照明システム向けのPower over Ethernet

ケーブルを引き回し敷設するのは、どんな建築プロジェクトでも常に大きな費用がかかるものであり、ビルの照明のメイン電源配線を安全かつ規格に準拠して敷設することも例外ではありません。しかし、LEDベースの照明への移行とPower over Ethernet(PoE)の利用可能性により、1本のケーブルを電源とコネクティビティの両方に使用できるようになり、状況は大きく変わりました。

PoE 2規格(802.3bt)は、アプリケーションに最大90Wの電力を供給する能力を備えており、LEDベースの照明には十分です。この実際の例には、IEEE 802.3bt準拠の統合コントローラを使用し、イーサネットケーブルを介して電源供給する60Wのコネクテッド照明ソリューションがあります。このソリューションは最大2本のLEDストリングに対応可能で、 オン・セミコンダクターのハイサイド検出を備えた定電流降圧型コントローラ「FL7760」を組み込んだLEDチャンネルを2つ装備しています。

この構成によって、使用周波数が1.3MHzのPWM信号で0~100%の調光制御ができます。輝度制御はRF対応のハーベスティングソリューションでの使用に適した、「RSL10」などのBluetooth Low Energy無線によって行います。RSL10の電源電圧は単純な高電圧LDOによって供給されています。

このソリューションによって90%より高い効率を達成でき、PoEコントローラから得られるエネルギーのほとんどすべてを光に変換し、最大6,000ルーメンの光を放出する設計が可能になります。このような性能は電力需要を抑えながらスマート照明ソリューションを提供するという一般的な要求に十分適合しています。

コネクテッド照明プラットフォーム

オン・セミコンダクターは、産業用LED照明ソリューション向けのモジュール方式の開発キットであるコネクテッド照明プラットフォームを開発しました。設定可能なデュアルステージのプラットフォームは最大70 Wの電力を供給し、選択した電源モジュールに応じて、AC電源またはDC電源から、あるいはPoEを介して、7,000ルーメンの光を放出することが可能です。このシステムは最大4本のLEDストリングに対応しており、各LEDドライバボードには各LEDストリングに対して2個のFL7760ドライバを搭載し、1ストリングあたり27Wを供給できます。

  • コネクテッド照明プラットフォーム

    図4:コネクテッド照明プラットフォーム

RSL10システムインパッケージ(RSL10 SIP)をベースとした接続モジュールにより、オン/オフ、調光、プログラミングなど、低電力ワイヤレスによる制御を選択できます。提供されているCMSIS-packを使用することにより、多くの利用可能なユースケースを活用し、機能を追加して照明アプリケーションをカスタマイズできます。また、RSL10 FOTAモバイルアプリ(Google PlayとApple iOSで入手可能)によりワイヤレスファームウェアのアップグレードにも対応でき、RSL10 Sense and Controlアプリによりモバイル機器から環境センサとアクチュエータを制御およびモニタできます。

まとめ

コネクテッド照明は、産業機器メーカによるエネルギー消費量の削減の役に立つことで、モノのインターネット(IoT)において大きな可能性を秘めています。コネクテッド照明プラットフォームは、最も要件が厳しいLED照明アプリケーションに必要なあらゆる技術の最高のものを組み合わせた、最適でコスト効率の高い設計です。

著者プロフィール

ブルーノ・デーミアン(Bruno Damien)
ON Semiconductor
EMEA地域担当
IoTストラテジックマーケティング・ディレクター