意識醸成を行い、具体的な業務の見直しや、効率化に貢献するようなツールも揃えたが、それだけではつまらない。整えた環境を利用して何か新しい働き方が模索出来ないか。既存の概念を超えた働き方への挑戦をしようということで、同社はコンサルティングの利用を考えたという。

「リクルートマネジメントソリューションズ(以下、RMS)は、2014年より全社の意識調査をお願いしており、アフラックの制度や風土、社員のことをよく理解してくれていました。そして、RMSからの提案内容から、アフラックが、世の中の働き方改革の推進スピードを超えて、働き方改革の分野で業界のリーディングカンパニーになれるのではないかという期待が持てました。実際に取り組みに加わっていただくと、我々が既成概念に囚われ、煮詰まってしまった時、必ず突破の糸口を一緒に見つけてくれました。また、RMSと一緒に進めることで、アフラックの取り組みが世の中から見てどのような状態なのかを客観的に見ることにも奏功しました。当社で注力してきた取り組みが世の中からみたら平均的なものであると指摘されることもあれば、当たり前のように行っていた取り組みを高く評価いただくこともあり、何に取り組んでいけばよいのかという指針になりました」(岡本氏)

テレワークでは、効率化とキャリアアップの2つの面で定着を図っている。効率化では、テレワークを活用した新しい営業スタイルの試行である。 。

「同じ県内といっても、代理店への移動に片道2時間かかるというようなこともあります。悪天候で訪問しづらい場所や季節もあります。そうした時、実際に出向くのではなく、テレワークを活用して、代理店とコミュニケーションを取ることにトライしています」と岡本氏。

特に降雪の多い地域などで大きな効果が期待できる。

キャリアアップにおける活用は、テレワークを利用して支社にいながら東京本社の仕事を行うことができるようにするというものだ。これは事前に1週間程度東京でOJTを受けて仕事を理解した上で取り組む。

「転勤が難しい地方拠点で働く社員が地方にいながらキャリアの幅を広げることを目指すチャレンジです。転勤しなければ昇進できないということはないのですが、地方で経験できる業務は限られています。それが原因で昇進試験を受ける自信がないというような声が実際にありました。以前から期間を3年間に限定して本社業務を経験するという一時転勤の制度はあり、多くの社員がこれを利用してきました。加えて、今回新たに、一時的にも転勤は難しいという社員向けに、本社業務を地方拠点にいながら担当できるように環境や育成体系を整備し、実際に挑戦しました。これは、地方にいながら本社の経験ができるので、転勤できない社員のキャリアの幅を大きく広げますし、配偶者の転勤への帯同で地方に異動しても、自身のそれまでのキャリアを中断しないで済むという意味でも奏功します」(岡本氏)

この取り組みは一部の支社に限定して行ったが、体験した社員からは自信ができた、場所で仕事が固定されないことがよい、前向きにキャリアを捉えられるようになったというような声があがっているという。

「取り組みの中で特に秀逸なのは大きく分けて2点です。1点目は、地方拠点にいたままで本社業務に配属できる素地をつくり、転勤への常識を打ち破ろうとしていることです。これは金融業界だけでなく他の業界にとっても参考になることが多いでしょう。2点目は、パイロット部署の試行と全社施策のバランスです。パイロット部署への試行では、すばやく高い成果を上げ、社内のできないという意識の軽減に繋げています。また、全社員が同時に取り組みを行うことで企業風土も変えています。これらによって確実に成果を出しているのが印象的でした。また、我々がコンサルティングを行うときは、組織文化を理解して動くこと、成果をきちんと見せることが大事だと考えていますが、今回の事例はそれがしっかりできたと思っています」と、武藤氏も手応えを語った。

KPIは4項目、時間外労働削減&有給休暇消化率呼応上では目標を上回る効果を達成

取り組みにあたってアフラック生命では、「時間外削減」、「有給休暇取得率」、「在宅勤務利用率」、「配偶者出産休暇取得」という4つのKPIで実績を確認している。そして、すでにはっきりとした効果が現れているという。

「決して残業時間の少ない会社ではありませんでしたが、2016年からは毎年前年比10%削減という目標を設定し、達成しています」(岡本氏)

実際に残業時間は2014年から2017年にかけて毎年15%以上が削減されており、有給休暇取得率も70%以上の目標に対して、管理職が81.3%、一般社員が82.6%と目標をクリアしている。

  • 所定外労働時間削減の成果

「在宅勤務については、全員が体験するという意味で社員実施率100%を達成していますが、月の利用率や個人で必ず月に何日というような目標は掲げていません。必要な人は誰でも、いつでも利用できるという環境づくりが大切だからです。中には自分にとって効率的な働き方をするための最善の方法は在宅勤務ではないからと、体験で使って以来利用していないという社員もいます。それでも問題はありませんが、シンクライアント端末の使い方や在宅時のルールを忘れてしまっては困るので、年に1度は在宅勤務を利用してもらっています」(岡本氏)

  • 在宅勤務の成果

こうした取り組みを受けての、社員の意識変化も出て来ている。女性社員に対する意識調査で、「出産や育児、介護といったライフイベントがあっても長く働き続けられる会社だと思う」という回答が、2014年の59.7%から2017年は78.6%と大幅に向上した。全社員の47.7%が女性、支社には特に女性が多いというアフラック生命だけに、この変化には大きな意義があるだろう。

  • 社員の意識変化

「シンクライアント端末は5人に1台の割合で各部署に配置しています。そのため、在宅勤務をする場合には基本的に前日に持ち帰りが必要で、突発的な事態には対応しづらいという課題があります。今は、子供がインフルエンザで1週間ほど出勤できないという時などは宅配便で送ることを検討する等、試行錯誤しています。それでも、今回のチャレンジによって、本社で働いていた人が配偶者の転勤や実家の事情で東京を離れなければならなくなった時など、地方からも本社の仕事を続けてもらえるような下地が作れたと思っています」と岡本氏は手応えを語る。

すべての業務がテレワークで行えるわけではないが、多くの業務について、いつでも・どこでもという働き方が動き出しているのは確かだ。時間外労働が減ることで報酬が減るということに関しては、給与体系などの見直しは行っていないものの、評価基準にWork SMARTの実践度合いや生産性向上への取り組み状況といった項目を盛り込んだほか、昨年は社員の自己啓発に対する会社補助を従来の年5万円から10万円に倍増させるなどして対応している。

「2015年から女性活躍にも本格的に取り組んでいます。推進する上で、大きな課題の1つとして注目したのが働き方です。ダイバーシティと働き方改革は、活力ある企業風土の醸成を実現する両輪だと考えています」と岡本氏。 社員の半数近くが女性である同社だけに、働き方の見直しは女性が活躍できる場づくりになり、女性が活躍できる環境が整えばビジネスの発展につながる。そんな2つの輪を回す取り組みが成功した好事例といえそうだ。