと組み合わせて使えるBluetoothスピーカーも展示されており、これらが融合した演出も体験できました。

スペースプレーヤーの発売は2014年。最初のモデルは明るさが1,000ルーメンでした。2016年には、明るさ2,000ルーメンのモデルが発売されています。ワイヤレススピーカーはバイオシャドーとほぼ同時の発売です。

  • バイオシャドーとスペースプレーヤーのおもな仕様

バイオシャドーは設置に電気工事が必要で、工務店や代理店を通じて購入することになります。スペースプレーヤーとワイヤレススピーカーは配線ダクトに取り付けられるので、配線ダクトがあれば電気工事は不要です。

  • スペースプレーヤーは演出に合わせてヘッドの向きを調整可能(手動)。照射位置の正面に配置できなくても歪みのない画像が得られるように、台形補正機能を備えています

  • ショールーム天井の一角。スポットライト型の白いスペースプレーヤーの左に、黒いバイオシャドー×2台が並んでいます

先に発売されたスペースプレーヤーは本体が露出しますが、バイオシャドーは本体を隠せる天井埋め込み型。プロジェクターとしての光の明るさは、スペースプレーヤーのほうがバイオシャドーよりも2~4倍以上明るく、室内でプロジェクションマッピングのような使い方もできます。

スペースプレーヤーの展示例もいくつか見てみましょう。スペースプレーヤーには購入者が無料で利用可能な専用のコンテンツが50種類くらいあります。利用するときは、WebページからダウンロードしてSDカード経由でセットします。

【動画】スペースプレーヤーで壁際のテーブルの上に照射している様子。手前の砂浜には、本物の砂を敷き詰めています。壁から波が打ち寄せているような不思議な雰囲気に目が引かれ、想像力をかき立てるコンテンツです

【動画】スペースプレーヤーのコンテンツ「草原の中の少女」。少女の白黒ポスターにカラー映像が重なるように、斜め上から台形補正で映し出しています

【動画】スペースプレーヤーのコンテンツ「鯉の誘導」。床を照らしている「円」の左側2つに1台、右側の円(3つ)にもう1台、計2台のスペースプレーヤーを使っています。通路などで利用すれば、通行人は鯉の進むほうへ自然に足を向けます。逆走する人や関係ない通路に入っていく人はあまりいません

映像に合わせた音を天井からサラウンド再生

ワイヤレススピーカーは映像を流すだけの状態よりも、映像に合う音が一緒に流れたほうが自然を再現しやすいことから、複数台で音の広がりを表現する道具として製品化されました。パナソニックのオーディオ技術が盛り込まれ、ライティング機器と同じように天井に取り付けて使います。音源はバイオシャドーとなり、Bluetoothでワイヤレス接続します。1台のバイオシャドー(親機)に対して、ワイヤレススピーカー×8台を1グループとした最大32台(4グループ)まで増設できます。

1台ごとの間隔は30cm以上、5m以内が推奨されていて、たとえば等間隔に8台を設置して利用すると、風の音や水の音、鳥の声などが部屋のどこにいてもサラウンドで自然に聞こえるといった環境が実現します。

  • ツマミが付いていて、「GR1」「GR2」「子親」「音声」「左右」が切り替えられます。音声はステレオにも対応

  • バイオシャドー×4台とワイヤレススピーカーを使った通路演出。床に映った「波紋」が適度にゆらぎ、映像に合わせて「ぽちゃん、ぽちゃん」としずくの音がします

ワイヤレススピーカーは最近増えてきた「GX-53-1」の口金タイプに対応。GX-53-1はJIS規格なので、パナソニックを含めた各社から製品が出ています。

  • GX-53-1のソケット部。ここに照明器具やワイヤレススピーカーをカチッとはめ込みます

なお、ワイヤレススピーカーもバイオシャドーと同様にAV観賞用ではなく、重低音で臨場感を楽しむようなコンテンツには向いていません。しかし、ワイヤレス送信機をテレビやオーディオプレーヤーのイヤホンジャックにつなげば、それらの機器を親機として設定できます。個人ユーザーがリビングに導入して高齢者が手元スピーカー代わりに使ったり、スピーカーの置き場所を確保しづらいキッチンの天井に設置したりといった使い方も便利そうです。

幻想的過ぎる!鏡張りの通路が楽し過ぎ

最後に、ショールームで体験できたこのほかのコンテンツを簡単に紹介します。

圧巻だったのは左右の壁を鏡張りにした通路。バイオシャドーは奥の壁への照射で2台、床への照射で3台、合計5台を利用しています。鏡を上手に利用して幻想的な空間が広がり、通路の先の光景に期待感が高まります。アミューズメント施設や飲食店の入り口などにあると楽しそうです。

  • 鏡張りの通路に立つ筆者。鏡によって狭い空間でも広く見えます

【動画】鏡張りの通路で映像を流す様子。最初は木漏れ日。0:30くらいから「水面(みなも)」、0:55くらいから「流れ雲」、1:20くらいから「オーロラ」、1:45くらいからスペースプレーヤーでこの施設用に作られた森の中のイメージ、2:20くらから幻想的な花が流れるイメージ

バイオシャドーをより理解するための、三方を白い壁に囲まれた部屋もあります。ここではバイオシャドーのレンズと壁までの距離が三方向で変えられていて、正面が120cm、向かって左が100cm、右は80cmに設定。

プロジェクターなので、壁(投映面)から離れるほど映像は大きく暗くなり、近いと小さく明るくなります。また、映像が小さくなると映像と映像のすき間が大きくなります。そうしたところを見ながら、どれが一番しっくりくるかを確認です。

  • これは「滝」。じっと見ていると吸い込まれていきそうに……

  • 同じ場所でモネの「散歩、日傘をさす女」。実物大(1,000×810mm)を超えるサイズなうえに、人物が3Dっぽく背景から浮き上がって揺れるので、ちょっと怖い……。もしゴッホの「星月夜」があったら見てみたかった!

影の付く立体感のあるロゴにスペースプレーヤーでマッピングする例も。リアルな影と映像の影が合成された違和感はやがて興味に変わって、ちゃんと見て確かめたくなります。会社のエントランスに設置して、社名の前で立ち止まって見てもらえるのはメリットでしょう。費用対効果を考えても良い投資になりそうです。

  • リアルなロゴとの組み合わせで演出

今回見学した「BSP-LAB」は個人には公開していないのが残念。建築関係者や工務店、デザイナーなどが予約して見学するショールームとなっています。Webサイトから予約すると基本的にアテンドが付いて、実物を体感しながら1時間半ほどの説明が受けられます。興味を感じた法人の担当者は一度体験してビジネスの可能性を広げてみてはいかがでしょうか。