ヴィッツの「次世代工場の安全化と効率化を実現するIoT、AIソリューション(「SF Twin」)」

組込みソフトウェアの研究・設計・開発、リアルタイムオペレーティングシステムの研究開発、ITソリューションソフトウェアの設計を行うヴィッツでは、「次世代工場の安全化と効率化を実現するIoT、AIソリューション「SF Twin」」によって、工場の安全化、高度自動化、効率化を目指している。監視画像センサや運搬ロボットなどの情報を集め、データ解析を行い、AIで効率化の提案を行いたいという。

  • 「SF Twin」の目的

完成までにはいくつか技術を育成しなければならないが、その点については、これから行うという。

現在は、優勝の副賞であるデルのサーバに、仮想の工場を構築している途中で、その中でロボットの制御と最適化を3月末までに行うという。

  • 「SF Twin」の進捗

CDISC-SDTM Blockchain Teamの「ブロックチェーン技術を用いた臨床データの共有プラットフォーム」

同チームは、複数の製薬会社、CRO、システム会社から結成した8名のチーム。本業は臨床試験に関するデータマネージメント、統計解析などを行っている。臨床データはデータベース化されており、それらを解析することでさまざまな知見を得られるというが、2次利用などは個人情報保護の観点で制約が多いという。そこで、データのアクセス権ややり取りをブロックチェーンで管理し、患者がデータの行き先を見られるようにし、提供拒否のほか、報酬を受け取る仕組みを構築するシステムを構築しようとしている。

  • CDISC-SDTM Blockchain Teamの目指すゴール

同チームはこれまで、臨床データ共有におけるブロックチェーン適応案の検討や関連技術の調査を行っているという。

メンターからIPFS(InterPlanetary File System)とブロックチェーンを組み合わせた仕組みの提案があり、現在、この仕組みが使えるかどうかの調査を進めているという。

  • 見本として使えそうな仕組み

ユーネットランスの「最適運行ダイヤの自動作成システムによる輸送業全体の効率化 」

貨物輸送を行っているユーネットランス の「最適運行ダイヤの自動作成システムによる輸送業全体の効率化 」は、運送業界の過度な残業やドライバー不足の解消に向け、AIを活用し物流設計段階で最適運行ダイヤを他社も巻き込んで作成し、効率化を図ろうというもの。完成後は他社にも提供し、30%の効率化を目指すという。

同社はこれまで、ダイヤ作成に必要な情報は何か、どのようなシチュエーションでAIを投入するかを検討したという。

また、トラックにどのようにパレットを積むか、車載イメージを作成することをシミュレーションできる環境を整えているという。

  • 現在の検討事項とAI 想定範囲

まずは、検証ツールを構築・試用し、欲しいデータが作成できるかを検証。AIの想定範囲としては、最適なパレタイズ・車載イメージ、どれだけ搭載可能かを判断させるという。

イグスの「AIによるデータ精度向上及び災害対策サービス」

ケーブル保護管、可動ケーブル、樹脂ベアリングなどの樹脂製の機械部品の開発・製造・販売を行うイグスの課題は、英語で記載された製品名などを日本語する際、文字化け、誤字や脱字が発生している点。また、日本企業においても、社名、住所、郵便番号の間違いが発生しており、こういった文字のチェックや修正は1日あたり500-1000件あり、これをゼロにすることが目標。そこで、AIを活用したデータミスの洗い出し、チェック、自動修正のシステムの開発を進めている。

同社は、1年間という期限が決まっているため、工数削減が見込める部分からデータ変換に取り組むという。方針としては、Pythonによる自社開発を実施し、まずは変換CSVとのマッチングのあとに更新SQLを自動生成するという。まだ、AIを利用するところまではいっていないが、結果をもとに機能拡張を繰り返すサイクルを回していくとした。

  • イグスの中間報告

アズワンの「適正在庫AIモデル」

研究者向けの理化学機器専門商社のアズワンは、AIを活用して多品種、少量出荷のクイックデリバリーを実現することを考え、具体的には、在庫の推移、入出庫のリードタイム、受注予測をグラフ化。このグラフと最適な状態のグラフをAIで比較し、最適な状態にするための方策をAIに提示してもらうというプロジェクトを実施している。

