東証の適時開示情報を基に経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)について、ストライク(M&A Online)が集計したところ、IT・ソフトウエア業界の2020年12月のM&A発表件数は12件で、12月としては2011年以降の10年間では2018年(15件)、2013年(13件)に次いで、3番目(2019年12月も12件)となった。

一方、取引金額は約100億円で、12月としては2011年以降の10年間では2018年(約1441億円)、2013年(約716億円)に次ぐ3番目となった。

12月は大型の案件はなかったもののコロナ禍の中、IT・ソフトウエア業界の事業強化の流れを受け、件数が高水準だったのに加え、金額非公表が3件と少なかったことなどから、金額が100億円を突破した。

  • IT・ソフトウエア業界 M&Aの推移(上が件数、下が金額)

金額トップはジャパンシステムに対するTOBの71億円

取引金額のトップはジャパンシステムが、独立系投資会社のロングリーチグループ傘下のJSLホールディングス合同会社(東京都千代田区)が同社に対して完全子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した案件で、買付代金は最大71億1717万円。

ジャパンシステムは米ITサービス企業DXCの子会社で、システム構築・運用を主力とする。現在、DXCのグループ企業(DXC US)がジャパンシステムの株式53.67%を保有する。ロングリーチグループはTOBを通じて、DXC US以外の株主が保有する46.33%を買い付ける。そのうえで、ジャパンシステムがDXC USの全保有株式について自己株取得を実施する。取引金額の2番目はLITALICOが、障害福祉施設向けソフトウエアを提供する福祉ソフト(長崎県佐世保市)の全株式を取得し子会社化することを決めた案件で、取得金額は10億5000万円。

福祉ソフトは障害福祉施設で導入数トップを誇る公費請求支援ソフト「かんたん請求ソフト」のほか、介護福祉施設向けにも同種の「かんたん介護ソフト」を持ち、いずれもSaaS(サービスとしてのソフトウエア)として展開している。

LITALICOは障害者の就労支援サービスを主力とする。福祉ソフトを傘下に取り込むことで、福祉関連の経営支援サービスを強化する。

取引金額の3番目はメドレーが、電子カルテシステム開発のパシフィックシステム(高知県宿毛市)の株式80%を取得し子会社化することを決めた案件で、取得金額は8億2300万円。

メドレーは医療ヘルスケア分野の人材不足や地域偏在の改善、医療機関の業務効率向上などを目指す各種のプラットフォーム事業を展開している。パシフィックシステムを傘下に取り込み、医療ヘルスケア分野でのデジタル活用を加速する。12月はこのほかに取引金額10億円未満の案件が6件あった。