パナソニック エレクトリックワークス社(以下、パナソニックEW)は、幅広い事業領域を手がけるパナソニックの中で、特に照明を主軸とした電気設備商品、電設資材の製造販売を受け持つ組織である。
「“いい今日と、いい未来を電気設備から。”という事業スローガンのもと、街の中にある多くのランドマーク、商業施設向けの電気設備や関連資材の提供から、太陽光発電や蓄電池といった次世代エネルギーに関わる事業まで幅広く展開しています」
そう話すのは、同社でEW直轄CSセンター顧客ネットワーキング企画部の総括主幹を務める寺口剛氏だ。パナソニックEWは、主な取引先が販売代理店(問屋)や工務店、建設会社や施設運営会社といった企業であり、商流は商材ごとに極めて多岐にわたる。寺口氏が所属するEW直轄CSセンターは、そうした多種多様な顧客企業向けの相談窓口として、問い合わせへの対応や、営業をはじめとする社内各部門との情報連携を図っている。CSセンターが対応する問合せは広範囲にわたっている。
「顧客となる業者様からは、年間で数十万件の問い合わせがあります。電話、メール、Webフォーム、チャットなどのチャネルで対応しており、相手によって、商材の種類、問い合わせ内容もさまざまです。顧客ネットワーキング企画部では、センターに寄せられる情報をどう管理するかを考え、顧客満足度の向上を通じて事業に貢献することを目指しています」(寺口氏)
パナソニックEWでは、同社が目指す「顧客アカウントソリューション」の実現を念頭に、営業との情報連携およびCTI連携が可能なカスタマーサービスシステムとして「Salesforce Service Cloud」を導入。2023年4月より本格稼働を開始している。
パナソニックEWが実現を目指す「顧客アカウントソリューションビジネスモデル」とは
同社の目指す「顧客アカウントソリューションビジネスモデル」は、CSセンターや営業を含む、多くの顧客接点から得られる情報を一元的かつ継続的に管理することで、製品の販売時だけでなく、導入後のメンテナンス、リプレース検討時など、顧客ごとのフェーズに応じたアプローチができるよう関係性を維持し続け、ビジネスの拡大を図るビジョンと言える。
CSセンターでは、問い合わせ情報の蓄積とデータ活用を進める中で、「営業を中心とする他部門との緊密な情報共有によって、CSセンターはより積極的な利益貢献が可能になるのではないか」という問題意識を持っていた。もちろん、これまでも情報の蓄積や分析は行っていたが、そこでの知見は、どちらかと言えば、製品の企画や開発へのフィードバックを意図したものだったという。一方で、CSセンターには、その時点で同社の営業と直接つながりのない顧客からも、製品の詳細や見積もりについての問い合わせが寄せられていた。
「これまで、製品の詳細や見積もりについての問い合わせが入った場合は、商流内での適切な相談先をご紹介するケースがほとんどでした。直接営業につないだほうが良さそうな案件については、CSセンターの担当者が個人的に営業へ情報共有していましたが、あくまでも個別対応です。そうしたアクションを、システムを通じてより組織的に行えるようにすることで、CSセンターに寄せられる問い合わせを、さらに多くの案件につなげることができるのではないかと考えていました」(寺口氏)
問い合わせを案件につなげるためには、個々の顧客とパナソニックEWとの関係が、どのようなステータスにあるのかをしっかり管理する必要があるため、CRMの強化が欠かせない。複数のシステムを検討した結果、営業が数年前にSalesforce Sales Cloudを導入していたことや、CSセンターのCTIシステムとの連携も可能であるといった点から、Salesforce Service Cloudを新たなCRMの基盤とすることが決まった。
「衆知」を生かすため、50名を超える大プロジェクトへ
導入パートナーには、複数社から選定を行った結果、テラスカイを選択した。
「コストが適正であったことと、それ以上に、われわれがお話ししたビジョンや、今後Salesforceを使って実現したいと考えていることを、十分に理解して提案をいただけたことが選定の決め手でした」(寺口氏)
プロジェクトは、2021年12月に始動した。まず第1フェーズで、Webやメールでの問い合わせ受付と回答依頼のワークフローを既存システムからService Cloudへと移行。続く第2フェーズにおいて、CSセンターで利用されているCTIとの連携を進めた。
「第2フェーズのCTI連携は、CSセンターや関係部署の具体的な業務を大きく変えるもので、全社のITインフラやDX部門も関係し、各部署から約50名の担当者を集めた大規模なプロジェクトになりました」
CSセンターにおいて導入プロジェクトを統括的な立場で推進した、EW直轄CSセンター顧客ネットワーキング企画部、BXC運営企画課(兼)ネットワーク企画課の三好惇也氏は、当時の状況を振り返る。
