DMG森精機とNTTコミュニケーションズ(NTT Com)は5月21日、ローカル5Gを使用して無人搬送車に人協働ロボットを搭載した自律走行型ロボット(AGV)の遠隔操作などを行う共同実験を開始すると発表した。両社は今回の実験を通じて、AGV高性能化の実現可能性を検討する。

  • ローカル5G利用によるメリット

ローカル5Gは超高速・多数同時接続可能・低遅延などの特性をもち、AGVに関しては、高精細な位置情報・詳細な稼働情報取得による自動走行の精度向上や安全性向上、エッジコンピューティング側でのデータ処理負荷軽減による車体の軽量化など、高性能化への寄与への期待があるという。

DMG森精機は、ユーザー企業が工作機械を長年使用できるよう、計測、稼働監視、センシング機能など多様なデジタルソリューションを提供してきた。 特に近年は、変種変量・多品種少量生産の実現、生産性向上、スキルの標準化など、ユーザー企業の生産現場が求めるニーズは大きく変化しており、自動化設備を検討するユーザー企業が増えているという。 ローカル5Gを使用してAGVの稼働実験を行うことで、同社製品の高機能化の実現に期待を膨らませている。

NTT Comは、工場を持つユーザー企業の課題をDXを通じて解決する「Smart Factory」を重点領域の1つとして推進しているという。 その実現に向け、ローカル5Gがデータを価値あるものとして利活用するデータ収集・伝送機能における重要な技術であるととらえ、ユースケースの蓄積を進めている。

両社は、工場内におけるローカル5Gの電波特性などを検証することで、AGVの高性能化、さらには生産現場自動化やDX推進に向けた可用性を検討するとのこと。

  • DMG森精機 伊賀事業所とAGVの外観

今回の実験では、DMG森精機の伊賀事業所内における28GHz帯の実験試験免許を取得し、ローカル5Gネットワークを構築することで、生産現場におけるローカル5Gの電波伝搬及び通信品質を調査・測定するとともに、ローカル5Gを介したAGVの遠隔操作を試験するという。 実験期間は2021年4月までの予定。

実験を予定している項目は、電波伝搬試験(受信レベルの測定や干渉状況の調査)、通信品質試験(遅延やスループット性能、パケット誤り率の測定)、アプリケーション試験(ローカル5Gを介したAGVの遠隔操作試験)の3点。

DMG森精機は、実験場所及びアプリケーション試験設備の提供、アプリケーション試験の実施、ローカル5G活用ユースケースの検討を担当する。 NTT Comは、実験試験免許の申請及びローカル5Gの設備設計・構築・運用、電波伝搬試験及び通信品質試験の実施、ローカル5G活用ユースケースの検討を担当する。

両社は今回の実験に共同で取り組むとともに、確認した課題に応じさらなる検証を行うことで、ローカル5Gの本格導入に向けた検討を進めていくという。 また今回の実験を通して、複数のAGVや設備を繋げて工場全体のデジタル監視を行うなど、より高度な生産改善が可能な製品開発やソリューション提供の実現を目指す。

加えてNTT Comは、より広範なニーズに利用できるようなローカル5Gのサービス化についても、検討を進めていくとのことだ。