一番の注目はやはり完全ワイヤレスイヤホン

スマートフォンや音楽プレイヤーとの間はもちろん、左右のイヤホン本体をつなぐケーブルすら存在しない、完全ワイヤレス(True Wireless)イヤホン。ネックバンド型のBluetoothイヤホンに慣れたユーザが次のステップとして、完全ワイヤレスイヤホンを選ぶことがトレンドとなっています。

そこで今回は、オーディオファン/イヤホン愛好家が集うイベント「秋のヘッドフォン祭」(主催:フジヤエービック、東京・中野サンプラザにて10月27日・28日開催)に展示された製品から3機種をピックアップ。各メーカーの担当者に質問しつつ、濃いめの情報をお届けします!

ゼンハイザー「MOMENTUM True Wireless」、12月に日本へ

ドイツ・SENNHEISER(ゼンハイザー)のブースでは、IFA2018で話題を集めた完全ワイヤレスイヤホン「MOMENTUM True Wireless」が展示されていました。ゼンハイザー初の完全ワイヤレスイヤホンで、ファン待望の製品といえます。

  • ケース表面はファブリック素材で高級感がありました

MOMENTUM True Wirelessで採用した、直径7mmのダイナミック型「SYS7」ドライバーは、ドイツ国内の工場で設計・生産した振動板を採用しています。サポートするオーディオコーデックはSBC、AAC、aptX、aptX Low Latencyの4種。左右イヤホン間の接続には近距離磁気誘導技術の「NFMI(Near Field Magnetic Induction)」を採用するなど、充実のスペックです。

音楽を聴きつつ、外部の音をモニターできる「トランスペアレンシー機能」も搭載。IPX4相当の防滴設計も施され、屋外へも安心して持ち出せます。連続再生時間はイヤホン単体で4時間、充電ケースを合わせると計12時間とのことです。

  • イヤホン本体のサイドパネルは、タッチ式のリモコンとして機能します

aptX対応の音楽プレイヤーで試聴しましたが、中高域にかけてのツヤ感と、きめ細やかさには、「IE800」などゼンハイザーのインナーイヤーモデルを彷彿とさせる部分があります。直径7mmのSYS7ドライバーは大口径とはいえないものの、低域には量感があり、レスポンスよくドライブ感も充分です。

気になる日本での価格と発売時期ですが、担当者は「12月中旬の発売を目指しており、価格は税込3万円台後半」と話していました。冬の到来が待ち遠しくなりそうです。

オーディオテクニカ、圧倒的な音質の「ATH-CKR7TW」

オーディオテクニカブースでは、同社初の完全ワイヤレスイヤホン「ATH-CKR7TW」が展示されていました。音質指向の「Sound Realityシリーズ」に属する製品ということもあり、完全ワイヤレスイヤホンとしては大口径の、直径11mmダイナミックドライバーを採用。しかも、DLC(Diamond Like Carbon)コーティング振動板と純鉄ヨーク(磁石と組み合わせる鉄のこと)を用いた、こだわりの作りとなっています。

  • ATH-CKR7TWのカラーバリエーションはグレーとブラックの2色です

最大の特長は、AKM(旭化成エレクトロニクス)製DAC/ヘッドホンアンプ「AK4375」を搭載していること。2018年現在、流通している完全ワイヤレスイヤホンのほとんどは、通信チップやDAC、ヘッドホンアンプをコンパクトにまとめたBluetoothモジュールでドライバーを駆動しますが、ATH-CKR7TWでは空間の制約があるにもかかわらず、あえて外付けのDACとヘッドホンアンプを使用しているのです。

コーデックはSBCとAACのほか、aptXもサポート。aptXには安定した帯域が必要とされるため、通信設計に関する要件が厳しく、部品の選定やアンテナの配置など設計にはかなり苦労したそう。その甲斐あってか、左右ユニット間の通信遅延により定位がふらつく現象(フェージング)は、ほとんどないとのことです。aptXで接続した場合、音楽プレイヤーやスマートフォンとの間だけでなく、イヤホン本体の左右ユニット間もaptXで通信を行いますので、左右ユニット間の伝達時にSBCで再圧縮する方式(NFMIなど)より音質的に有利でしょう。

