米Splunkは10月21日から4日間、米ラスベガスで年次カンファレンス「Splunk .conf19」を開催している。データ収集技術でスタートした同社は9月、最新のビジョン「Data to Everything」を打ち出しており、22日の基調講演でCEOのDoug Merritt氏は新ビジョンをテーマにSplunkの戦略を語った。

  • SplunkのCEO、Doug Merritt氏

Splunkの年次カンファレンス.confは、今年で10回目、昨年より1000人多い1万1000人が参加した。

Splunkはデータを収集・分析するソフトウェアでスタートし、モニタリング、セキュリティなどにソリューションを拡大してきた。中核となるのは「Splunk Enterprise」、非構造化そして構造化データソースからスキーマを定義せずにデータをインデックス化することで根本的な原因を分析できるプラットフォームを構築し、3~4年前にストリーミングデータにも対象を拡大した(「Data Stream Processor」)。検索(「Data Fabric Search」)、セキュリティ自動化(「Phantom」)なども備える。「Fortune100のうち92社がデータでSplunkを利用している」とMerritt氏。

「データが世界を変える。データを使って新しいことをやろうとする企業に世界は依存することになる」とMerritt氏、2003年の創業以来データに取り組んできた同社は、増加するデータ量とデータソース、データのサイロ、拡張性といったデータ活用の障壁を除去してきた。

「すぐに使えないダークなデータではチャンスを逃してしまう」とMerritt氏。データを取得、収集、分析し、その上で行動を取ることができるためのプラットフォームが必要だという。

「データを解放しなければならない。ITオペレーション、サイバーセキュリティ、アプリ開発者、DevOpsなどがそれを活用できる」(Merritt氏)、それがData to Everything Platformであり、これによりSplunkは新しいフェイズを迎える、と続ける。

Data to Everything Platformはデータの構造やデータソースを問わず、さらには、ミリ秒から月や年など時間のスケールもあるという。これにより「データをアクションに変えることができる」という。

  • Data to Everything Platform

Data to EverythingはSplunkが9月に打ち出した最新のビジョン。合わせて、ロゴの色もグリーンベースから明るいオレンジに変更した。

  • Data to Everythingを実現するSplunkの技術

今年の.cofではAR、モバイルでの最新の強化、そして全体を一元的に把握できる「Splunk Mission Control」なども発表している(詳細は現地時間23日の基調講演で発表予定)。合わせて、価格体系についてもボリュームベス、インフラベースに加えて、新規ユーザー向けにユースケースにフォーカスした「Rapid Adoption Package」の3つを用意することが発表された。

Splunkをフル活用しているのが、自動車メーカーのPorscheだ。顧客サクセス・プロフェッショナルサービス担当バイスプレジデントのToni Pavlovich氏に招かれてステージに立ったPorscheのStefan Arnold氏(テクノロジー/アクセラレーション/マネジメントのトップ)は、「車は性能で精密なデータが求められている」と社内のデータカルチャーを語る。自動車産業はコネクテッドカー、自動運転、電気自動車などの新技術を受けて変化している。現在では車の性能だけでなく、体験やプロセスでもデータは重要になっているという。

  • PorscheのStefan Arnold氏

Arnold氏がデータカルチャーの成功に重要なものとして、技術に加えてパッション、マインドセット、人なども大切と分析する。「単にデータを収集するだけでは不十分」。そして、「データとAIを組み合わせる」ことが今後10年で市場の流れを変えることにつながると述べた。

  • Porscheは、顧客体験、イノベーションと持続性、素晴らしい人材とビジネスパートナー、収益性を4つの柱にもつ2025年に向けた戦略「Porsche 2025」を敷いている。

Porsche社内では500人以上の社員がSplunkを利用してデータを分析しており、ユースケースが増えているという。先に発表した電気自動車「Taycan」では、車のオペレーションなどのデータだけでなくチャージステーションでもデータを活用しているそうだ。2020年までにPorscheとパートナー企業とで世界で2000のチャージステーションを構築する計画だが、Splunkのデータプラットフォームと機械学習ツールキットを利用して、どこに設置するのかなどを決めているという。

  • Porscheは、顧客体験、イノベーションと持続性、素晴らしい人材とビジネスパートナー、収益性を4つの柱にもつ2025年に向けた戦略「Porsche 2025」を敷いている

チャージステーションの設置や故障では、Splunk ARを使ってフィールド担当がチャージステーションをスマートフォンで撮影して設定したり、故障箇所を特定して画面にマニュアルを表示させて修理するデモを行った。 charging1/charging2.jpg フィールド担当がチャージステーションのインストールをARを使って行って見せた。

「データ戦略を進めるにあたってSplunkは主要なプラットフォームとなっている」とArnold氏は述べた。

  • 展示会場にはPorscheのPanameraを例に、Porscheのデータ文化を見せていた。