「大規模なシステムを刷新する必要性については、顧客アカウントソリューションのビジョンと合わせて理解してもらうことが重要でした。そして、そのための業務やシステムはどうあるべきかといった考えは、立場によってさまざまで、それを集約するための議論に多くの時間をかけました」(三好氏)
パナソニックには、創業者である松下幸之助氏の経営哲学、「衆知経営」の文化が深く根付いている。「衆知」は社員一人ひとりの知恵を指し、その結集が全社的な変革に不可欠であるという意識だ。それぞれの思いをくみながら、着地点を調整しつつ新システムの要件へ落とし込む作業には、約1年をかけたという。
実装作業は、できる限りSalesforceの標準機能をベースとし、業務フローもシステムに合わせるようにした。プロジェクトで機能追加や変更が生じた時は、テラスカイはSalesforceプラットフォームの特性を生かし、プロトタイプによる確認を行ない、個別開発に迅速に対応するなどし、プロジェクトを進めていったという。三好氏は、プロジェクトの推進におけるテラスカイの役割を高く評価している。
リリース後も改善を続け情報の蓄積と共有の効率を大幅に向上
Service Cloudによる新たな顧客管理基盤は、2023年4月より本格的な稼働を開始している。稼働から1年を経て、プロジェクトにおける目標のひとつであった「CSセンターと営業部門のつながり」は「以前よりも強固になっている」と感じているという。
「すでに営業のSales Cloudに情報が登録されているお客様からCSセンターに問い合わせがあった場合、入電と同時に登録情報が分かるようになり、営業の担当者へ直接つなぐことができるようになりました。さまざまな部署が持っている情報が、Salesforceの持つ“取引先”と“取引先責任者(キーパーソン)”の項目を通じて連携できるようになったことで、大きなメリットが生じています」(寺口氏)
実際に、Service Cloudの導入前と比較し、CSセンターから営業部門への情報共有件数は10~20%ほど増加し、CSセンター経由での営業案件や受注につながっている。
また、顧客対応後の後処理については、Service Cloudの導入以前と比較して、より少人数のオペレーターで1.5倍の問い合わせ件数に対応できるまでに生産性が高まっている。Service Cloud導入後は、後処理がスムーズに進まないということもあったが、テラスカイの対応によって「迅速に改善できた」という。テラスカイと定期的に情報共有の場を設け、改善提案も受けながら、半年で100件以上の改善対応が行われた。
テラスカイの支援により、ビジョン実現の基礎になるシステムが完成
新たなシステムはパナソニックEWにおける顧客情報の共有と部門間コミュニケーションのインフラとして根付き始めている。
「大組織の業務に深く関わる移行プロジェクトだからこその苦労はありましたが、多くのユーザーが要件定義の段階から深く関わったことで、腹落ちして使ってくれるシステムになりました」(三好氏)
さらに、ユーザー間のコミュニケーションの質と量の向上にもService Cloudが寄与しているという。
「営業が一足早く使い始めていたSales Cloudに、今はCSセンター側の関連する対応履歴が自動で書き込まれ、すぐに参照できるようになっています。対応履歴を見た営業から“良い情報をありがとう”といったお礼のコメントが書き込まれることもあります」(寺口氏)
こうした情報共有とコミュニケーション環境の変革は、パナソニックEWが目指す「顧客アカウントソリューション」の実現に向けた力強い一歩となる。
「最初のコンタクトと営業の情報だけではなく、今後は導入後のメンテナンスや検討段階のマーケティングなど、お客様の全フェーズに対し、さまざまな人が、さまざまなところからアプローチできるような環境を目指します。もちろん、そのためにはユーザーがSalesforceを徹底して使い、より多くのデータを蓄積していくことが必要です。時間はかかるかもしれませんが、今回実現したSalesforceによる新たなプラットフォームでチャレンジを続けたいと思います」(寺口氏)
このチャレンジにあたり、今回のプロジェクトを担当したテラスカイとも、さらにパートナーシップを深めていきたいという。
「テラスカイには、Salesforceでさまざまなことができる技術力があると感じました。プロジェクトを進める中でも、われわれがやりたいことや組織としての内情を理解し、要望を実現しようと一所懸命に関わってくれました。この先、さらに今まで以上に本質的なディスカッションをしながら、われわれが“本当は何をしたいのか”を理解し、それをSalesforceで実現することを支援してもらいたいと期待しています」(寺口氏)
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