パナソニック エレクトリックワークス社(以下、パナソニックEW)は12月2日、電気自動車(以下、EV)のバッテリーと自宅内の蓄電池を同時に充放電でき、EVに蓄えた電力を家庭でも利用可能な住宅用V2H蓄電システム「eneplat(エネプラット)」を発表しました。受注開始日は2023年2月21日です。

  • eneplatの導入イメージ。太陽光発電システムが前提となります

eneplatは、自宅の太陽光パネルで発電した電気を、家庭で効率よく自家消費するシステム。EVの普及や電気代の高騰を背景に、太陽光発電した電気を売電せず、なるべく家庭内で利用する「自家消費」の需要に応えるものです。一般家庭における電力の自給自足を進めます。

  • eneplatの概念図

システムを構成する機器は、パワーステーション、蓄電用コンバーター、蓄電池ユニット、EVのバッテリーに蓄えた電力を家庭へ供給するV2H(Vehicle to Home)スタンドです。このうちパワーステーションはeneplatに必須となりますが、ほかの機器は目的や予算に応じて個別に導入でき、後からの増設にも対応します。

パワーステーション「LJRE31B」(出力6.0kW)の希望小売価格は968,000円(工事費別、以下同)。V2Hスタンド「LJV1671B」(出力6.0kW)は、エアコン室外機1台分よりも小さな床面積に置けるコンパクトサイズで屋外工事のみ。価格は1,760,000円です。

蓄電用コンバーターと蓄電池ユニットはセットでの導入となり、蓄電用コンバーター「LJDB151B」「LJDC301B」は407,000円となります。

  • パワーステーションと蓄電用コンバーター

蓄電池ユニットは3タイプあり、最大2つまで設置可能。同じ製品である必要はなく、屋内向けと屋外向けを組み合わせても大丈夫。出力3.5kWhの屋内向け「LJB1335」は1,144,000円、出力6.7kWhの屋内向け「LJB1367」は2,090,000円、出力6.3kWhの屋外向け「LJB2363」は2,035,000円となります。LJB1367のみ、受注開始日が2023年夏を予定しています。

基本的には戸建て住宅用となり、すでに太陽光発電パネルを設置している住宅にも導入できます。EVを所有していない家庭の場合、まずはパワーステーション、蓄電用コンバーター、蓄電池ユニットという構成で導入するケースが多いでしょう。

  • 屋外向けの蓄電池ユニット「LJB2363」

  • V2H(Vehicle to Home)スタンドからEVを充電。V2Hスタンドは屋外用となり、屋根がある場所としてもガレージなどへの設置を想定しています。底面積が小さい点がメリットです

また、2016年に発売したスマートHEMS(Home Energy Management System)の「AiSEG2(アイセグ2)」が、2023年夏にバージョンアップ。「AIソーラーチャージPlus」を搭載し、eneplatに対応します。

AiSEG2は宅内の家電や住宅設備など多くの電化製品と連携し、それらをコントロールするデバイス。7型モニター付き「MKN713」が101,420円、モニターなしの「MKN704」と「MKN705」が50,600円となっています。

  • AiSEG2(アイセグ2)。写真は7型モニター付き「MKN713」

パナソニックEWの川村柳大郎氏は、「eneplatはAiSEG2と連携することによって、環境性、レジリエンス、アップデートという3つの価値を提供。太陽電池で作った電力を蓄電システムやEVに同時に溜めたり、同時に使用したり、EVのバッテリーを家庭でも利用できたりすることが、ほかにはないeneplatの強みです」とアピールします。

  • パナソニック エレクトリックワークス社 エナジーシステム事業部 マーケティングセンター 商品営業企画部 川村柳大郎氏

  • 昼間の太陽光発電によって、EVと蓄電池を同時に充電

AiSEG2に加わるAIソーラーチャージPlus機能は、eneplatの蓄電池制御を高度化するもの。7型モニター付きのMKN713では、EVと蓄電池の充放電状態や蓄電残量、電気の流れなどのリアルタイム表示も可能です。

例えば従来の「AIソーラーチャージ」では、天気予報による発電量予測から蓄電池の停電時容量を計画して、固定の容量を確保します。一方、新しいAIソーラーチャージPlusでは、蓄電池の停電時容量が可変になります。

日射量予報による発電量予測も可能で、日々の電力使用量と精密な発電量予測から翌日の余剰電力を導き出します。これにより、余剰電力が多い場合は放電(売電)し、少ない場合は放電せずに待機。太陽光発電の電力が余っている場合に売電せず、自家消費できる割合が増えます。

特に悪天候の予測があると自動的にEVや蓄電池を満充電にし、エコキュートの自動沸き上げ機能を停止するといった制御も行います。もし停電しても4日間ほどは停電前と同じ電力消費の生活ができ、ライフラインとしての価値も高まっているとのこと。

  • パナソニックのシミュレーションから。eneplatとAiSEG2を同時に利用すると、自家発電した電力の自家消費率が大きく向上。年間で約1トンのCO2削減効果が見込めるとしています

  • 悪天候の予測に自動的に備えるので、突然の停電でも慌てる心配がありません

パナソニックEWの試算では、太陽光発電の自家消費率が約50%の家庭の場合、AiSEG2とV2Hスタンドの導入により、自家消費率は約90%にまで向上するそうです。これはCO2削減量で見ると、年間で約1.2トンから約2.2トンにまで拡大するイメージとなります。

パナソニックEWの中嶋慎一郎氏は、「eneplatは脱炭素に備える暮らしを意識して、まずは最小限から導入し、少しずつ拡張できます。V2H蓄電システムは、2025年度に5万システムの受注を目指しています」と意気込みを語りました。

  • パナソニック エレクトリックワークス社 エナジーシステム事業部 システム機器BU エネルギーシステムSBU 中嶋慎一郎氏

  • 生活ステージの移り変わりにあわせて、eneplatのシステムをアップデートできます

なお、eneplatは2022年12月5日~7日開催「スマートハウスEXPO」のパナソニックブースや、12月7日~9日開催「エコプロ2022」の東京都企画政策局(東京ベイeSGプロジェクト)ブースに出展しています。どちらも東京ビッグサイトでの開催なので、気になる人は足を運んでみてはいかがでしょうか。