分析したユーザー情報の活用は、主にシニア向けのDM送付という形で行われている。購買情報を組み合わせることで「首都圏在住のシニア女性」というレベルではなく「首都圏在住で一戸建て、健康に興味を持つ女性」、「集合住宅でペットを飼っている男性」といった詳細なターゲティングができるのが特徴だ。

「DMはわれわれのカタログ送付時に同梱する形と、個別で送付する形の両方でサービスを提供しています」と伊藤氏。シニア層の豊富な送付先がある上に、詳細に絞り込んだピンポイント訴求が可能になることで、無駄なバラマキを抑え、費用対効果を向上させている。

今後の課題としては、ECサイトの充実とAIの精度向上があるという。ECサイトは、直接訪問して購入することが可能だが、テレビやラジオを入り口として詳細確認や注文のために利用する人が多いのが日本直販の特徴だという。

「従来はコンバージョンが低かったのですが、9月から見た目や商品ラインアップの変更を行い、倍近くまで向上しました。その中でラジオからWebという経路が多いこともわかりました。今は京都など現地に行かなければ買えないものを扱い始めています」と伊藤氏。現状の60代以上が中心の客層に対して、もうひとつ下の年齢層を獲得しなければならない中、Webの利便性向上や魅力拡大は重要なポイントとなるだろう。

AIについては、人による作業に比べ、バイアスがかからない分だけ精度は高いものの、まだ試行錯誤中だという。

「最終的にはチューニングや手修正が必要ですから、もっと精度を向上させたいですね。AIはトランスコスモスがいろいろなお客様に提供してきたノウハウが活きています」と伊藤氏は語った。

データ活用を進めることで人手の部分は減り、その分を対応力向上に回すことができる。電話での対応対向上に加えて、最近は「LINE@」の活用も伸びているという。

「機械的な対応では不十分なので、実は裏で人が対応しています。今はほかにも、冬のものというイメージが強いカニを、あえて夏に売ってみたりもしています。売れないだろうとは思っていた施策で、その通りだったのですが、これはこれで成功です。実は他社の販売時期が前倒しされていく中、実は夏に水揚げされているものが大半であること、夏のカニは新鮮であることなどを先にアピールしておくことで、他社でカニを見かけた時に日本直販を思い出してもらおうという狙いなのです」と伊藤氏はさまざまな試みを行っていることを語った。

今後、数も増え、消費の中心となっていくであろうシニア層の購買データをすでに大量保有している日本直販。そのデータ活用のこれからに注目したい。