半導体市場動向調査会社である仏Yole Développementによると、2020年のMEMS市場は、前年比2.5%増の121億ドルであったが、2026年まで年平均成長率7.2%で成長し、182億ドル規模にまで成長するという。2021年のMEMS市場は、前年比11%増の134億ドルと予測している。

MEMSの最終用途としては、消費者向けが全体の6割を占めており、その市場規模は2020年に71.3億ドルであったという。また、今後は年平均7.9%で成長し、2026年には112.7億ドルに達するとYoleでは予測している。2番目に大きな市場は車載向けで、2020年は20.3億ドルとしている。今後、年平均成長率5.8%で成長し、2026年は28.6億ドルに到達するとしている。また、市場規模としては小さいものの、年平均成長率が16.9%ともっとも高いのは通信インフラで、2020年の0.6億ドルから2026年には1.4億ドルへと成長するとしている。

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    図1 2020年および2026年におけるMEMSの最終用途別売上高 (出所:Yole Développement)

デバイス別で見ると、市場規模として大きいのはRF MEMS、MEMS慣性センサ、MEMSマイクロフォンだが、それらの今後の成長率は低く、一方でMEMS OIS(光学式の手ぶれ補正センサ)やMEMSマイクロスピーカーなどは、現在の市場規模は小さいが、今後の成長率が高くなると予測している。

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    図2 デバイス別に見たMEMSの2020~2026年の年平均成長率と市場規模の関係性 (出所:Yole Développement)

また、技術傾向としては、MEMS センサとアクチュエータについては、常にサイズの縮小、コストの削減、そしてパフォーマンスの向上に関心が寄せられており、異種機能の統合が鍵となるシステム化に移行しているとする。自動車に圧力センサ事業を展開しているMEMSサプライヤにとって警戒しないといけない点は、 ICE(Internal Combustion Engine:内燃エンジン)車両の減少であるとYoleは指摘している。さらに、MEMSセンサのサプライヤは、コモディティ化から抜け出し、バリューチェーンを向上させようとして、MEMSセンサとAI、ML(マシンラーニング)、DL(ディープラーニング)などを組み合わせたアプリケーション向けにあらたな成長機会を得ようとしているという。

MEMSサプライヤ売上高ランキングトップ30、日本企業は7社がランクイン

2020年のMEMSメーカー(ファウンドリは除外)売上高ランキングトップ30社をみると、売上高が10億ドルを超えるのは独Robert Boschと米Broadcomの2社だけで、頭1つ抜けた存在となっている。トップ30社中、日本企業は、以下の通り7社がランクインしている。

  • 9位:TDK(3.93億ドル)
  • 11位:キヤノン(2.64億ドル)
  • 15位:パナソニック(2.41億ドル)
  • 17位:旭化成エレクトロニクス(AKM)(2.20億ドル)
  • 18位:村田製作所(2.16億ドル)
  • 25位:アルプスアルパイン(1.14億ドル)
  • 28位:エプソン(0.82億ドル)

これら日本企業の売上高合計は15.3億ドルだが、世界トップのBosch 1社の売上高にも満たない。日本のMEMSサプライヤは、パワー半導体同様、弱小企業が多数あり、買収により大きくなることもなく世界に向けて存在感を示せてはいない。

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    図3 2020年世界MEMSメーカー売上高ランキングトップ30社 (Yole Développement)

新型コロナで各社の業績に変化が

Yoleの半導体・MEMSアナリストであるDimitrios Damianos氏によると「新型コロナウィルスのパンデミックに伴う都市封鎖や米中貿易戦争による地政学的影響は半導体産業のサプライチェーンに大変大きな影響を与えた。そのため、トレンドを読んだ適切な戦略を取った企業は利益を得ることに成功し、そうでなかった企業との明暗を分けることとなり、MEMS市場の売上高ランキングに大きな変化をもたらした」と述べている。

具体的には、新型コロナの予防に向けたサーマルイメージング/センシング、圧力センサなどの製品を手掛ける企業が売り上げを伸ばしたとする。また、BroadcomやQorvoなどは、5G向けRF MEMSが好調であったという。

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    図4 2020年のMEMS売上高ランキングトップ30社 (出所:Yole Développement)

MEMSファウンドリ売上高ランキングの第3位にソニー、13位にローム

MEMSは半導体同様のIDM、ファブレス、ファウンドリの3形態の企業が存在している。そのため、MEMSファウンドリの存在も欠かせないものとなっている。

MEMSファウンドリトップはスウェーデンのSilex Microsystems、2位はTeledyne DALSA、そして3位に日本のソニーが入っている。ソニーは、ソニーセミコンダクタソリューションズの子会社ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング鹿児島工場(鹿児島県霧島市)のレガシーファブで従来よりMEMSファウンドリ事業を行っている。4位にTSMC、5位にX-Fabといった半導体ファウンドリが入っている点も注目される。また、日本勢としては、ソニーのほか、ロームが13位にランクインしている。

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    図5 2020年のMEMSファウンドリ企業売上高ランキング (出所:Yole Développement)