大成建設と日本マイクロソフトは10月15日、AI(人工知能)・IoT(モノのインターネット)を活用した施設運用・保守事業の変革(不動産価値の維持、利用者の満足度最大化や建物運営管理業務の効率化)に向けて協業を開始したと発表した。両社は2019年度後期から、順次事業展開を予定している。

  • デジタルプラットフォームの概要

大成建設は、建物引き渡し後の施設運用・保守事業にいち早く着目し、不動産価値の維持や利用者満足度の最大化、建物保守業務の効率化を図るため、この領域の強化を目指し、2019年7月に「AI・IoT ビジネス推進部」を立ち上げ、用途・機能別に複数ソリューションの検討を開始した。

また、日本マイクロソフトのパブリッククラウドプラットフォームであるAzureとWindows 10 IoTベースのエッジデバイスを採用し、建物や利用者の多様なデータをIoTセンサーなどで収集後、各種データを可視化し、AIによる分析結果を元に建物設備の自動制御などを行うクラウドサービス基盤を構築したという。

このデジタルプラットフォームを共通基盤に、AI・IoTを使用する各種取得データの蓄積や多様なソリューション間での連携・運用により、付加価値の高いサービスの実施が可能になるとしている。

日本マイクロソフトは、コンサルティング部門であるサービス事業本部を中心に、大成建設が目指すソリューションの具体化と最適なテクノロジーの活用支援などを行い、大成建設のデジタルトランスフォーメーションを推進する。

両社が事業展開を予定している主なソリューションは、地震発生直後の建物健全性把握、施設統合運営管理、生産施設での従業員の作業状況可視化の3点。

地震発生直後の建物健全性把握に関して、大成建設は、地震発生直後に建物の健全性を迅速に評価し、建物の所有者や管理者にタイムリーに通知するためのシステムを開発しているといい、今後、多様なデータを収集・管理・運用するためのクラウド基盤としてAzureとWindows 10 IoTベースのエッジデバイスを利用するという。

これにより、地震発生直後の突発的かつ短時間に膨大なデータ量の処理が求められる状況での正確かつ迅速な情報伝達によるBCP(事業継続計画)初期対応への支援を行うとしている。

既に工場を所有する製造業や自治体などからの引き合いを受けており、今後数年で1000件程度の導入を予定している。

施設統合運営管理については、大成建設は建物運営管理費を最小化するため、大成有楽不動産などのグループ会社と連携し、AI・IoTを使用した建物運営管理業務の効率化のためのサービスの構築と提供を検討しているという。

今回、AzureとWindows 10 IoTをベースにした日本マイクロソフトの建物運営管理サービスである「スマート・ビルディング・ソリューション」を利用し、その第1段階として、ビル管理者向けに建物運営管理業務の効率化支援サービスの実現を目指す。

さらに今後、両社で設計・施工と建物運営管理をパッケージ化したビジネスモデルの展開を進め、顧客の資産価値の維持、向上を図っていく。

生産施設での従業員の作業状況可視化に関しては、大成建設は、施設や装置の改善に加え、従業員の作業状況をモニタリングし、そこから得られる多様なデータを利用した新しいソリューションを開発しているという。

従業員の心拍、体温、姿勢などの身体の状態、所在、作業環境のデータをWindows 10 IoTベースのエッジデバイス経由で随時取得してAzure上に蓄積し、関連情報をモニタリングする。

同時に、AIによる分析などを行うことで、従業員の作業負荷軽減や労働環境を改善するための効率的な作業計画立案、作業状況を考慮した動線・レイアウトなどを検討し、最適な指示やアクションの提示を支援するとしている。

両社は、多様な分野で進めるAI・IoTのビジネス展開において、建物の利用者、所有者、管理者に加えて、建物周辺地域も含めた多様な関係者に対して、AI・IoT を活用した施設運用・保守事業の変革を目指し、新たなソリューションを提供していくとのことだ。