同社ではまずは、受注予測モデルの精緻化に取り組んだという。新たな変数として、インタネットのページのアクセス数や検索ワード推移、外部の経済指標を使って、予測モデルを作ろうとしており、今後は、変数と受注量の関連性調査AIモデルの作成し、有用な変数をAIで見つけ出すことに取り組むという。

  • 今までの作業とこれからの作業

同社のインターネット経由の受注量は数%しかないが、残りの受注額にインターネットのアクセスが相関しているという。

  • 変数候補

水上の「可視化して将来のビジネス基盤を再度見直すためのBig Data分析を用いた営業活動指針のためのAIサービス」

金物店への卸や住宅や建材メーカヘ製品や部品の供給を行っている水上は、スマーフォンGPSによる行動データを収集して営業活動の可視化。得意先データの取集・分析などをして、ルートの最適化、効率化を実現する予定だったが、現在は、音声マイニングによる受注電話対応の自動化に変更したという。

当初はA社のマイニング技術を利用していたが、結果が思わしくなく、IBMのWatson Text to Speechに変更し、現在、手ごたえを感じているという。

  • IBMのWatson Text to Speechでの検証。赤字が正しい。

今後は他のサービスも試し、精度を確認していくという。

ピーチ・ジョンの「社内AIポータル構想」

女性向け下着を主力にEC、店舗を展開するピーチ・ジョンは、勘、経験、度胸といった古い意思決定ではなく、AIを駆使してエビデンスベースで意思決定できるシステムを目指す。社員向けのAIポータルを構築し、SaaSサービスとして利用できるようにして、EC受注予測、店舗受注予測、在庫消費予測、顧客行動分析、トレンド分析に役立てようというものだ。

  • プロジェクトの概要

まず、社員が簡単にAI分析できる社内AIポータルサイトを構築し、在庫数量の最適化から始めるという。これができれば、他と分析にも応用できるとという。

現在は販売実績、倉庫の在庫、検索データのトレンド分析データの収集しているほか、分析手法の調査を行っているという。

平井精密工業「歩留まり向上のための製造工程AI解析サービス」

金属エッチング加工を行っている平井精密工業は、製造工場における歩留まり向上を図るシステム構築を進めている。

このシステムは、現在は紙ベースで管理している製造条件、パラメータなどの情報をIoTで収集し、歩留まりとの相関関係をAIで分析し、不良の種類・歩留まりと製造条件・パラメータとの相関関係を分析し、歩留まり向上に寄与する製造条件・パラメータを見つけ出すものだ。

  • プロジェクトの概要

現状は、装置の温度変化、データのターゲットを絞って収集し、整理方法をメンターからアドバイスしてもらいながら進めているが、歩留まりとの相関関係はみつけられていないという。ただ、今後は時間をかけても、この調査を進めていくという。ただ、データの取得方法がないものもあり、今後はデータ取得のためのハードウェアの設置も考えていくという。

  • 奈良先端科学技術大学院大学 博士研究員 および dTosh 代表取締役社長 平尾俊貴氏

発表会の最後には、メンターを務める奈良先端科学技術大学院大学 博士研究員 および dTosh 代表取締役社長 平尾俊貴氏が総評を述べ、「3カ月という短い期間ですばらしい進展を得られている。本選時と現在のプロジェクトの方針が異なっているケースもあるが、これはいいことだと思う。DXは、AIを使うことと同等のように思われているが、AIはただの手段なので、まずは、どういった課題を解決するのか、そのためにどういった方向に向かうのかというゴールを決めて、そのアプローチとしてどこでAIを使うのかというプロセスになる。次の3カ月は実証実験のプロセスとなり、仮説を立てながら検証していくことになる。どんどんプロトタイプを作って前に進んでいけるように、デル・テクノロジーさんと一緒にサポートしていきたい」と語った。