RPA総合プラットフォームを運営する「RPA BANK」(運営:セグメント)とアビームコンサルティングは7月31日、国内における「RPA市場の動向実態の調査結果と分析結果を発表した。

今回、結果が公開された調査は、アビームコンサルティング、日本RPA協会、RPAテクノロジーズが2018年1月から6月にかけて実施した調査と「RPA BANK」の会員を対象に2018年6月11日から15日にかけて実施した調査の2種類。

アビームコンサルティング 戦略ビジネスユニット 執行役員 プリンシパルの安部慶喜氏が、両調査について説明を行った。

  • アビームコンサルティング 戦略ビジネスユニット 執行役員 プリンシパル 安部慶喜氏

2018年1月~6月は昨対比1.5倍のペースで導入

初めに安部氏は、アビームコンサルティング、日本RPA協会、RPAテクノロジーズが実施した調査結果を紹介した。

RPAの導入スピードは加速を続けており、2018年1月~6月は昨対比1.5倍の月間約55件のペースで導入が進んでいることがわかった。

導入実績は、メーカーが37%、サービス業が25%、金融と情報・通信が13%、商社・小売が9%と、幅広い業種でRPAの導入が進んでいる。ただし、官公庁では導入があまり進んでいないという。

  • RPA導入企業トップ3の詳細

安部氏は、導入が進んでいる業種の特徴として、サービス業では人手不足が顕著な「運輸・倉庫」で導入が増えていること、金融では地方銀行やネット銀行での導入が進んでいることを挙げた。

導入企業の規模においては、これまでは従業員1000人以上の企業が6割を超えていたが、今回初めて、1000人未満の企業が55%と逆転した。その要因について、安部氏は「大規模企業ではRPAが一とおり導入されており、導入していない企業が少なくなっているから」と指摘した。また、従業員300人未満の企業も前回は20%だったが、今回は25%にまで増えた。RPAを導入する企業規模が広がっていることが明らかになった。

RPAの導入効果としては、導入企業の96%が5割以上の業務工数を削減していると回答した。導入期間については、75%が「2週間以内」と回答しており、どんどん短縮されているという。

続いて、「RPA BANK」の会員である720社を対象に実施した調査結果が紹介された。安部氏は、回答者が興味を持っていたポイントとして「導入しているRPAツール」「導入フェーズと運用体制」「課題とそれへの対策」を挙げた。

RPAの導入状況については、従業員1000人以上の大企業の40%はトライアルを終えて本格展開へ進んでいる一方、300人未満の中小企業では約50%が未導入の状態であることがわかった。

  • 企業規模別 RPA導入状況

RPAを本格展開する上での課題としては、「開発者不足・開発 スキル不足」(34%)という回答が最も多かった。これに、「運用・統制ルー ルの未整備」(21%)、「デスクトップ型RPAのため画像認識ができない/社内システムと相性が悪い」(13%)が続く。

この結果について、安部氏は「開発者や開発スキルの不足により、ロボット作成が進まなくなる。デスクトップ型RPAは価格が安いため導入が容易だが、機能が絞り込まれているため、やりたいことができないこともありうる」という分析を示した。

  • RPA本格展開における課題

こうした課題のうち、展開の課題に対しては、開発部署の設置や外部ベンダー・コンサルティングファー ムの活用、ツールの課題に対してはデスクトップ型からサーバ型の切り替えにより解決を図っているという。

  • RPA本格展開で発生した課題に対する対応策

RPAを推進する組織に関しては、トライアル段階では情報システム部が、本格展開中・本格展開官僚の企業はRPAの専門組織が主導していることがわかった。

専門組織のメンバーは、RPAを導入している部門から選出されるケースが多いという。加えて、RPA専門組織に外部から雇用するケースも増えているが、元エンジニアが多いとのことだ。

回答者の関心が高かった「導入しているRPAツール」は、トライアルの段階ではWinActorの割合が高いが、300人以上の大企業・中 堅企業が本格展開する際はBizRobo!を採用する割合が高くなることが明らかになった。

安部氏は、トライアル段階でWinActorの利用が多い背景について、「デスクトップ型なのでライセンスが安く、個人のデスクトップPCですぐに使えるから」と説明した。デスクトップ型とサーバ型の価格の差は、2倍、3倍ではおさまらないという。本格運用に入り、WinActorの機能では不足すると、BizRobo!に入れ替えるケースが多いようだ。

  • 採用しているRPAツール

課題解決の1つの策は「サーバ型の値下げ」

安部氏は、RPAの本格展開における課題の解決策として、「サーバ型ツールがもっと安くなればいいのに」と語った。

「デスクトップ型とサーバ型の違いは大きい。デスクトップ型は導入が容易だが、本格展開するとなると、セキュリティや統制など、カバーしきれなくなってくる」

さらに、安部氏は「入口の敷居が高いと、導入が進まない。また、効果が上がらないと、投資も増えない。だからこそ、RPAの普及において、サーバ型の価格が下がることが重要」と話した。

この課題を解決するため、RPAベンダーであるBlue PrismとRPAテクノロジーズ‎の2社が新たなプランの提供を始めたという。

Blue Prismはこれまで10ライセンスの契約が必要だったことから、中堅企業にとって導入の障壁が高かった。そこで、4ライセンスから購入できる「Starter Pack」、1ライセンスから購入可能な「License Flexibility」が用意された。これで、「ほぼデスクトップ型と変わらない価格になった」と、安部氏はいう。

「BizRobo!」を提供するRPAテクノロジーズは、ロボットの管理・運用を行うサーバが不要なRPAクラウドサービスをリリースした。新サービスの月額ライセンス価格は最大30万円までとなっている。

  • BluePrismの施策

  • RPAテクノロジーズの施策

業務システムに自動でログインも可能なRPAのロボットについては、乗っ取られたら機密情報を窃取されるおそれがあるとして、セキュリティの強化が注目を集め始めている。

RPAを導入するにあたっては、ツールの特徴、運用体制などを十分調べた上で、取り組んでいくことが必要だろう。