富士通と富士通研究所は1月30日、ブロックチェーン技術を応用し、電力の需要家(工場や店舗などの電力の使用者)間で不足・余剰電力の取引を実現するシステムを開発したと発表した。

電力会社と需要家が協力して電力の使用量を調整するDRは、電力が足りなくなると予想されるピーク時間帯において節電に貢献した需要家へ対価を支払うことで、電力使用量の削減や平準化を図ることを主要な目的としている。

現状では、電力会社からの調整要請を受け、需要家ごとの節電量をコントロールするアグリゲーターが各需要家と1対1のやりとりを行い、節電量の配分や達成可否を確認しており、需要家が節電量を高確率で達成するためには、節電量が不足している場合に他の需要家の節電量の一部を迅速に融通し合う取引が有効と考えられるが、DRには同様の仕組みが導入されていないという。

  • 需要家間で電力の融通を行うデマンドレスポンスのイメージ

    需要家間で電力の融通を行うデマンドレスポンスのイメージ

こうした状況の中で富士通研究所は、これまでに開発したブロックチェーン技術を活用し、アグリゲーターと契約した需要家同士で余剰電力を相互に融通する取引システムを開発。

DRは、短時間で節電の可否を回答しなければならない場合があるため、まずは取引システムに登録されている売り要求から融通可能な電力の総和を求め、買い要求の中から買える分だけ順番に素早く承認処理を確定する技術を開発し、迅速な可否の回答を可能とした。

また、回答後に確定済みの買い要求に対して売り要求を無駄なく配分することで、取引を最適化する技術も開発した。

この2つのフェーズからなる電力融通取引技術を適用した取引システムをブロックチェーン上で構築することで、これらの取引を記録することで電力融通の取引結果の透明性を保証し、確定した売り買いの取引結果(電力の節電量)に基づいた報酬の正確な配分を可能としている。

  • 需要家間同士での電力融通取引技術の概要

    需要家間同士での電力融通取引技術の概要

同取引システムにより、要請された節電量が難しい場合でも、他の需要家の余剰電力を自らの節電量の目標に合わせて迅速に購入・補填可能となり、節電量を安定して達成できるとしている。

今回。エナリスの協力を受け、2018年の夏季と冬季の2期分において、需要家20拠点分の消費電力の実績ログを使用して、需要家間での電力融通が可能になった場合のシミュレーションを実施した。この結果、従来の方法に比べて、DRの成功率が最大で約4割向上することを確認。

同システムにより、デマンドレスポンスの普及を支援し、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを促進できるようになるほか、富士通は事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーとすることを目指す「RE100」に加盟しており、脱炭素社会の実現に取り組んでいく。一環として同システムの実環境での検証を進め、2019年度以降の実用化を図る考えだ。