  • SoCの外に配置したDAC/ヘッドホンアンプを利用することで、高音質化を図っています

肝心の音ですが、aptX対応の音楽プレイヤーを用意して再生環境を整えたうえで先入観なしに聴けば、完全ワイヤレスとはにわかに信じがたいと感じるかもしれません。解像感は高く、ボーカルの口もとも、ブラス・セクションの光沢もありありと描きます。低域は引き締まり、輪郭に滲みは感じられません。

ATH-CKR7TWの発売日は11月9日で、予想価格は27,000円前後(税別)。IPX5対応のスポーツ向け完全ワイヤレスイヤホン「ATH-SPORT7TW」も同時に発売されますから、比較検討してもよさそうです。こちらの価格は23,000円前後(税別)と予想されます。

ソニー「WF-SP900」は独立した音楽プレイヤー

2017年秋に初の完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000X」を発売したソニーが、第2弾として2018年春に発売したのはスポーツモデルの完全ワイヤレスイヤホン「WF-SP700N」。第3弾は音質指向とスポーツ指向のどちらだろうと気にかかっていたところ発表されたのが、「WF-SP900」。スポーツ指向でありつつも音質重視という、完全ワイヤレスの最前線を突き進む強烈なキャラクターのイヤホンです。ソニーマーケティングブースで試聴してきました。

  • IP65/IP68相当という圧倒的な防塵防水性能を備えた「WF-SP900」

まず、防水が徹底しています。防塵防水性能はIP65/IP68相当と、他の完全ワイヤレスイヤホンを圧倒するスペックで、水中でも利用可能というところがウリです。しかも、海辺での利用もOK。ブースで待機していた開発担当者に話を聞いたところ、「金属部分(充電用端子)には、塩分に強いものを探しました」と、かなり工夫を重ねた様子でした。

WF-SP900は、CPUやメモリに加え4GBのストレージを内蔵しており、独立した音楽プレイヤーとして動作します。対応するオーディオフォーマットの種類は、MP3/WMA/ATARC/FLAC/WAV/AACと豊富。音楽プレイヤーとして使うときBluetoothは必要ありませんから、スマートフォンと通信できない水中でも音楽を楽しめます。MIPS値など、CPUの処理性能に関わるデータは教えてもらえませんでしたが、ロスレスコーデックのFLACを扱えるところからすると、それなりの性能を備えていると推測できます。

  • 内蔵の4GBストレージに曲を入れておけば、独立した音楽プレイヤーとしても使えます

ハウジング内部の基板類が展示されていたので質問したところ、基板は7層の高密度基板+銅板という、イヤホンとしては耳にしたこともないような設計。なぜ銅板? という質問に対しては、「WF-SP900は音楽プレイヤーとしての機能も備えていますから、熱対策などCPUを動作させるための工夫が必要だったのです」とのこと。WF-SP900は音楽プレイヤーソフトを動かす小さなコンピュータでもあるのです。

  • WF-SP900内部の高密度基板。ウォークマン開発チームの知見が生かされています

音作りにも気合いが入っており、音質設計はウォークマンチームが担当。基板はウォークマンと共通の部分が多く、培ったノウハウも惜しみなく投入されているのだとか。

最初に独立プレイヤーモードで試聴しましたが、明快かつメリハリが効いたサウンドキャラクターは好印象。残念ながらFLACやWAVではなく圧縮音源(AAC)のみではあったものの、Bluetoothを経由しないので音の輪郭などが明瞭に感じられました。普段は独立プレイヤーモードで利用し、Spotifyなどのストリーミングサービスを聴きたいときにBluetoothでスマホと接続するのがよいのではないかと思いました。パッケージ同梱のスタビライザーによって装着時の安定感も高く、スポーツのお供としてベストパートナーになりそうです。WF-SP900は本日(10月27日)発売。価格は30,000円前後(税別)と予想されます。

本記事で紹介した完全ワイヤレスイヤホンはすべて、10月27日から28日にかけて東京の中野サンプラザで開催される「秋のヘッドフォン祭 2018」にて試聴可能です。10月28日の開催時間は10時30分から18時まで。完全ワイヤレスイヤホンを含むたくさんのオーディオ製品が展示されていますので、ぜひ訪れてみてください。