2020年下期にNORフラッシュメモリ価格は下落へ

NORフラッシュメモリは数多くの電子機器に組み込まれ活用されている。その顧客企業の多くは、新型コロナウイルスによりサプライチェーンに混乱が引き起こされることを懸念し、2020年上期に在庫の積み増しを図ってきた。

そのため、2020年上期のNORフラッシュメモリの価格は第1四半期に前四半期比約5%の増加、第2四半期も同10~20%の増加が見込まれるなど、上昇傾向が続いている。

また、各国政府も徐々に経済活動の再開を進めているが、エンドユーザーの消費需要までは回復するに至っておらず、その結果、市場調査会社TrendForceでは、NORの価格は2020年下期以降、下落に転じると予測している。 TrendForceの調査によると、NORとSLC(Single Level Cell)NANDの価格の間には歴史的に高度な相関がある事がわかっている。

SLC NANDの需給について見ると、4月以降、家電の需要が弱まっている一方、主要な消費先であるネットワーキングデバイス市場は、中国での5Gインフラストラクチャ構築に後押しされ、関連分野向け注文は第3四半期末まで拡大する見通しだという。だが、新型コロナウイルスのパンデミックにより、欧州と北米の5Gインフラ構築は遅延が生じているいるほか、米国政府はHuaweiに対する輸出規制を強化することを発表し、6月5日以降、中FiberHome Telecommunication Technologiesをエンティティリストに追加した。FiberHomeの当面の運用は、既存の在庫で対応できるが、この制裁措置により、2020年第4四半期に予想される中国の5Gインフラス構築には不確実性がもたらされることとなり、TrendForceでは、こうした動きを踏まえ、第3四半期のSLC NAND価格はわずかに下落し、第4四半期も下落が続くと予測しており、これに併せてNORの価格も同様の傾向を示すとの見通しを示している。

  • NORフラッシュ

    NORの2020年四半期ごとの平均販売価格の前四半期増減率 (Eは推定、Fは予測)(出所:TrendForce)

NORの用途がワイヤレスイヤフォンやAMOLEDへ拡大

製造技術の側面からNORを見ると、大容量品向けプロセスとしては、従来の65nmから50nmクラスへと微細化が進んでいるが、それと併せるかのように適用範囲の拡大も進んでおり、Bluetoothを用いたTWS(完全ワイヤレスステレオ)イヤフォンでの採用数が拡大している。例えばAppleのAirPodsでは128MB品が採用されているほか、他社の製品でも16MB~64MB品が活用されるようになっている。

また、IoT関連のハードウェアも、NOR市場を活性化させるものと期待されている。ただし、多くのIoT機器は小型で機能が限られた組込機器という範疇のものであり、その容量も8/16/32MB程度となっている。さらに、近年、重要なアプリケーションとして見られるようになってきたのが有機EL(AMOLED)パネルで、パネルのムラ(不均一な画面の照明)を補正し、均一性を保証するためのプログラムを4/8MB程度のNORに格納するために使用されるようになってきている。

トップサプライヤは台湾、中GigaDeviceが猛追

グローバルなマーケットシェアを見ると、トップは台湾のMacronix International(MXIC)で、プロセステクノロジーでもトップを走っている。同社は現在、55nmプロセスで月産約2万枚規模で生産を行っており、そのポートフォリオも包括的である。現在、同社は5G基地局の建設に関連する需要からの利益を得ることを目指しており、大容量が必要とされるとして512MB品を新たに開発するなど、独自の取り組みを進めている。

シェア2位も台湾勢のWindbondで、現在、58nmおよび90nmプロセスを用いて月間約1万8000枚の規模で生産を行っているという。そして同3位は中国に拠点を有するGigaDevice。近年、生産能力と製品品質の向上に注力しており、現在は研究開発も積極的に進め、Apple AirPods向けNORの受注を獲得するまでになっている。同社の生産能力は月産9000枚とされているが、製造は中国内のファウンドリであるSMICとHuali Microelectronics Corporation(HLMC)が担当しているという。また、GigaDeviceは中国のDRAMメーカーCXMTの過半数株主であることは注目に値するもので、これはGigaDeviceが現在、DRAMとNORの両方の研究開発を実施する能力を有していることを示すもので、今後の中国半導体産業の発展において重要な役割を果たす可能性があることが予想されるという。

  • NOR

    NORサプライヤのマーケットシェアランキング (出所:TrendForce)